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アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』(ハヤカワ文庫SF)

相変わらず表紙のセンスが素晴らしい

 アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』(ハヤカワ文庫SF)読了。説明をする必要もない、アメリカSFの巨匠アシモフの長編SF。実はアシモフを知ってはいたけど(「ロボット三原則」とかくらいは)、読んではいなくて、本屋で適当にあらすじを読んで選んだ一冊。長編と書かれているから身構えていたけど、文庫にしては本文の行間が大きく取られていて読みやすく、あっという間に終わってしまった。

 物語の舞台は、隔絶しながらも宇宙人と共存している地球。そこである日、宇宙人が殺される事件が起こり、主人公は人間の代表かつ刑事の代表として捜査にあたる。しかし宇宙人から捜査にあたって条件が提示されており、それは宇宙人が製作したロボットと共に捜査を行うものだった──というお話。

 地球では、労働者がその仕事をロボットに取って替わられ、失業者や単純重労働へ移行せざるを得なくなる者が続出。ロボットに対する反感、宇宙人への不信感が募る中、主人公はわざわざ宇宙人製作のロボットと共同捜査しなくてはならない。人間とロボットの違い、人間と宇宙人の違いを描きながら、一見不可能な宇宙人の殺害がどのように行われたのかを推理する、ミステリー風の展開を見せてもらえる。

 急展開が幾度も続くので、途中で飽きることは無い。ともすれば、呆気に取られるような超推理(『シャーロック・ホームズの冒険』のような)になってしまうところを、スレスレの線で提示してくれるので、面白く読むことができた。「あっ、その可能性あるある!」って、ちゃんと付いていける。

 ミステリー風というとSF部分が薄いように思えてしまうかもしれないが、決してそんなことは無い。背後で意図されているものは壮大かつ予想もしていなかった内容だったので、終盤は「なーるーほーどーねー! そゆことかー!」と感心することしきり。もちろん、アーサー・C・クラーク『幼年期の終り』のとんでもなく読者を圧倒してくるスケールほどではないけど、楽しく読むにはこれくらいが丁度いいんじゃないかと思った。

 さて。村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(上)』を読んだあと、下巻に進むのがちょっとしんどくて本作を挟んだんだけど、『ダンス・ダンス・ダンス』に戻ろうかな。『ダンス・ダンス・ダンス』が『羊をめぐる冒険』の続きだってことを、すっかり忘れていたよ。だって帯に「青春三部作」って書いてあるじゃん。『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』で終わりだって思っちゃうじゃん。読んだの昔だから、すっかり忘れてたわ、そんなこと。

「踊るんだ。踊り続けるんだ。何故踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなこと考えだしたら足が停まる。一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう。あんたの繋がりはもう何もなくなってしまう。永遠になくなってしまうんだよ。そうするとあんたはこっちの世界の中でしか生きていけなくなってしまう。どんどんこっちの世界に引き込まれてしまうんだ。だから足を停めちゃいけない。どれだけ馬鹿馬鹿しく思えても、そんなこと気にしちゃいけない。きちんとステップを踏んで踊り続けるんだよ。」

村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(上)』、2004年、講談社

 ──耳が痛いなあ。

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