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散文「苦杯」

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私個人の失恋とその後悔からの産物。 心の瓦解から再生まで。
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記事一覧

散文詩「苦杯」1杯目

ずっと飛び出したかった場所から抜け出し、少し離れた所から、もう一度その場所を見返すと、何故かそこが良く思える

後から見ればそう悪くは無かったはずだ

では、何故私はあの時あの場所が嫌だったのだろう

不思議な感情になりながらも、私は押し寄せる後悔にただ飲まれ、沈んでいく

これは恋愛の話だ

散文詩「苦杯」2杯目

貴方はずっと支えてくれた
私もついそれに甘えていた

貴方はいなくなった
私は倒れるかとおもったら自分で支えることが出来た

初めからではない
貴方の支え方を私は覚えていて、それを自分で出来るようになっただけ

自分で出来るならもっと早くやっていればよかった

そして何故そうしてくれた頼れる貴方を、私は押しやり遠ざけたのだろう

散文詩「苦杯」3杯目

突然、昔の事が申し訳なかったという気持ちになった

一方的な連絡を入れて、過去の出来事を謝罪した

もう戻ることも進むこともないことは、未読のままのメッセージが教えてくれている

晴れることなく曇ったままの心

でも多分貴方は、いつも私に向けていてくれた様に、今も眩しい笑顔だろう

散文詩「苦杯」4杯目

自分の選択肢が間違っていたとは思わない
そうしなければ今の私はあの頃と同じ、何も出来ないままの私だっただろう

だが、それと引き換えに、私は貴方の顔に似合いもしない泣き顔を貼り付け、そして貴方の前から姿を消した

今になって私は過去に手を伸ばそうとする
その涙を拭えないものかと

矛盾に満ちた思考なのは分かっている
だが過去は私を引き寄せ、今の現実から遠ざけようとする
抗う術もなく、私はまやかしの

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散文詩「苦杯」5杯目

止まらない妄想を頭の中で繰り返す
意味がないことは分かっている

だが私の脳は自動でこの作業を行い続ける
恐らくこれが、今この瞬間の私を保つ唯一の方法だからだろう

この妄想が無くなると現実と向き合わないといけない
現実は私を粉々に砕いてしまう

脳よ、少しでも長く続けてくれ
出来れば眠りにつくまで

散文詩「苦杯」6杯目

貴方がくれた手紙が、昔もらった本の間から見つかった

ほとんど思い出すこともなかった過去だが、なんとなく開いた

ほんの一瞬懐かしい匂いと共に、あの時の私達の姿が見えた

素晴らしい光景に思えたがすぐ消えた

中の文字を読んでも特に思い浮かぶことはない

まさに夢のような時間だったのだろう

散文詩「苦杯」7杯目

戻らない関係、進んでいく貴方、止まった私の時間

同じ時間軸にいるのにこうも違うとは

これが相対性理論か

散文詩「苦杯」8杯目

経験則で分かる

この後悔の念はいずれは消える

大丈夫だ

死にそうでも死にはしない

私が生きている限り、心は何度でも蘇るはず

散文詩「苦杯」9杯目

もう近づけない場所に貴方は行ってしまった

どうあがいてもそこには行けない

私の隣にいるのは、そこから伸びている貴方の影

その影と共に、涙を浮かべながら私は写真を見ている

そこには笑いながら楽しそうに写る2人の姿

写真だけでなく、私たちそのものもその時固まってしまえば良かった

そうすれば永遠の幸せを過ごせたのに

散文詩「苦杯」10杯目

いつもと変わらない生活のはずなのに、色んなものが輝きを失っている

私の影さえ消し飛ばしてくれる、それほどまでに貴方は眩しかった

ただそれが無くなっただけのことだ

散文詩「苦杯」11杯目

他者の不幸を願おうとする

意味もないのに

自分で自分が嫌になる

私を不幸の配達人にするほどに、求めることがあったのだろ

だが気持ちだけにしておかないと

行動に移した途端罪人になる

不幸の配達などあってはならない

散文詩「苦杯」12杯目

辛いのは、想像だけがただ膨らむから

もし貴方と話し結論を聞けば、私は簡単に幕引き出来る

それが出来ないからエンドロールの後の何かを期待して、私はただ座り続ける

散文詩「苦杯」13杯目

私にとっての絶望がやって来た

それは貴方にとっての輝かしい未来

その光源が作る影の中に私はいる

輝けば輝くほど影はより黒く広がる

早く遠くへ過ぎ去ってくれ

そうすれば影もまた消え去る

散文詩「苦杯」14杯目

あの時の私を、今は超えることが出来た

だがあの時隣にいた貴方はもういない

1人で高みに佇むことに、何の意味があるのだろう

何故この場所を望んだのだろう

遠くまで見渡せるこの場所で、狭い部屋にいるあの頃のはしゃいだ私達がボヤけて見えた