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大地と繋がって

先日、お気に入りの本屋さんで『くらやみに、馬といる』という本に出会った。

作者の河田桟さんは与那国島で馬と生活しながらカディブックスという出版社を営んでいらっしゃるそうだ。

そんな河田さんの馬との話が綴られたこの本は、大地と繋がる感覚をもたらす一冊だった。

馬という他者に対するある種畏敬のような感覚と、それと共にある圧倒的な心地良さと安心感。

暗闇の静けさに広がる与那国島の美しい自然と馬の息遣いがそこにはあった。

読み終えた時、あぁこの方はきっと大地と繋がって生を生きているんだなと思った。

同じような感覚になった本は今年の夏に読んだ星野道夫さんの『約束の川』がある。

元々星野道夫さんのことは知っていて、好きそうだなぁと思いつつもタイミングがなく、夏に旅をした時にたまたま本屋で目が合って初めて手に取ったのがこの本だった。

アラスカという大自然に魅了された彼の話には、ありありとその大自然と人々の営みが鮮明に映し出されていた。

大自然というコントロールの効かない圧倒的な存在とそこに生きる命の美しさ。

人間の生きる時間とはまた違う大きな時間がそこには流れている。

植物園のベンチに寝そべって読んでいたのだが、元々自然が好きだった私はすっかりこの本の虜となってしまい、読む手が止まらなくなった結果、読み終える頃には片腕に十箇所ほども蚊に刺されてしまった。

終始心が躍りっぱなしで、改めてこの感覚が好きだと自覚させられた。

『くらやみに、馬といる』はまさにそのような感覚をもたらした。

『約束の川』のようにアラスカへの愛や尊敬が溢れるパッションと共に感じられるような温度感ではないのだが、そこには同じく生を生きようとしている人がいる。

働いて、あるいは学校へ行って、ご飯を食べ、お風呂に入り、眠りにつくような生ではなく、この地に生まれた生き物としての命を生きている。地球の一部としての生を生きている。そんな風に感じる。

そして同時にこの感覚を知っているとも思った。

旅に出る時、海に行く時、丘に寝そべる時、森を歩くとき、動物に触れる時、朝日や夕日を眺める時、時々大地と繋がっているような感覚になる時がある。

その時、そこには静かな美しい時間が流れていて、地球の一部であることを自覚する。

やっと呼吸が出来たような気がする。

私たちは生き物なんだなぁと思う。

そして、その時間はあたたかく優しさで包まれている。

どれだけ技術が進歩しようとも、私たち人間は生き物であることに変わりなく、その命には限りがあり、私たちは決して完璧になることなど出来ない。

幸せとか豊かさについて問われた時、私はこの大地と繋がっている感覚を持ちながら生を生きることを挙げるだろう。

そんな大切なことに気付かせてくれたこの本に心から感謝を。

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