ep.5 トリミングですか?いいえ、おむすびです
こんばんは。たまです。
ここは小さなラジオブースあるいは談話室。立ち寄ってくださったあなたに甘えさせてもらって、あの日の話、聞いてもらっちゃおう。ちょっとせつなかった日の日記です。
生活の日記
初めて行く街でひとり食事を済まさないといけない状況を楽しめる人でありたい。しかし、どこかで予定調和に安心するわたしには、難易度★★★なのである。
ちょうど行きたい店があった、という街はいい。また、モスバーガーやロイホといった、わたしに安全を常時担保してくれる飲食店があれば乗り越えられる。
あいにくその日その街には、そのどちらもないのであった。
とはいえ我らの命綱、Googleマップがいる。ここで口コミなどをさらっと確認しておけば、入店チャレンジの勇気をゲットできるのだ。
そうして昼食候補となったのが、ある「おむすびカフェ」であった。
おむすびにお味噌汁つきで700円ほど。ほっこり美味しいといった高評価や、ドッグ入店可でかわいい犬にも出会えるといった口コミを見て、ハートフルなお店と判断。
ちょうど所用先から徒歩10分圏内だし、ここへ向かうことにした。
秋のはじまりにもかかわらず、冷たい雨のよく降る日だった。”知らない街”を歩いていることが、心細さボルテージをいっそう高めた。なんとかお店に辿りつき、ふうっと安堵。傘を閉じ、いそいそと扉をあける。
「……こんにちは〜」
「いらっしゃいませ!トリミングですか?」
「えっ……?」
「あ、トリミングのお客様ですか?」
(( トリミング ))
思いもよらぬ第一声に驚いてしまって、脳内でその意味を検索する。毛を刈ったりするあれ…だよね…ワンちゃんとかの…。
なお、念のため理っておくが、わたしは人間である。
「あ、いや、あの、おにぎりを買いに…」
「えっ…!?」
「あ、えっと……」
驚かれてしまった。湿気で髪も爆発していたし、犬に見えてしまっただろうか…。いや、待って、トリミング?もしや店を間違えた?
頭のなかでせっせと解析は進むものの、こういうときって言葉がちっとも出てこず、もごもごっとしてしまう。
「えっと…あの…」
「ああ!おにぎりですね!テイクアウトだけですが大丈夫ですか?」
「あっ、はい!」
そうして無事に昆布のおむすびを握ってもらえた。めでたし。店内を見渡すと、ほとんどのみなさんが犬といっしょに食事を楽しんでいた。
なるほど、つまり”ペット可”のこのお店は、withペットのお客さんが多数。ワンちゃんのトリミングもしてもらえるそう。そこへ、人間のみであるわたしが突如到来し、少々驚かせてしまった、というのがこの事件の真相か。
犬と暮らしたことのないわたしが、このような店舗におけるペットの割合を低く見積もっていたことに、原因はあるといえるだろう。バーロー、ったく世話が焼けるぜ。
心のコナンくん人格が事件は解決してくれたが、ただお昼を調達するだけでノンスムーズな自分は、どうしたって人生1周目だよなあと痛感する。
だけど、昨日まで知らない街だったここが、小さな事件と昆布のおにぎりといっしょに、わたしの記憶に残る街になったのだ。それだけではなまるとして、今日も前を向いて生きていきたい。
今夜の1曲
星野源(feat.PUNPEE)のさらしものを。
彼の歌う孤独は、たしかにさびしくて、でも強くて、人生の真理だなあといつも思う。オオクボリュウさんの描く彼らも最高にチャーミング。音楽のなかで生きているかのよう。ミュージックビデオって、楽しいです。
それでは今日もこのあたりで。寄ってくれてありがとう。
そして週の折り返し地点まで、まずはお疲れさまでした。あなたも、わたしも。
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