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運動器リハ 1.0の教科書✏︎第3章【組織の治癒過程を知る③】

第3章【組織の治癒過程を知る③】では,関節軟骨の治癒過程,血管の治癒過程,神経の治癒過程,半月板・関節唇の治癒過程についてまとめていきます。

少しマニアックな内容になりますが,第3章の最後のパートになります。
【組織の治癒過程を知る①】,【組織の治癒過程を知る②】が少しでも役に立ったと思われる方は,ぜひ試してみてください。知ると面白くなってきます。

それではいきましょう!


☑︎ 関節軟骨の治癒過程

・関節軟骨の解剖

 関節軟骨は,コラーゲン線維(15〜22%)とプロテオグリカン(4〜7%)といった有機物,および水分(〜80%)で構成される高含水の材料である。

 軟骨はこれらの組成やコラーゲン線維などが成す特異的な構造に支えられて優れた圧縮特性,潤滑・摩擦特性,耐摩耗性を発揮する。


・関節軟骨障害

 関節軟骨障害は外傷を伴うものとそうでないものの2つに大別される。
 外傷を契機とした軟骨障害では,直接的な外力により軟骨の亀裂,剥離,欠損が生じるだけでなく,衝撃による圧挫傷による損傷がある。また,前十字靱帯損傷などは関節内血腫をしばしば生じるが,関節内血腫はグリコサミノグリカンの喪失や,細胞外基質の合成の減少を引き起こすことが報告されており,関節軟骨障害の契機の1つとして示唆さている。

 一方,原発性関節症とよばれるような,外傷を伴わない軟骨変性や摩耗は,加齢,遺伝的素因,肥満,過度のメカニカルストレスなどが原因として考えられている。

 軟骨変性の定義は確立されていないが,一般的にはⅡ型コラーゲンやアグリカンといった,主要な細胞外基質の生産の減少や,軟骨細胞数の減少などのことを示す。一方,軟骨基質分解酵素の産生の上昇,軟骨細胞のアポトーシスや老化による細胞の減少なども含まれることもある。関節軟骨ではOAが進行していく過程で,初期には細胞死や炎症の上昇が起こり,その後,修復反応と考えられる同化因子と異化因子の上昇の混在が起こった後に,次第にバランスが異化因子の上昇に傾き,軟骨の変性・破壊が進行していくと考えられている。



・関節軟骨の治癒過程

 関節軟骨は血管・リンパ管・神経組織を欠いているため自己修復能に乏しく,関節軟骨損傷では血管を有する組織にみられるような壊死→炎症→増殖・分化→修復という過程を辿らない。

 関節軟骨損傷の修復に関する研究は古く,1743年Hunterによりすでに関節軟骨の損傷は修復しないことが報告されているが,その後,さらに詳細な研究が行なわれ,関節軟骨の修復は年齢,損傷の深さ,大きさ,損傷の部位,外力の種類,関節運動などに影響されるとされている。

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