見出し画像

毒抜きドラム/ショートショート

軽音楽部の見学に来た。

昨日見に行ったカルタ部とは雰囲気がえらい違いだ。

少し怯えながらも、私がドラムをしてみたいことを顧問の先生に伝えた。

「ドラム?いいよね〜。かっこいいよね〜」

顧問まで、カルタ部とは雰囲気が違う。

やはり軽音楽部は私には早かったか。

私にドラムを教えてくれるのは、3年の先輩だった。

部活動紹介で見たバンドで、ドラムをしていた人だ。

「ドラムやりたいって言う人、毎年1人いるかいないかとかなんだよね。だから嬉しいよ」

「は、はい」

丁寧に教えてくれるのに、なかなか手と足が上手く動かない。

心地よいリズムが取れない。

「最初にしてはうまいよ」

気を遣ってくれる先輩。申し訳ない。


叩き続け、やっと4ビートというものができた。まだおぼつかないけど体に響く音が、さっきよりなんだか心地良くなった。

ズシン、ズシンと響く音。

なんだかそのたびに、自分の中にある黒いモヤモヤが追い出されていくように感じた。

「上手上手!このまま練習したら、すぐにうまくなるんじゃない?」


部活動紹介で、先輩が叩いていたドラムが、かっこよくてしかたなかった。

今までドラムなんて気にもしていなかったのに、あの瞬間、魅了された。

「頑張ります、」

ドラムの音みたいに大きな声は私からは出ないけど、私の叩くドラムの音は、部室中に響いていた。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?