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制服の彼へ綴るラブレター

好きな人がいた。

いわゆる"クラスの一軍"グループにいる、寡黙な人。
出しゃばらないのに、なんだか目を惹く。
不思議な雰囲気を纏っていた。
歌が上手な人だった。

初めて彼を見た入学式の日からずっと「気になる存在」だった。


文化祭の日。教室につくった特設会場。
そのステージの真ん中に、彼は立っている。

「将来は歌手になりたい」
そう話す彼の歌声は、とても、綺麗だった。
真っ直ぐ澄んでいて、私の心に響いた。

彼が、わたしの脳内を占拠した。

同じ学校、同じ教室、同じ部活。
月曜日がたまらなく待ち遠しかった。


「あれってさ、今思えば恋愛として好きっていうか、"推し"みたいな感覚じゃない?」
昼下がりの居酒屋、ほろ酔いの友人が言う。

彼女もまた、当時クラスメイトの男の子に夢中だった。

なるほどな。確かに。通ずるものがある。

会えるだけで万々歳
目があったら心臓は爆発寸前
名前を呼ばれた日には天に召す

白に200色あるなら、好きには10000種類あると思う。
ほとんど憧れに近かったのかもしれない。

なんにせよ、彼がいる教室は特別な空間だった。
学校に行けば彼に会える。
それだけで毎日が幸せだった。

駆け引きもない、ステータスだって関係ない
純粋に、ただ、好きだった。


同窓会、
「あなたのことがずっと好きだったんだよ」
そんな想いを隠しながら、まだ制服を着ていたあの頃の話をした。

彼が歌ったあの曲を、街中で耳にすると思い出す。
懐かしさと、少しの寂しさと一緒に彼の記憶はやってくる。

私の青春に彩りを添えてくれて、ありがとう。

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