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第四十話「起業セミナー修了」2024年8月3日土曜日 晴れ

 7時半にアラームが鳴る。昨日のシェアリングコーヒーショップ初出店の疲労が少し残っていた。今日は起業セミナーの最終回だ。これまではリモートであったが、今日は集合研修形式で行われる。遅刻はみっともない。
 会場は区の施設の大型会議室。アイランド型に机がまとめられている。8島ある。ひとつの島に5-6名。計40-50名か。思った以上に大きいセミナーだ。指定された島に着く。
 定刻になりセミナーが始まる。前半は起業後の人材採用・育成がテーマだった。
 私は起業するにしても、ずっとひとりの計画だ。つまりワンオペの狭小店舗であり、2店舗めも考えていない。ワインバルではずっとワンオペ店長だった。誰かに指示したり、指示されたり、教育したりなんてことはできない。誰かを頼ることがあっても単発的なものになるだろう。
 年齢も年齢だ。起業する前になんだが、どうやって畳むかも考えなくてはならない。幸運にも大きくなったとしても、私の時間は限られている。不用意に大きくしては、その後に迷惑がかかる。
 というわけで、人材の話は失礼ではあるが右から左へと聞き流していた。
 後半は自身のビジネスプランをグループ内で発表。コメントを交換。さらにグループからひとりの代表を選び全体で発表となる。
 私のグループは私を入れて4名。グループ数は8グループ。10人のビジネスプランを聞いたのだが、そのレベルの高さに驚いた。
 自治体が主催する無料セミナーだ。せいぜいが商店街の再生くらいと思っていたが、いやはやどうしてどうして。社会的意義が高く、日本経済の再生、アジア全体の雇用まで検討されたプランが発表された。
 最近の若手起業家は金儲けではなく、社会貢献を一義に考えていると聞いていたが、まさかここまでとは。
 発表後は発表者に直接感想を伝える時間が設けられた。8人の発表者に他参加者が集まるのだから少々時間がかかる。場合によっては名刺も交わされる。私も負けじと自分を売り込みに入る。
 したがって、セミナーは定刻より超過してしまった。
 とても有意義な時間だった。良い出会いもあった。
 彼らのプランに比べれば、私のプランはちっぽけなものだ。でも、それでいい。
 私とN美さんが少し余裕を持って生活できれば良い。私の店のお客さんの、特に精神的な余裕を持てる場所になれたらそれでいい。私が世界を変える必要はない。自分とN美さんの今とお客さんの心の安定を守れたらそれでいい。
 もしかしたら、そのお客さんが世界をより良くしてくれるかもしれない。
 そういう場所を作りたい。

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