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解約違約金10万円が取り消された話

私は、飲食店を経営しています。
少しの期間、お店でwifiを使用したかったので、Web検索で見つけたNTT代理店V社へ電話相談したのが昨年2018年6月頃のことでした。
光回線の工事が必要とのことで、代理店からメールで送られてきたURLから契約内容を確認し、電子署名をし、無事工事が始まりました。

契約した覚えのない契約の高額な解約違約金

半年ほど経った 2019年1月、光回線もwifiも不要になったのでNTT代理店V社へ解約の旨を電話で申し出ると、光回線の解約とは別途 契約した覚えのない

「「ギガらく」の解約違約金 約10万円が発生します」
と言われました。

その金額に驚いて、どんな内容なのかを聞くと

・ギガらくハイエンドプラン バリュータイプ(5年タイプ)
・最低利用期間(5年)の途中で解約した場合、
違約金として残月数×1,800円の解約金を一括で支払い。

という契約をしているとのことでした。

私は、
「「ギガらく」なんて初めて聞いたし、長期間の利用は考えていなかったので高額な違約金のかかる5年プランなんて契約するはずがありません。契約書にサインもしていないのでこんな契約は無効です。」
と言いましたが、

NTT代理店V社は、
「あなたが「ギガらく」を契約した証拠ならあります。」
(証拠を見せて欲しいと言うと、「見せられません」とのこと)

「当社に契約内容の説明義務はないので、説明はしていません。」

(ギガらくには2年、5年の2種類のプランがあるが)
「そもそも2年プランの説明はしていませんよ。5年プランの勧誘だけをしろと上から言われているので。」

「あなたが内容を理解していないのが悪いんです。」
との事で、何度電話をしても言った言わないの押し問答。

担当者の対応もかなり雑で、
「こっちもコンビニじゃないんでいつでも話が出来る訳じゃないんで。」
と言い出したり、
「違約金はNTTに払うもの。当社は関係ないのでNTTにでも総務省にでも言ってください。」
とのことで、全く納得のいかない形で話は終わりました。


NTTへ相談するも対応なし


翌月2月になっても「ギガらく」が解約されていない様だったので、代理店を通さずに直接NTTお客様センターへ電話をし事情を説明、「ギガらく」の契約無効と解約意思を表明しました。

すると、NTTお客様センターの方は、
「NTTの代理店にV社の登録はありません。B社と言う会社が関わっているようですが覚えはありますか?」
と。

私がその会社名は聞いたこともないと答ると、
「詳細を調べ折り返します」
と言われ、電話を切りました。

同様の内容を総務省のwebサイトから報告しましたが、何も対応はありませんでした。

4ヶ月間、NTTの対応はなく請求だけが続く

それから2ヶ月。
2019年4月末、依然としてNTTからは何も連絡がなく、「ギガらく」の利用料金請求書が届きました。

改めてNTTお客様センターに電話をかけて状況の進捗を聞くと、

「NTT東日本の担当者が既に対応をしたことになっていますが…?」
と言われました。

こちらには何も連絡が来ていない旨を伝えると
「担当者からすぐに連絡をさせます」
と言われ、電話を切りました。

同日、NTT東日本の地域担当者から電話がかかってきて

「代理店V社へ状況を確認をしたところ、あなたとの会話の録音がある様でした。」
と言われたので、

「会話を録音するなんて言われていません。」
と返すと、

「そうですか…また改めてご連絡します。」
と言われただけで、解約の手続きすらしてもらえませんでした。

再び、同様の内容を総務省のwebサイトから報告しましたが、こちらも一切対応はありませんでした。

結局、このたらい回し状態が2019年6月末日まで4ヶ月以上続き
何度問い合わせをしても「詳細を調べ折り返します。」
だけで、向こうからは一切連絡が来ない日々が続きー。

利用料金請求書、滞納料金請求書だけは毎月かかさず届きました。


消費者センターでは対応不可

私の中には、代理店はともかくNTTは有名な大企業だから、
(誠意のある対応をしてくれるはずだ…)
という思い込みがあったのは否めません。

ですが、このままでは状況は改善されないと判断し、このような消費者問題に寄り添ってくれる機関として、消費者センターがあることを思い出し、これまでの資料を持って相談に行きました。

消費者センターの方へ一連の出来事を説明すると
「申し訳ないのですが、私たちでは対応できません。」
と言われてしまいました。

聞けば、今回のケースだと私が「飲食店=事業者」であることから、通常の「消費者」には当たらないとのことでした。

事業者のための相談機関は、消費者センターではなく、「弁護士」になるとのこと。そうなると、こちらの支出や解決までの時間はかなりかかることが安易に予想されました。

(泣き寝入りした方が早いし、金銭的な負担も軽いのでは…)

ひとまず消費者センターを立ち去り、今後の戦略を立て直すことにしました。


相手の言い分から鍵を探る


私としては、「説明も聞いていない、契約のサインもしていない契約なんて成立するはずがない」が信念であり、これが通らないはずなんてない、と固く信じていましたので弁護士を立てるまでもなく、当然 違約金なしに解約ができると考えていました。

ですが、代理店はなぜ、あんなにも自信を持って「説明もしていないけど契約は成立」と言い切れたのでしょう?

また、消費者センターで区分されている「消費者」「事業者」にどのような差異があるのでしょうか…?


この中に、自分の知らない「常識」があるのかもしれない。そこに解決のヒントがある気がしてきたのです。



総務省の消費者保護ルールから学ぶ


それから、一心不乱にWeb上で契約トラブルについての情報を調査していると、今回のような電気通信事業上での取り決めをまとめた文書電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドラインが総務省から発行されていることを知りました。

約100ページを読了した結果、大体のカラクリが見えてきました。


代理店が「契約は成立」と言い切れた理由

「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」では、以下のように電気通信事業法を定めています。

第2章 契約前の説明義務(法第 26 条)関係より
『法人その他の団体は規定上「利用者」に含まれるが、締結・媒介等をしようとする契約が法人契約に該当すれば、説明義務は適用されない。』


つまり、契約相手(私)が飲食店であることから、今回の契約は「法人契約」にあたると代理店は判断し、契約前の説明義務がないと判断したと考えられます。

「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」を更に詳しく読んでいくと、店舗のような「事業者」は電気通信事業法についての知識力の高い「法人」に分類されることから、NTTや代理店側の契約内容の説明義務はなく、契約書の取り交わしも不要で口頭の約束で成立する、との内容でした。
また、特に今回の「ギガらく」という商品は、光回線の「オプション契約」で、この場合は個人、法人関わらず、契約は口頭のものでもよいとのこと。法人相手の場合は、やはり重要事項説明義務はなく、同意のみで契約の成立となり、説明義務を問うこともできない、とのことでした。

この内容には、(うそでしょ…)と愕然とし、(法律で決まっているならやはり泣き寝入りし、解約違約金を払うしか道はないのか…)と諦めかけました。


カラクリの「例外」


ひとまず「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」を更に読み進めていくと、「例外」があることに気がつきました。

第2章 契約前の説明義務(法第 26 条)関係より
『個人名義の契約は、基本的には、法人契約に該当しない。すなわち、例えば、小規模な個人事業主は、交渉力及び情報量において電気通信事業者等と格差があると考えられるため、原則として、一般の消費者と同様に取り扱うこととしている。』

今回の「ギガらく」について、NTT代理店V社から(勝手に)送られてきたお客様情報書類の契約者名には、私の個人名「だけ」が記載されていました。

また、私の経営する店舗は法人登記もしていない、まさに「小規模な個人事業」であり、交渉力や情報量ももちろんNTTなどの業者とは差があるため、今回の契約は法人契約には該当しないと考えられました。この場合、NTT代理店V社は、私を一般の消費者と同等に扱わなければならず、契約前の重要事項説明義務が発生します。

これを皮切りに、NTT代理店V社、及びNTT東日本が怠っていた電気通信事業者義務違反、及びその他法律違反と思われる箇所を多数見つけることができました。


契約の無効を主張


最初の解約申し出から4ヶ月。
2019年6月上旬、私は改めてNTT東日本へ連絡し、以下の点を指摘した上で改めて契約の無効を主張しました。

代理店V社の電気通信事業者義務違反、及びその他法律違反と思われる行為

・説明義務の不履行
契約解除の方法、解約金の具体的な金額、算定方法等についての重要事項の説明が一切なかった。

・故意による不利益事実の不告知
用意されている全てのプランをそもそも説明していないことを代理店は認めている。

・書面交付義務の不履行
専用の説明書面を契約締結前に送付していない。

・無断録音、無断開示、開示義務の違反、人格権の侵害
代理店担当者は、私に「無断」で電話の会話を個人的に録音し、私への「利用目的の事後通知義務」を怠ったまま、無断で第三者のNTTへ知らせている件については、「人格権の侵害」にあたる可能性がある。
また、保有データの開示を求めた際、正当な理由の説明もなく開示の拒否をしているので、「開示義務の違反」行為となる。
NTT東日本の電気通信事業者義務違反、及びその他法律違反と思われる行為

・苦情等の処理不履行
苦情及び問合せに迅速に処理する義務を怠り、初回相談から正当な理由もなく4ヶ月以上の期間放置し対応がない。

・解約の不当拒否
こちらから契約解除の申し出が度々あったにもかかわらず、4ヶ月以上何も手続きをしない。(更に利用していない料金を請求し続ける)

このような代理店V社の販売手法をNTT東日本が容認していること(「録音情報があるらしい」と消費者に脅しとも思える発言をしてくる等)は、顧客に対して大変不健全であり、NTT東日本に対しても不信感を持ったことを伝えました。

このような契約は無効であることと、すぐに解約、料金請求中止の対応をするように改めて伝え、対応できない場合はその正当な理由と、いつまでに何を対応するのかを今すぐ明示するようにお願いしました。

すると、NTT東日本の担当者の方は、「回答まで3週間(6月末まで)の時間をください」との返答をされました。

「解約を申し出たあとの利用料金については請求されるのはおかしいので、それだけでもまず中止してください。」と言うと、

「そちらも含めて6月末に回答させて頂きます」とのことで、この時点で請求の中止や解約の手続きをするつもりは一切無い様でした。

すぐに対応がなされないことに疑問を持ちながらも、「わかりました。3週間後までに回答がなかった場合は、代理人を立て民事訴訟を起こします。訴えの相手はNTT東日本の地域管轄支店の支店長(実名)とさせて頂きます。」と返し、電話を切りました。


3週間後…



NTT東日本から連絡は来ませんでした。



真摯な対応、NTTお客様相談センター


もう、何度電話をかけたか思い出せないくらい、NTTお客様相談センターの担当者の方と話しをしました。

私は、
「もうこれ以上の放置はできない※のでNTT東日本の担当支店を相手に弁護士を立て訴訟を致します。

(※最初に契約内容に異変を感じてから半年が経過すると代理店の違反の一部について訴えることが出来なくなる(時効切れの)恐れがあるため)

これまでの担当者では、また何も対応をしてもらえないと思うので、NTT東日本の責任能力のある別の方に担当者を変えて話し合いをさせてください。」
と告げると、

NTTお客様相談センターの方は、
「まだ対応がされていないなんて…大変申し訳ございません。必ず関係部署の責任能力のある者から連絡をさせます。」
と動いてくださいました。


それから3時間後…NTT東日本の(いつもの)担当者から電話がありました。

(いつもの人じゃん…)と思いながらも応対をすると、

聞こえない様な か細い声で

「今回の件は、こちらの対応が遅かったこともありますので、
違約金、2月以降の利用料金も不要で解約とさせていただきます。」


以上。

でした。


なぜ、何度お願いをしても4ヶ月以上も何も対応をしなかったのか?
代理店やNTTはどのようなつもりで本件に関わっていたのか?
誰の何が間違っていて、今後、どんな改善が成されるのか?

までお聞きしたいところでしたが…

無条件での解約が達成されたので、他のことはどうでも良くなって「わかりました」で話は終わりました。


ただ、一連のやりとりを俯瞰してみても、このような顧客との問題は企業内の上長の耳へ情報が入ることはなく、末端の担当者同士の手の中で揉み消されているのでは、と感じています。

担当者が「クレーマーか、放っておこう」と長期間放置し、その対応自体が問題視されると「面倒だから無料にして黙らせよう」と、問題点の解析もせず無責任に抹消してしまっているのであれば、この様な事件は今後も改善されることなく繰り返されていくと思います。

今回関わりを持ったNTT代理店V社は、「代理店登録がない」とNTTお客様センターが首を傾げていましたが、その点についても最後まで解明されないままですが…

NTT代理店V社は、別称で代理店H社を名乗っているようで、同社は、過去にも2015年2月、12月に二度、このような営業方法で総務省より行政指導を受けているとの情報を確認しています。
以降も企業体質は改善されておらず、同様のトラブルが絶えないようです。

Web検索すると、同様の商品の契約を巡り、今回の様に違約金を支払わずに済んだ人もいれば、泣く泣く支払いをした方もいる様ですが、前者の場合、やはり同様に交渉に長期間を要したケースが見受けられました。


今回の一件で学んだこと

・ネット上で対面せずに契約ができてしまうサービス、実態のわからない業者との契約は極力避けること。
(業者名、サービス名を事前に検索するだけでも一般的な評価や注意点についての情報を得ることができる)

・どのような契約の場合も、契約内容、違約金等について重要事項説明書類の送付を依頼し、必ず契約内容を事前に確認すること。
(ただし今回の様に気づかない間に契約締結とされている場合も)

・大企業でも信用しきってはいけない。

・警察はもちろん
、総務省も助けてはくれない。

・不当と思う請求には泣き寝入りせず、考え得る対策(学習)、交渉を。


私は事業者であったため、少し特殊な状況ではありましたが、個人の場合はお近くの消費者センターも力になってくれるはずです。(とても丁寧で親身になって対応をしてくださいました。)


この記事が、契約トラブルについてお悩みの方の一助になれば幸いです。


※この記事は、口頭で契約が成立してしまうサービスの営業手法、関連する担当者の対応に問題が感じられたという体験報告及び利用者が取るべき対策の提案を目的としています。
登場する企業やサービス・商品を中傷するものではありませんので、ご理解の上、ご利用は自己責任でお願い致します。

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