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第十七話「四度めのハローワークー天国と地獄」2024年6月5日水曜日 快晴

 ハローワークまでこれまで通り歩いていった。今日は初めての「認定日」だった。失業となった日から今日までの就職活動の内容とその間の就業(アルバイトやボランティアも含む)の実績を報告する日だ。
 認定受付の時間は決まっている。9時30分から10時まで。遅れてもペナルティはないが、初回くらいは時間通りに行こう。
 9時前にすでに日差しは強かった。幸い湿気がなく時おり吹く風が心地よかった。
 ハローワーク近くの公園の草花が背丈が伸びていた。初めてハローワークに来たのは4月末。その頃は膝くらいの高さだった花草が腰のあたりまで伸びていた。季節は変わっていく。
 窓口で戸惑わぬようあらかじめ就職活動と就業の実績を書面に下書きしておいた。
 もう勝手知ったる受付だ。2階で受付用クリアファイルに書面を入れ、所定のポストに入れる。
 ほどなくして呼び出された。初老の男性職員が担当してくれた。
 年齢から考えて超ベテランだろう。早口で書面の内容を逐一確認する。不備のある箇所は訂正を求める。威圧的とは言わないが事務的に事が進んでいく。初めての認定なのに、こちらの不安はお構いなしだ。私の想像していたハローワークに近い。お役所然とした対応だった。
 認定がすみ、来週12日までに振り込まれる旨の案内を受けた。
 1階に降り、今度は就業相談を受けることにした。次回認定日は7月の頭。それまでに2回以上の求職活動の実績がないと失業手当は打ち切りになるのだ。ハローワークでの就業相談はその実績になる。
 就業相談の担当者は指名できる。現状をいちいち最初から話さなくてもいいのは助かるし、前回のスタッフさんはとても話しやすかったので指名することした。
 ワークショップの準備や起業セミナーの参加、情報収集などで求職活動が後ろ倒しになっていることを話した。失業手当を当てにしつつの起業や創業の準備だ。多少の後ろめたさも感じていた。
 担当者はこう言ってくれた。
「起業や創業も職を求めるということには変わりがないですからね。このように窓口に来て、その間の活動をきちんと報告してくれれば求職活動と認められます」
 後ろめたさが少し軽くなった。ワークショップの準備に集中できそうだ。次回の認定日にはもっと具体的な話ができるよう努めよう。

 ハローワークを出ると日差しはさらに強くなっていた。もう夏の日差しだ。
 帰り道、ハローワークの二つの窓口について思った。
 2階は失業手当の認定・支給の窓口である。不正受給を許さない姿勢があった。役所然としており、ある種の怖さを演出していた。
 1階は求職相談の窓口。コンサルティングを中心に前向き、肯定的に会話が進む。
 受給するには必ず窓口への来所が必要であるが、行きたくない窓口。そして、求職活動をしなくては支給されず、その支給条件の一つが1階窓口での相談。
 天国と地獄をセットにし、地獄を2階、天国を1階に配置して、天国の相談をより受けやすくし、半ば強制的に求職活動をさせるようになっている。
 強かな仕組みと役割分担、動線と演出だ。よくできている。
 しかし、地獄の認定窓口はルールに則っていれば、定期券購入窓口と変わらない。
 天国の求職相談窓口は、私のワークショップなどの活動を肯定してくれる癒しの時間になるだろう。
 私も強かに生きようと思う。失業手当とその給付期間はルールに則って有効活用しよう。

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