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特定保健指導は、多くの人に受けてもらってこそ、エビデンスが積み上がっていく

6月28日開催 第4回 効率的・効果的な実施方法等に関するWGを傍聴

「予防・健康づくり」の現場取材をメインにと考えていますが、コロナ禍の影響でなかなか取材に行けません(泣)。
しばらくは、「予防・健康づくり」に関係の深い、厚生労働省の検討会の傍聴を中心にレポートしますので、お付き合いください。

現在、特定健診・特定保健指導制度について、令和6年度(2024年度)からスタートする第4期に向けて「第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会」がはじまっており、検討会の下に2つのWGが2つ設置され、詳細な内容について議論が行われています。
6月28日開催、第4回 効率的・効果的な実施方法等に関するWG
資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26495.html

●「そもそも問題」への回答

はじめに、WG開催ごとに医療保険者の委員から質問が出る「そもそも、特定健診・特定保健指導制度は効果があるのか問題」について、今回事務局(厚労省課長)から、「健康増進・医療費適正化に効果があるという前提のもと、第4期の見直しをこのWG、そして検討会で進めていく」という回答がありました。根拠として効果検証(参考資料3)について説明があり、今後も引き続き効果検証していくそうです。そして「より精緻な効果検証のためにも、保健指導の実施率を高めて、受ける人を増やすことが必要」とのこと(実証事業の対象者数は保健指導実施群16万人、未実施群は130万人の規模)。 
それにしても課長の発言が明確。勝手ながら覚悟を感じました。これからは「そもそも問題」の質問は出ないのではないでしょうか。

●評価とポイント

さてさて今回の本題。2kg2cmがアウトカム評価として達成目標となりそうですが、中間的なアウトカムとしての1cm1kgの評価と「食習慣」「運動習慣」「喫煙習慣」「休養習慣」「その他の生活習慣」における 行動変容の評価については、かなり意見が出ていました。
行動変容の評価を取り入れることへの賛成意見として、
高齢者など体重減少が向かない場合もある、保健指導の目的である行動変容を評価できるのは大切では、アウトカムでなくプロセスととして評価してはなど。
反対意見として、
実務事業の委員からは、行動変容の項目を評価に入れると保健指導が複雑になり、システム改修の負担も大きい。また虚偽の申告の可能性もあるのでは。
専門職の委員からは、行動変容していれば結果は出るように指導するのが専門職のプロとしての仕事なので、行動変容自体を項目に入れなくていいのでは、など。ここらへんの意見を次回どのように取り扱うのか。

「ポイント」について。事務局提案では、支援それぞれのポイント設定が以前より低くなっており、より支援投下しなければならなくなる意見が出ていました。ポイント配分については見直しがかなり入りそうですね。

全体的なものとして、
○非介入群が多いのは効果を見えにくくする。たくさん介入できるよう、見直しを。保健指導は、時間、やり方、回数などを自由にして、「禁煙」「受診勧奨」などリスクを減らしたことを評価すべきでは。
○保健指導のやりやすい環境は保険者によって違う。保険者別によって事業設計できるようにしては。
そうですよね、と一人うなずく(笑)

保健導の実施率の目標は45% (←第4期も同じになりそうです)に対して、ただ数字を掲げるだけでなく、達成への道筋を考えていかないと、また達成できないということになる、保険者のがんばりだけではもう限界なので、企業や加入者本人への働きかけが必要という声もありました。

●多くの人に受けてもらうために

最初の「そもそも問題」にもありましたが、より多くの人に保健指導を受けてもらうために、という視点が今回かなり大きそうです。
メタボ解消の保健指導として、特定保健指導という基本となる「型」ができて十数年。「型」は十分に浸透したのではとも思います。より多くの人に受けてもらうために、そろそろ「型」にとどまらない(どこまでかはわかりませんが)創意工夫の時代がきたようにも感じました。

傍聴後の事務局のお話では、「今後の見通し」はまだわからないとのこと。行動変容の評価の取り扱いやポイント配分、プロセス評価など、今回の議論からは、次回はまだ「とりまとめ」までいかないのではとのことでした。

厚生労働省の検討会傍聴の醍醐味は、制度変更の内容を知るだけでなく、その過程を知ることができること。厚生労働省職員の方が以前お話しされて印象的だったのが「政策にもストーリーがある」。かなり私の個人的見解が入っていますが(笑)、つくる側の思いを感じ、お伝えできればと思っています。

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