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50人未満事業場の「ストレスチェック」は緩やかに義務化、「集団分析・職場環境改善」の義務化は時期尚早という判断に(たぶん)

9月30日開催の「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を傍聴しました。

次回に「中間とりまとめ案」を提出するとのことで、いよいよ大詰めですね。
資料1として、「第1回~第5回検討会における主な意見及び論点案」が提示されました。

●50人未満の事業場におけるストレスチェック

今までの論点を5点にまとめて「論点1から論点5のまとめ 50人未満の事業場におけるストレスチェックの今後の方向性」として示され、ストレスチェックの50人未満の事業場への拡大が提案されました。

資料1「第1回~第5回検討会における主な意見及び論点案」

これについて、50人未満の事業場は産業医選任の規定がないことから、高ストレス者の面接などに疑問を呈した医師会の構成員以外からは、明確な反対意見はありませんでした。

資料1に記載されていますが、

「50人未満の事業場において、 ストレスチェックを実施する場合の労働者のプライバシー保護については、外部機関の活用等により、 対応可能な環境は一定程度整備されているものと考えられる」(P51)
「さらに、 健康診断を受託している一般の病院 ・ 診療所等において 、ストレスチェックに対応できる環境整備について検討すればどうか。」(P51)
「衛生委員会等の設置義務がない50人未満の事業場では、関係労働者の意見を聴く機会を活用することが適当。関係労働者の意見を聴く機会は、その事業場の実情に応じた方法とし、衛生委員会等のように会議体の構成要件は課さない。」(P55)
「監督署への報告義務は、一般健診と同様に、50人未満の事業場については、負担軽減の観点から課さない」(P55)
「厚生労働省は、50人未満の事業場の現状に即したストレスチェック実施マニュアル(モデル実施規程を含む)を示す」(P55)
「さらに、これらの制度及び支援の周知並びに 50人未満の事業場における実施体制の整備に要する期間を確保するため、十分な準備期間の設定を行うことが適当ではないか。」(P62)

資料1「第1回~第5回検討会における主な意見及び論点案」

などの方向性が示されて、義務化とはいえ、中小規模事業場の体力を考えての、緩やかな導入となるようです。
具体的な実施の流れのイメージとして下記も提示されています。

資料1「第1回~第5回検討会における主な意見及び論点案」


構成員からの意見

○現在の制度をそのままダウンサイジングするのではなく、50人未満事業場は地方に多いことや、10人未満事業場や家族経営などへの考慮、また第一次産業など産業別の特徴なども考えてほしい。

○プライバシー保護から外部機関の活用等が前提になっているが、外部機関の質の担保が必要。

○現在の制度でも高ストレス者は受検者の約10%だが、50人未満事業場の労働者3000万人のうち高ストレス者が10%だと300万人、その半分が受けることが可能な体制整備を。

○労働者全てにメンタルヘルス対策としてストレスチェック制度が導入されるのはよいが、精神障害の労災が増加し、ストレスチェック制度で歯止めが効かないのなら、他の施策は考えられないのか。

○面接について地域医療を活用していく方向であれば、登録産業医を優先したり、また産業と地域では違いがあるので、そこを埋める研修などが必要では。

などがあり、こうした指摘を含め、次回の中間とりまとめがどうなるか、ですね。

ちなみに「50人未満の事業場の現状に即したストレスチェック実施マニュアル」について、次年度に作成する予定と事務局から回答がありました。この「マニュアル」の作成が大変そうですが、どんなものになるか楽しみでもあります。ここをどのような内容にしていくかが、鍵になるかと。

また準備期間とは具体的にはどのくらいかという質問に対して、数年間と回答があり、構成員からは、法制化ではなくマニュアル完成後からの十分な準備期間を、という注文もありました。

●集団分析・職場環境改善

今までの論点を2点にまとめて「論点6及び論点7のまとめ 集団分析・職場環境改善の今後の方向性」 として示されました。結論としては、集団分析・職場環境改善の義務化は見送られるようです。

資料1「第1回~第5回検討会における主な意見及び論点案」

個人的には、集団分析だけでも義務化になるかと思いましたが、

集団分析だけ義務化することは可能かという点については、実態として、集団分析だけ実施する場合には、管理職が神経をとがらせたりするなど、むしろマイナスが生じることもあることから、集団分析だけをやればいいと誤解されないように、一体的な制度であることをしっかり示すべきという指摘もあり、現時点では、集団分析だけ義務化することは判断できないのではないか。

「第1回~第5回検討会における主な意見及び論点案」

とのことで、集団分析・職場環境改善は一体的な実施が基本ということでした。

構成員からの意見

○大企業でも、試行錯誤のところが多い中、義務化は難しいのでは。

○ストレスチェック制度は医療の問題としてではなく、人事労務が関わるべきで、労使間の信頼関係づくりをするものとして捉え、実施責任者を人事労務にすべきでは。

○労働者、事業者どちらにもよい制度のはずなのに進んでいない要因を把握することが必要。事業場として何をすべきかがわからないという声を聞く。

○義務化に向けての工程表をつくるべき。

○結果報告書に職場環境改善実施の有無を項目として1行追加しては。

○職場環境改善の成果はすぐには出てこないことを念頭において複数年で考えるべき。

○職場環境改善の成功には、経営者の理解してもらう土壌をつくることが大切。などなどがありました。

集団分析・職場環境改善を義務化しないで、50人未満事業場にストレスチエックを導入するということは、ストレスチェックだけでも効果があるという判断か、という問いに対して、事務局からは、制度の本来の意義として、集団分析・職場環境改善をすすめることが重要だが、
「ストレスチェックの実施だけでも、約7割の労働者から『ストレスチェックの個人結果をもらったこと』を有効とする回答が得られた」(資料1 P77)ことなどをあげ、まずはメンタルヘルスのセルフチェックの機会を全労働者に導入することを優先として、職場にメンタルヘルス対策という土壌をつくっていこうということのように感じました。

また、50人未満用の新規マニュアル作成分だけでなく、今のストレスチェック指針やガイドライン、マニュアルも改定するとのことでしたので、集団分析・職場環境改善についても、今までの集積や、課題の解決となるものを盛り込んでほしいという要望も構成員から出ていました。

他にも、同じように傍聴した友人の保健師の方から、構成員の意見について下記のようなお話しをいただきました。
〇公認心理師会より「実施者」養成研修を受けた人も、相当数把握している。ただ、これを実際業務に繋ぐ「その先」がない。
⇒厚労省HPにも実施者養成研修先のリンクも載っていてたくさん受講されているが、実際に、現場に繋がっていない。

〇現行のマニュアルも結構よくできている
⇒現行マニュアルは、自分もよく出来ていると思う。Q&A集も充実している。ちなみに「厚労省ストレスチェックアプリ」もずいぶん使いやすく、見やすくバージョンアップが進んでいる。これまでの「アプリを使いやすくして欲しい」というご意見の方は「使ったことないのかも」。

〇「開業保健師」も増えているので活用して欲しい
⇒ありがたい。がんばりたいと思います。←真摯に活動されている方を多数存じていますよ〜(筆者)
実際に現場で活躍している専門職の方の見方・考え方は、とても勉強になります。

取り急ぎ、ご報告。

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