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読書感想文「海を破る者」今村翔吾さん

「さあ、皆の衆。人世を踊れ!」
作中で一番印象に残ったのは、この台詞でした。

元寇来襲を題材とした「海を破る者」
今村翔吾さんの本を読むのは2冊目です。
(1冊目に読んだのは「じんかん」です。)

「海を破る者」、とても面白かったです。
発売日に購入してすぐ読み終えたものの、感想をアウトプットするにはもやもやがあり、少し時間をおいてから再読しました。
ネタバレにならないように感想をまとめてみます。

①歴史小説としての面白さ

歴史小説は他のジャンルとは違い、読む前から結末がわかっていることが多いです。
例えば、徳川家康が関ヶ原の戦いに勝利して江戸幕府を開くことや、坂本龍馬が暗殺されてしまうことは多くの人が知っています。
その意味では、この作品の題材である「元寇」も最終的に日本が征服されずに済んだという結末はわかっています。

本作の主人公は、河野通有という御家人です。
僕は歴史が好きで、一般的なラインよりも知っていることは多いと思っているのですが、この河野通有という人は知らなかったです。
(信長の野望シリーズで戦国大名として登場する河野一族の先祖なのかなぁくらいの認識です)
今村翔吾さんは、このあたりの設定がとても上手いと思います。
元寇の結末は知っていても、この人物のことはよく知らないので楽しく読み進めることができました。

②その当時の人々が感じたであろうことや視点

現代は人類史上もっとも世界が繋がっているので、いろんな人がいて様々な文化があることは、知識として多くの人に知られています。
パリオリンピックを見ていて、肌や髪の色が自分と違うことに驚く人はあまりいないと思います。

元寇の時代はどんな感覚だったのだろうかと考えさせられました。
多くの人は生まれ育った場所から大きく移動しない鎌倉時代、海の向こうからやってくる人は現代でたとえれば宇宙からやってくるもの(宇宙人がいるかいないかはさておき)くらい得体のしれないものだったのかもしれないと思いました。

③人間に対する今村翔吾さんの想い

作中、様々な出来事を通して《人の愚かさ》と《人の美しさ》が描かれていました。
読み終えた僕の感想は、
「やっぱり大切なのは愛と勇気だな!」
というものです。
愛と勇気といえばアンパンマン。
「アンパンマンて愛と勇気しか友だちいないんだぜ」なんて小馬鹿にしていたこともありましたが、
40年ほど生きてきて、《愛》と《勇気》は大切だなぁと身に沁みて感じています。

ということで、今村翔吾さんの顔がなんとなくアンパンマンに似ているような気がしてきました。
人間が精一杯生きる美しさを描く作家さんだなぁと思い、積読してある「塞王の盾」を読むのがとても楽しみです。

「さあ、皆の衆。人世を踊れ!」

僕も一度しかない人生を、軽やかに踊るように楽しく生きていきたいと思います。

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