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Re酒カス顛末書

原因はわかっていた。

こりゃそのうち死ぬな、
と本能が訴えていたのを見て見ぬふりをしていたが、無職生活復帰祝いに、ようやく本能に従い検査設備のある病院へ。

初診の問診票に当てはまる症状にチェック。
食欲不振、下痢、吐気、全身倦怠感etc…
さらに自ら「血液検査をしてほしい」と書き込む。

受付の女性の顔色が心なしかサッと変わり、待合のソファーで(ひん死で)くつろいでいるところに詳細を聞きに来る。

診察室に通され、問診で担当医はおおよその察しはついていたようだが、
血液検査兼点滴&エコー検査。

血を抜かれた後、点滴も1時間が経つ頃にさっきの医師が険しい顔で近づいて来る。
血液検査の結果を持って、
「これ、わかる?」

基準値超えが、ざっと10項目。
うち

AST 88(基準値:~38)
ALT 62 (同:~44)
γ-GTP 1265(同:~73)
中性脂肪 837(同:~130)

一目でわかるアル中丸出しの結果。
「即入院レベル」との判決を言い渡される。
(入院設備のないクリニックのため、紹介状を書くとのこと)

いろいろな感情がうねうね混ざり、うずまく。
焦燥、安堵、そして絶望。

また来るところまで来てしまった、か。
ここで止められてよかった、あのままだと死んでいた。
同じことを何度繰り返しているのだろう。

リクライニング椅子で右腕に点滴をぶっ刺されたまま、回らない頭で考え
へらへらと力なく医師の言葉に曖昧な返事をする。
改めてアルコール依存症の烙印を目に見える数字で示され、医師に哀れみの目で見られながら軽く説教される32歳無職のボンクラ具合に自分でめまいがする。

ちなみに初めて正式にアルコール依存症の診断を受けた時のγ-GTPが500台だったため、今回もそれくらいでおさまっくてくれていれば、(それでも十分やばすぎる数値)という淡い願いは儚く砕け散った。
4桁てほんまにいくんやな~と、無意味な感想とは裏腹に上がる心拍数。

「減酒すればいいか」という、アル中患者にはできもしない誓いを立て勝手に安心し、からの大量飲酒を結局永遠に抜け出せない地獄ループに落ち着くお約束パターンすら自ら崩壊させるほどの、振り切ったハイスコアを叩き出した肝臓くんに思いを馳せた帰り道。
これで酒のんでいたらアホ通りこしてキ〇ガイだが、さすがに全くのむ気はしなかった。

いつも断酒期間に入る時の、
「酒なしでどうやって生きていこう」
「どれくらいの期間耐えられるだろう」
という憂鬱や不安は不思議とほぼなかった。

あるのは、ただ恐怖。
自分の肝臓はまだ再生可能なレベルなのか。
まだ死ぬのは困るんだが。
(死にたくない、ではなく今死ぬと物理的に周囲に迷惑がかかる事案が多すぎるため困る)

今回はあくまで身体的疾患の有無を調べる医院なので、アルコール依存症については自己申告も、むこうからの診断や言及もなかったが、
要入院の判断は、数値の悪さもさることながら、措置入院的な意味合いも医師の口調から伝わってきた。

つまりアル中モロバレ状態。

あと、精神科の薬も数種類服用しているためODも疑われた。
(してません)


一晩考え、紹介状の病院へは行かず入院もしなかった。

これは完全なる自己責任で結果的にどうなっても、自業自得としかいいようがないことは重々承知のうえ。
それだけビビッてるくせに医者のいうこと聞けよと言われたら、ごもっともである。


アルコール依存症に終わりはない。
数週間、数か月、あるいは何年何十年の断酒を経ても、ほんの少しのトリガーで瞬間全ては崩壊してしまう。
よく壊れたブレーキに例えられるが、その上壊れたブレーキが二度元に戻らないところが、この病の恐ろしさだ。
アルコール依存症の治療法は断酒(卒酒)しかないと言われるのはそれ故。

だから、これから私がいくら断酒しようが、
「私はアルコール依存症を克服しました。もうアル中ではありません。」
などと口が裂けても言える日は来ない。
治って良かったね、えらかったね~よしよし 
とほめられることも生涯ない。

断酒とスリップ(断酒失敗のこと)を繰り返し、結果いつか大病からの命を落としても、それはそれで仕方ない。
それが今じゃないだけで、いつなのかもわからない。

世の中には断酒会などに通い、懸命に自己と向き合い頑張っている方もたくさんおられる。
そういう人たちと比べて、自分は意識が低い、きちんと向き合うことからまだ逃げているのではないか、という思いがよぎることも多々ある。
しかし、それを今すぐどうこうという気も起きない現実を傍観している自分もいる。

なんだかんだ現在2週目もクリアにさしかかろうというところで、今までの断酒時とは違う感覚がある。

現状なんかあまりつらくない。

酒がのめないくらいなら死ぬわ、みたいなアル中あるあるの発想にならない。
仕事を辞めてストレスが少ない、飲酒欲求より蝕まれすぎた身体への恐怖心のほうが今はまだ勝っているということもあるのかもしれない。

しかし血液まで酒に漬かりきっていた身体から、酒が抜けた始めたことによるはっきりとした変化も感じるので、そのへんのことも含め、ゆるく続けながら今後も記事にするかもしれないししないかもしれない。
あとドライゼロは神。