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全ての労働者に等しい産業保健を。ただ、義務化される事業者側(大規模↔️中小規模)に違いがあることも現実

5月31日開催の第3回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会を傍聴しました。

ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第3回資料

1回目、2回目のレポートはコチラ ↓↓↓


●WHO 職場のメンタルヘルス対策ガイドラインの戦略とは

はじめに1回2回の検討会での意見のまとめを事務局が紹介(資料1)

第1回及び第2回検討会における主な意見 P2

次に、堤構成員からWHO 職場のメンタルヘルス対策ガイドラインの紹介(資料2)がありました。
ガイドラインでは、①全労働者、②ヘルスケア等従事者、③精神的な問題のある労働者の3つのそれぞれの対象者に対して、6つの介入(❶組織介入、❷管理監督者トレーニング、❸労働者トレーニング、❹個人向け介入、❺精神問題による休業後の職場復帰、❻精神的な問題のある労働者の就労)の推奨事項が記載されており、これを受けての戦略がまとめられています。

資料2  表9 「WHO/ILO Policy Briefの職場のメンタルヘルス対策の3つの戦略」

これについては、後の議論の中で、構成員からは、このガイドラインの提言から実施された施策や事例による変化や成果を教えてもらえればという意見が出ていました。

●推進派、慎重派からの意見

以降は構成員からそれぞれの意見を聴取。
推進派、慎重派から意見がだされましたが、1回2回と同じ展開ということもあり、若干意見も繰り返しが多かったかもと感じましたが、下記に印象的だった発言を記載します。

推進派
○精神疾患の労災の申請や認定が増加しているのは、ストレスチェック制度により、相談がしやすくなるなど、敷居が低くなったことで、顕在化しただけでは。決して悪いとばかりは言えない。
○長時間労働への面接指導は事業場規模に関わらず義務化されているのに、ストレスチェック制度で事後措置はできないということはないのでは。

慎重派
○課題があるため、50人未満の事業場は義務ではなく、努力義務になった。そのときから、課題は改善しているのか。時間が経過したから義務化というのはいかがなものか。
○地域産業保健センター(地さんぽ)は健診の事後措置だけでも厳しく、メンタルヘルス対応には人的資源も含めて予算が必要で確保できるかも検討すべき。
など。

●今ここにある「義務化への課題」をどうクリアしていくか

そんな中では、ある構成員が
「プライバシーの確保、事後措置の実効性、実施事務者などの体制整備、コスト(実際の金額や助成の有無)、地さんぽの対応はどこまでか」
といった、50人未満の事業場のストレスチェック制度を義務化する場合の課題を明確にまとめてくれました。

また別な構成員から
「50人未満の事業場の労働者は全体の労働人口の半分以上にもなるので、ここに対策をとる必要はやはりある。ただ現行のままの制度導入には、リスクや危惧がある。大規模と中小規模では状況が大きく変わるので、課題への知恵を絞りつつ、二本立てで考えるべきでは」
と発言され、ここらへんが落としどころかしらと思いながら、聞いていました。

他にも、「50人未満を30人未満にしては」「労働者にはセルフチェック、事業者には実施による効果の情報提供とパラレルに分けた対策がよいのでは」「小規模であることを活かして全員面談でプライバシー確保した事例」などの発言もありました。

集団分析・職場環境改善については、
「ストレスチェックの集団分析はツールの一つで、実際は様々な方法で職場環境改善の取組をしているので、義務化でパターンを求めると実態とかけ離れてしまいのでは」
という意見が前回と同様に出ていました。
個人的にはこちらの義務化は難しそうにも……。事例集の作成や研修会の実施などかなとも感じましたが、どうなっていくのでしょうか。

今回は、まずは構成員の意見を最大限に聴くということで、この検討会でフォーカスするのは「50人未満の事業場のストレスチェック制度を義務化するか」「集団分析・職場環境改善を義務化するか」の2点とすることについて構成員から了承を得て終了となり、具体的な対策への「議論」は次回以降ということになりました。

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この投稿の中でも、私自身が推進派、慎重派などと対立的な書き方をしてしまっていますが、構成員の一人が
「メンタルヘルス対策は、労働者の精神衛生がよくなり、事業者にとっても生産性の向上につながるという、両者にとってプラスになる制度のはず」と話されていて、ここを忘れてはいけないな、と。
メンタルヘルス対策、そしてストレスチェック制度が労働者、事業者にとって負担ではなく、両者にとってメリットと感じるものになることを願っています。

次回は、6月24日開催予定です。

※オンライン傍聴では会場での発言者がはっきりとわからないため、構成員のお名前を記載できず。

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