誰が作っても同じだと思っていた"過去"と、自分だけが作れると誇れる"現在"
「若い頃は、誰が作ってもどんな大工が作っても出来上がるものは結局同じだって思ってた。でも、今はそうは思わない。」
そう言った我が家の棟梁、三窪さん。彼が大切にしているものって何だろう。
■自分だけの納まり(おさまり)の感覚
リノベーションが始まってから、”納まり”って言葉をよく耳にする。どうやら、設計図や図面だけでは表せない、家を作っていく中での細かい部分の処理の仕方みたいなものらしい。”納まり”は何も見た目やデザイン性だけに限ったことではない。技術上・構造上でも”納まり”問題は発生する。
↑いろんな場面に納まりは存在する。
そして、この”納まり”は人それぞれ感覚が違うと三窪さんは言う。人それぞれ個性があるように、”納まり”にも個性があるようで。大工さんそれぞれが個人の感覚で家を作っていたら、ちぐはぐの家ができるので、そこは棟梁の”納まり”の感覚に柔軟に合わせてもらう。棟梁という立場で家を作る時、一緒に作る大工さん達には本当に小さな細かいところまで話すと。自分の中の”納まり”があって、それを伝えるために。自分だけの”納まり”の感覚。それは出来上がった時に「心地よくてかっこいい!」と自信を持って言えるもの。
■お客様との関係性
地元工務店からの依頼を受けて現場に入る場合、お客様とのやりとりは直接は大工さんはしない。お客様の対応をするのは、その工務店であって、大工さんは粛々と家を作っていくだけ。だけど、それに違和感を感じている三窪さんは、工務店さんからの依頼があって棟梁として現場に入る時も、現場の進捗状況を写真を撮ってお客様に伝えていたと言う。うちのリノベーションに関しては三窪さんと直接の契約なので、三窪さんが直接対応するのは当然だが、"今日の仕事"みたいな感じで、毎日進捗状況をLINEで送ってくれている。
お客様との関わりをとても大切にしている人。お客様との距離を近く保っていた方が、安心して家づくりを任してもらえると思ってるし、こちらからしても何かあった時に相談もしやすい。そしてそれはお客様の満足度にもつながるのだ。家づくりに集中したい!という職人気質な大工さんも多い中で、お客様の心に寄り添うという少し珍しい価値観。
■家づくりじゃなくて住まいづくり
私が「家づくり」という言葉を使っていたら、僕が目指しているのは人が主となる「住まいづくり」と言われた。一瞬、何が違うの?と思ったけれど、「家づくり」は単にモノとしての家を作るイメージで、それに対して「住まいづくり」はそこに住む人を思い浮かべながら家とともにある未来にフォーカスしている気がする。
「家が人を育てたり、人が家を育てたり。そんなことを考えながら作るのが、楽しい。」
住みながらその人の色に染まっていく、その元になる"住まい"を作るのが、三窪さんにとって大きな喜びのようだ。
これらが三窪さんにとって大切なこと。
「誰が作っても同じ」って思っていた過去は、たくさんの経験を経て、今、とても輝いて見えました。
「自分だけがこの家を作れる!」と自信を持って言える人に"住まいづくり"を任すことができて、本当によかった。
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