見出し画像

△大塚国際美術館を「流し見」で楽しんだ話

そもそも、じっくり見て回る滞在時間が確保できなかったのです。バス旅で、かつ旅の主目的が別のところにあったため、美術館前に着いてから次の目的地へ発車するまでの3時間弱。それが、わたしに与えられた観賞時間でした。

ご利用は計画的に

行かれたことのないかたは、美術館に3時間も居ないでしょ〜それだけあったら十分だよ〜と思われるかもしれませんが、大塚国際美術館はがっつり3フロア+小さめ2フロアにわたる広大な施設です。

友人曰く、「4時間くらいはかかったかな〜」

お子さん連れで行かれた知人家族曰く、「6時間くらい居ました、1日遊べますよ!」

これを踏まえてお考えください、3時間です。しかも、もし行きのバスが遅れたら、さらに短くなります。足りない気がしてくるでしょう?

そんな強行スケジュールを決めたら、友人が「予め重点的に見るエリアを絞っておくといいかも!」と教えてくれました。階を上がるごとに時代が新しくなっていく展示方式なので、興味のあるフロアを選んでゆっくり見たら良いのではないか、との提案です。

階ごとの大まかな展示内容
1&2: 現代、テーマ展示
B1: バロック、近代
B2: ルネサンス、バロック
B3: 古代、中世

わたしはバロック前後が好きなので、B2から見始めてどんどん上に行き、最後に残った時間でB3をざっと見て回ることにしました。

最初の展示室にて

そしてワクワクとB2へ向かい、展示室に足を踏み入れたものの。ワクワクは萎み、代わりにもやもやが膨らんできたのです。

ここの展示物は「陶板名画」なんですよね、平たく言うと複製。
こういった展示を見るのは実は初めてではなく、以前、恵比寿でフェルメールのリ・クリエイトを見たことがありました。そして、そのときにも同じことを思いました。「なんか味気ない」と。

複製のあり方と見方について思うこと

味気なさを感じた一番の理由は、立体感の欠如だと思います。油絵には特に言えると思うのですが、塗り重ねたことによって生じる立体感は、その作品の印象に相当な影響を与えるはずです。少なくとも、わたしにとっては。

複製だと、その部分が抜け落ちてしまう。絵の表面がニスを塗ったトールペイント作品のように、つやつやと平べったくなっているためです。構図上の奥行きや色づかいはオリジナルと違わないはずなのに、イマイチその作品が浮き上がってこない。

そして人間というのは、一度マイナスなことを考えるとそちらにしか考えが向かなくなるようで。

①周りの人のペースが速いことが気になり始めました。皆さん次々と作品を写真に収め、サクサク歩いていかれる(全館撮影オッケーです)。撮影することが目的なの…?

②話し声が多すぎる。他の美術館のように監視員さんがいるわけでもないし、カメラアプリのシャッター音もバンバン聞こえてくる状況。そりゃあ、静かに眺める気にはならないよね…。

美術をゆっくり味わう場所ではないんだなぁ、と悲しくなってしまいました。

発想の転換

でも、そんなネガティヴモードで見ていても、印象に残る作品はありました。
「どうしても目が離せない」「オリジナルではどんな風に見えるのか気になる」などなど。製法が異なるのか、ちゃんと「立体感のある」ものも!

…そっか。数撃ちゃ当たるの世界なんだな。

全てを丹念に見るのではなく、お散歩のような感覚で歩き回って、何かひとつでも気に入るものが見つかれば、それでいいんだ。「見たいエリアを絞って…」という友人の言葉が、ここにきて初めて、本当の意味で響いてきました。

その後、気持ちを立て直したわたしは、当初の予定通り、3時間で全館まわりました。たしかに時間はギリギリだったけど、観たいものを観られたから、悔いなし。

大塚国際美術館の意義

帰りのバスで思ったのは、「ここは美術の世界の敷居を下げてくれる空間だ」ということ。絵を見慣れていて知識のある人には、物足りないかもしれませんが。
日ごろから美術館に行く人であっても、あまり見ないジャンル(わたしなら古代壁画や現代アート)に寄り道できるのは、大きなメリット。オリジナルの作品を見ようと思うと、一度に見られる数は限られてくるし、それに伴って、見られるジャンルも狭まってしまう。興味のない展示には足を運ばない。
でも、あらゆるものがズラッと並べられている大塚国際美術館では、寄り道が叶います。

大塚国際美術館「流し見」ガイド

最後に、私が考える流し見の注意点をまとめておきます。

・来館前に、見たいエリアを決めること。
実際に見て回るうちに見たい対象が変わったら、それはそれ。館内の至る所に椅子があるので、座って落ち着いて、考え直すこと。

・マップが苦手なら、エスカレーターを活用すること。
基本的に廊下に書かれた矢印をたどればフロアを一周できるようになっているけれど、フロア間の移動手段にはエレベーターや階段もたくさん。どこから上るか(下りるか)によって、矢印に対してうまく動けないことがあります。各フロアを抜かりなく、かつ楽に一周するための矢印の始点は、エスカレーター。エスカレーターは1ヶ所のみなので、これで上がって矢印通りに進めば、迷わず回れます。
もちろん、マップの得意なかたは、お好きな順番でどうぞ。

※この記事は、7/14に加筆・修正しています。

【おまけ】以前投稿した、美術館に関するnote



この記事が参加している募集

お読みいただきありがとうございました。みなさまからのスキやフォロー、シェアなど、とても嬉しいです! いただいたサポートは、わたしもどなたかに贈って、循環させていきたいと思っています。