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アル中が無職になるまでの 一瞬の顛末


終わりはあっけなかった。
20:57
ラインのアカウントを削除のワンプッシュで、全てから解放された。

もうこれで、起き抜けに酒を流し込んで
死体のような身体を引きずって、仕事に行かなくていい毎日が訪れる。

私は自由だ。

いったいどこから歯車が狂ってしまったのだ

2019年12月
その業界自体は長かったが、
入社半年で店長職を拝命した。
期待されての抜擢と言えば聞こえはいいが
退職者が相次ぎ人員不足のための補充人事だった。
右も左もわからない。
売上のプレッシャー。
古株バイトとの関係を保つために、威厳を守らないといけない。
壊れるのは早かった。

出勤前に飲酒し、ほろ酔いで出勤し
勤務中もカメラのないところで売場の酒を飲みながら、1年がたった。

業績が認められ、繁忙店に異動。
かわらず、売場の酒を飲み続けながら体裁上は仕事をこなした。

スタッフは人件費削減のため最小限。
バレるはずがないと思い、
実際バレなかった。

2021夏
突然の異動辞令
縁もゆかりもない地で次の店舗を担う余力はなかった。

変わらず勤務中に隙を見ては飲酒。
呂律は回らない、
意識は飛んで早退。

精神疾患があり投薬をしていることは会社に報告していたため、薬の過剰摂取のためと言い訳して切り抜ける。

その後、責任者としての職務に耐えられないとの会社の判断で、一般社員として店舗を転々とする毎日。

なぜ店長までした自分が、ここまで落ちないといけないのか。

という葛藤と同時に、もはや酒を手放しては普通に働けないという自身の現実にも辟易していた。

その後、ついに勤務中の飲酒が発覚する。

1回目、2回目
都合良く謝り、見逃される。
温情だった。

3回目
トイレでの飲酒を目撃されお縄

通告はあっけなかった。
当日づけでの社員契約解除。

酒により失い
壊してしまったものが、たくさんある。

ただのフリーターだった自分を押し上げてくれた、この会社での自身のキャリア、
病気を理解しようとし、支えてくれた人たち
共に闘い、異動後も店長店長と慕ってくれたスタッフ然り。

得たものと、失ったものの大きさに
今は何も考えられないのが正直なところである。


これに懲りて酒を辞めれるくらいなら
アル中は苦労しない。
私は今も真っ暗闇の中で酒をさがしている。

しかし、
ここまで来れたのは、酒のおかげであり
そして、酒のせいで全てが絶たれた。

それでいいじゃないか
すべてに代えてでも。