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第四十七話「レンタルキッチンの内見」2024年8月21日水曜日昼 晴れ

 昼前。N美さんと私は最寄駅から二駅下った駅に降りた。
 NPO法人が区と共同運営しているレンタルキッチンの内見に来たのだ。この事業は、無料起業セミナーで一緒になった受講生ーーいうなれば同期かーーの方から紹介していただいたものだ。これもまた縁だろう。
 事前に動画や画像で見てはいるが、どうにもイメージが湧かない。立地や周辺環境も知りたかった。問い合わせフォームから連絡をとり、今日の内見となった。
 レンタルキッチンはリノベーションした大型マンションの一階にある。同団体がキッチンとは別にレンタルスペースも同じマンションで運営している。
 実際に出店している様子も見たい。約束の時間より早く行き、今日出店しているお店のランチも食べようということになった。
 キッチン部分がオーダー場所で、そのままレジになっていた。私は数量限定のカレーランチ、N美さんはパンのセットにした。
 キッチンは十分に広い。3名のスタッフさんが余裕を持って動いている。水場も多い。ぱっと見ても機器類はしっかりとしたものばかりだ。
 オーダーを済まして、店内を見渡す。広い。小上がりには大小のテーブルがあり、20〜30人が余裕を持って座れる。
 8名用のテーブルが1脚、2〜4名用テーブルが店内と店外に1脚ずつ。
 私たちは小上がりの2名テーブルについた。隣のテーブルは赤ちゃん連れのお母さんが2組。
 小上がりの半分は団体客で予約されていた。
 予約の団体さんが来店し、大テーブルも他のグループで埋まっていった。見渡せば、全て小さなお子さんを連れたお母さんのグループだ。最近増えてきている子育て世帯応援を全面に押し出しているマンションなのだろう。いい事だ。もう2〜30年前にこの取り組みが全国に広がっていれば、今の少子化は避けられたに違いない。
 しかしながら、50過ぎのおっさんには少し肩身が狭い。N美さんが一緒で本当に良かった。
 カレーランチとパンのセット。サラダは新鮮で大盛り、それぞれについたスープも美味しかった。優しい味付けが心にもホッとくる。
 N美さんは、シフォンケーキを追加オーダーした。N美さんはよく食べる。この細い身体のどこに入るのか不思議でならない。
 食べ終わる頃に約束していた担当者と思われる女性がやってきた。
 挨拶を交わし、奥の部屋ーーここもレンタルスペースの一つなのだーーに通してくれた。
 この事業の成り立ちから、レンタルスペース・キッチンの組み合わせとその料金形態などの説明を受けた。出店者の要望にはフレキシブルに対応し、長期契約や頻度に応じての割引もあるとのこと。食器類も充実している。こちらで用意するのは提供商品以外では、グラインダーと電気ケトルくらいだ。良い条件だ。
 と言っても飛びつくわけにはいかない。
 検討すべきは、

・すでに出店しているシェアリングコーヒーショップとのバランス
・営業曜日、営業時間はどうする?週末型?平日型?朝型?夜型?
・提供商品は船長のクッキーは外せないとしても、コーヒーに寄るのかワインに寄るのか?

 というところか?
 どうする?

 ふと思った。
 これらを考えることが開業計画書か。
 区のアドバイザーの先生は言った。
「開業計画書が無ければ、融資は受けられない」
 レンタルキッチンの事業で融資は受けられないだろう。しかしーー
 いいチュートリアルが、向こうからやってきた、ということだ。

 まずはこのレンタルキッチンで開業計画書を作ってみることにする。

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