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第十三話「三度めのハローワーク」2024年5月22日水曜日 曇り

 ハローワークまで今日も歩いた。徒歩30分にはちょうどいい日和だった。
 今日の訪所は「雇用保険受給資格者証」を受け取るためだ。これがないと国民健康保険に入れない。長年被雇用者をやっているとこの辺りの感覚が無くなる。社会保障費が給料から天引きされるのは手続き上楽だが、払っていること、払っているものがどう使われているのか?に頓着しなくなる。元々は自分の稼いだ金なのに。
 失業者の私には、この社会保障費が重くのし掛かってくる。きちんとしなくては。
 「雇用保険受給資格者証」はすぐに受け取れた。ハローワークでの動きも慣れてきたものだ。
 一階の受付で訪所の目的を告げる。受付の担当者は窓口を案内し、その時必要な書面にサインを求める。私はサインした書面を持って窓口に行き、ファイルに書面を挟み所定の箱に入れる。ファイルには呼び出し番号が挟まれており、それを持って呼び出しを待つ。至って簡単だ。
 「資格者証」は受け取れた。
 その足で役所に行き、国民健康保険に加入する予定だ。その前に一階に降り、端末で求人を探し、窓口で相談してみよう。
 失業保険は4週間ごとに支給される。その間就職活動をしていることが支給条件となる。この窓口相談も就職活動の一つとしてカウントされる。
 「バリスタ」や「喫茶店」などのキーワードで検索するがほぼ無いに等しい。ホールスタッフのパートタイムでの募集がちらほらあった。その一つをプリントアウトして窓口相談の順番を待った。
 呼び出しまでそんなに時間はかからなかった。担当してくれたのは、聴き上手な女性スタッフだった。
 失業の理由、これまでのキャリア、資格、今後の展望などを話した。
 キャリアを途絶えさせたくないこと、いずれは船長のカフェに合流したいことを話した。船長のカフェ実現はまだ先のことだ。その前に私自身が独立するという選択肢もあるかもしれない。自己資金は全く無いどころか借金がある。
 そんな都合のいいところは無いとは思うが、後継者のいない喫茶店などがあればそこに経験を積みながら、いずれは事業を引き継ぎたいなどもいう楽観的な夢物語も話した。
 何回も布団の中で繰り返していたことだ。それをアウトプットするのは簡単だった。
 担当の女性スタッフは私の甘ったれた考えを否定することなく肯定的に聴いてくれた。
 女性スタッフから新しい情報をもらった。
「日本政策金融公庫に事業承継のマッチング施策があります。一度お話しを聞いてみてはどうでしょう」
 事業承継だ。弟子をとっていずれ店を継がせるということでない。譲渡費用もかかるから融資を受けなくてはならず、自己資金も必要になる。
 それでも一度話しを聞いてみようと思った。漫然と失業保険とアルバイトで生活するのではなく、動いていこう思う。

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