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レストラン感想 御料理 ふじ田

概要

札幌の割烹を回ってみよう企画第5弾はこちら、御料理 ふじ田。因みに本企画、予算10万のため今回が最終回です。

一応最寄駅は市電の西線6条になるんですが、そっからでも徒歩12分ほど掛かるため微妙にアクセスが悪いです。また道路沿いにあるわけではなく、少し中に入ったところにあるため場所がちょっと分かりづらい。そのため始めていく場合は少し早目に着くようにした方が無難でしょう。まあ早めについても周り住宅街だから時間潰せる場所ないんだけど…。なんか場所について書こうとしたら、文句ばっかり言う人間みたいになってしまったな…。
いや、別にディスりたくてこんな話してるわけじゃないんですよ。ただこちらのお店一斉スタートにも関わらず遅れてきた二人組がいましてね…。一斉スタートの店の場合、客同士は呉越同舟。自身の行動は他の客にも影響を与えるというのは留意すべきでしょう。因みにその二人組は当然悪びれもせず、お店にも他の客にも「すいません」の一言もありません。生きるのが楽そうな性格である。
そういえば以前飲み物の値段が書いてないお店があったので何故?と尋ねてみたところ、「気に喰わない客に割増請求できる」との回答でした。当時は爆笑したものの、こういうことがあると、確かにその考えは有りだと感じましたね。

閑話休題。お店の話に戻りましょう。当店は開店時期の関係(当店が2018年11月開業、ミシュラン最新版2017年)でミシュランには掲載されてませんが、ゴ・エ・ミヨには掲載されており、食べログの百名店にも選出されています。平日は夜のみ、土日は昼夜の2回転です。お弟子さんが一人いますが、温味と違いご主人も客前に出てきてくれて嬉しい。
ところでミシュラン北海道、なんで音沙汰ないんでしょうね?2014→2017と発刊されていて、次は2020かなと思ってたんですが。当初はコロナの影響かと思ってたのですが、今になっても来ないあたり完全に北海道から撤退したのかな。

コース内容

最初に頼んだ日本酒は蝦夷の曙。なんでも福島の曙酒造と北海道の酒蔵のコラボ商品だそう。どうも詳しい内容は秘匿のようで瓶は出してもらえず写真なし。ただこれ凄い美味しかったです。味わいとしては芳香でバランスが良く好みだなあという印象ですが、単純に味覚の絶対値が大きい印象。この銘柄はちゃんと覚えておこう。
江戸切子のお猪口を好きに選ばせてもらえて楽しい。冷酒なので寒色系が合うと考え青をチョイス。

先付けとして1月らしく雑煮の白味噌仕立てからスタート。具材は海老芋、厚岸のブランド牡蠣であるかきえもん。なんでも国内初の完全養殖の牡蠣なんだそうです。海老芋が甘めに炊かれているのが印象的。

椀物。おお、出汁が旨い。日本料理店を短期間で数件回って思ったのですが、日本料理の満足度は出汁の旨さと正の相関あるような気がしますね。そのためこの時点で心の中で勝利宣言をしています。椀種は海老の真薯、揚げた赤茄子、菜の花に京人参と柚子が添えられます。この海老真薯が独特で卵白が多いのかトロッとした食感。海老の味も濃く実に美味しい真薯でした。海老は静岡の磐田から取ってるそう。卓球観戦が趣味の自分としてはちょっと嬉しい(磐田は東京五輪ミックスダブルス金メダルペアの出身地)。他の具材も美味しかったですが、個人的に柚子は無い状態で味わいたかったです。普段であれば気にしないのですが、こんだけ出汁が旨いなら柚子の風味無しになるべくそのままお出汁を味わいたいので。

2杯目。町田酒造「五百万石」特別純米直汲み。キレがあってシャープな味わい。

お造り1品目は鰆。鰆って春のイメージだったんですが、この時期の方が美味しいそうです。実際に脂たっぷりで旨く、バリっと焼いた皮目も香ばしく食欲そそる。個人的に塩でいただく方が好みでした。魚編に春と書いて鰆なのに冬の方が美味しいの、誤解与えるので鰆くんは家庭裁判所行って改名手続きした方がいいと思う。

お造り2品目はマグロの幼魚、ヨコワ。関東ではメジマグロと呼ばれることが多いですが、関西ではヨコワと呼ばれるそうです。幼魚ゆえに皮が薄いため、炙って共に頂きます。マグロといえば一般的に濃厚な味わいですが、幼魚のためサッパリした味わいです。なんというか戻りガツオに対する初ガツオみたい(味の話じゃなく、印象の話ね)。

お凌ぎとして穴子の飯蒸し。おお、これもまた凄く旨い。柔らか、ふっくらというよりしっかり厚みがあって、食べ応えがある。穴子自体の味が強く、葛餡は控えめの調味で穴子に寄り添います。確かにこれだけ穴子の味がハッキリしていれば、強い調味は必要ないですね。

八寸。左上から時計回りに百合根とせりの胡麻和え、助子を炊いたもの、ニシンの揚げ浸し、揚げ銀杏、金柑の甘煮、フキノトウと田楽味噌、カマスのナスの挟み焼き。いずれも美味しかったですが、とりわけ印象に残ったのはフキノトウとカマス。前者はフキノトウのほろ苦さと田楽味噌の濃厚さが好相性。後者はカマスの脂を吸ったナスが抜群に旨く、当然にカマス自身も美味。

二世古の純米大吟醸。芳香で美味しい。けど以前飲んだ純米吟醸の方がより好みかも。

酢の物。北寄貝の酢味噌和えに、湯葉、うに、空豆。北寄貝は当然に臭みなど1ミリもなく美味。ウニも無添加であり清廉な味わいを楽しめます。

炊き合わせはクエと聖護院大根、菜の花。クエは身はしっとりした食感だったのですが、味わいの方はお出汁の方に流れてしまったのか淡白な印象でした。ただ出汁の方は昆布の印象強かったんだよな…。このクエは備え付けのポン酢つけた方が良いですね。白眉は大根。これが大根なのかと驚くほどの甘さで美味しかった。

〆はキンキと百合根の炊き込みご飯。うわー、めちゃんこ旨い!キンキ自体が旨いのは当然として、最高の焼き具合による香ばしさが食欲を無限に増殖させます。米自体も調味がしっかりして美味であり、百合根と牛蒡も良いアクセント。僕の胃袋は馬鹿なので2合くらいであればいつも全部食べてしまうのですが、今までで一番軽やかに食べ切ることができました。なんだったらもう1合くらいいけるぞコレ。味噌汁も香の物も美味しかったと思うのですが、如何せんご飯が美味しすぎてあんま印象に残ってない…。

水物。左は安納芋のパンナコッタと苺に柚子のジャムを掛けた物で右は葛餅と黒蜜。濃厚なパンナコッタと爽やかな柚子のジャムは相性バッチリ。他方苺はそのままの方が僕は好みです。葛餅(というか胡麻豆腐)もしっかり練られており美味しい。胡麻豆腐って先付けや椀種に使われる印象ですが、黒蜜をかけることにより、確かに甘味として成立する味わいになりますね。

総評

以上のコースが税込16500円。サービス料はかかりません。お酒は3種類計1.5合で2200円と安心と信頼の北海道価格。
実に旨かった。いずれの料理も王道な味わいで、とにかく味覚のレーダーチャートがデカかった印象です。また休日であればランチもやっており、そちらは9900円となんと1万を切ってきます。

また椀物の方でチラッと書きましたが、日本料理は椀物(というか出汁)の旨さと全体の満足度は比例すると考えて良さそうですね。また、今回訪れた5店の内「出汁が旨い」と感じたのはこちらとまつ久らの2店だったのですが、双方京都での修行経験が長いんですよ。あと割烹じゃないですが天ぷら 成も出汁が旨かったんですね。あちらも京都での修行経験あります(正直天ぷらはあら木が自分にとってドンピシャな味わいなので、日本料理に振り切って欲しい気持ちがある)。やっぱ京都の出汁文化って凄いなーと感じた夜でした。

うーん、それにしても困ったな。和食って季節を一番感じられるジャンルなので、季節毎に1回は割烹で食事をしているのですが、こちらとまつ久ら、どちらも大満足で絞ることができないという嬉しい誤算。ただこの2店の違いとしてこちらは全国各地から、まつ久らは北海道を中心に、というのがあります。そのため同じ季節でも実際の月が異なるんですよね。こちらは京都から筍が届く3月下旬、まつ久らは北海道だと3月は早いため4月下旬をお勧めされました。
僕は普段であれば外食は月に2〜3回、即ち季節毎に6〜9回外食する計算ですし、ジャンルは被りますが両方行ってしまってもいいですね。少なくとも春は是非とも両方訪れたいと思います。本当にそれくらい双方満足度が高かった。

ご馳走様でした。
3月下旬にまたお邪魔したいと思います。



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