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住んで初めて知る、中国の新型コロナの封じ込め策

新年あけましておめでとうございます。
今年も残りの駐在期間目いっぱい、現地ならではの内容をインプットし、noteで共有していきたいと思います。よろしくお付き合いください。

年末年始はギリギリまで北京への出張の可能性があり、予定を入れられずにいたのですが、12月最終週に北京で新型コロナの国内症例が多発し、結局出張はキャンセルに。
今年一番の寒さも(日中で-4度)到来し、元来おうちが大好きなわたしは、基本的に日本で過ごすのとほぼ変わらない、食べて寝て、箱根駅伝を見て涙するという静かなお正月を過ごしました。1月1日は昼からシャンパン飲んで生ガキ食べました。幸せだ…!

年賀状代わりの近況報告LINEやオンライン飲みで「年末年始は一時帰国しないの?」「上海は忘年会なんてできる環境なの?」(わたしが忘年会を理由にいくつかの日程候補にNGを出したので)とよく聞かれました。
自身の赴任の可能性があったり、身近な人が住んでいたりという状況じゃないと、なかなかリアルタイムの情報は伝わらないよなぁと感じました。
今日はこちらに住んで知る、中国の新型コロナ封じ込め策の実態やビジネス渡航について、また今の環境について駐在員の正直な心情をつづりたいと思います。

・徹底的な新型コロナ封じ込め策
・名ばかり「ビジネス渡航」
・駐在員のわたしが今辛いこと

徹底的な新型コロナ封じ込め策

11月に上海で半年以上ぶりの、国内症例が発生しました。
次の日新聞では、患者の氏名、勤務先、推定される感染経路、過去14日間の行動、濃厚接触者数が全て明らかにされ、患者は指定病院への入院し経過観察していること、患者が利用したと思われる場所に全て消毒が施されたこと、患者の居住地は中リスク区域となりロックダウンされること、濃厚接触者約200名にPCR検査が実施されることが報じられました。
上海市では、大きい商業ビルや居住区、観光地等に入る際、スマホで行動記録を元に過去14日間の危険地域への立ち入りがない事を証明する「随甲吗」というコードが必要となり、こちらに行動記録が残っています。
スマホで把握した行動記録を元に、立入地域や濃厚接触者のコロナ感染の有無の確認を確実に実施するため、感染経路不明の患者が発生する可能性が少なく、該当しない市民には普段どおりの日常があり続けています。忘年会は何の制約もなく行われます。

一方で、人の移動については厳格です。
感染者の発生した地域、都市から別の都市へ入る際には、PCR検査の陰性証明を持参するよう義務付けられるケースや、感染者の発生した地域から自分の居住地に戻った場合に、14日間の隔離を強制されるケースが多く発生しており、基本的に感染者発生地域と他地域の往来はかなり困難です。
(わたしの年末年始の出張も、上海へ戻った後14日間隔離される可能性が高くなったため、中止になりました)

なお、ここで「多発」という言葉を使いましたが、新規感染者(国内症例)の数は多い日でも5名程度、殆どが前日以前に発生した患者の濃厚接触者です。
市中に爆発的に感染が広がるイメージではなく、濃厚接触者を全員検査することによりあぶりだされた人々です。

名ばかり「ビジネス渡航」

11月30日より、日中は短期出張者を隔離なしで移動させることを可能とする「ビジネストラック」の運用を開始しました。

このニュースがでたとき、私自身一時帰国が可能になると思いましたし、「仕事で行っている駐在員は行き来できるようになったのでしょう?」と言われることが本当に増えたのですが、実態は違います。

実際に中国⇒日本に短期渡航する際の手続きは規定されたのですが、逆の日本⇒中国についての発表がないため、中国への入国後は依然14日間の隔離を受けざるをえない状況です。
また、現在日本から中国への15日間のビザなし渡航ができなくなっており、出張者もビザの申請が必須なのですが、このビザの申請に必要な地方政府からの招聘状が12月頃から全く発行されない状況で、居留証を保持していない出張者はまず渡航すらできません

ビジネストラックの運用を開始した11月末は、日本で感染者がかなり増え始めた時期だったので、よく中国も受け入れたな、と思ったのですが、招聘状の発行を止めることで入国者数を調整できるという目論見ありきだったのかと思います。
普通のサラリーマンで、2週間の隔離(=在宅勤務)を何度もすることはできないし、そもそも片道30万円の航空券を何度も購入できないので、基本的に今中国にいる駐在員は日本には帰れません。

駐在員のわたしが今辛い事

わたしは元々、約1年間の期限付きで上海に派遣されているので、派遣期間に日本に戻るつもりはありませんでしたが、「戻らない」と「戻れない」は心情的に大きな違いがあります。

何より恐ろしいのは、駐在期間中に日本で家族や大事な友人・知人に何かあったとき、駆けつけることができないことです。コロナが発生したころ帰国することなく留まった駐在員には、既に1年以上日本に帰れず、家族と離れたまま、次にいつ戻れるかもわからない日々が続いている人もいます。

また個人的にとても怖いのは、こちらで初めての病気をすることです。風邪やインフル等、知っている病気ならまだしも、言葉も十分でない、医療体制も不安のあるところで、自分でもわからない病気にかかったら…。
今までは、最悪なんとか日本に帰るという最後の手段があったけれど、それが絶たれた今、絶対に病気できないという緊迫感と、無条件に甘えられる人がここにいてくれたらという孤独感が常にありますし、小さな子どもがいる家庭など病気への恐怖感はなおさら強いだろうな、と思います。

おそらくこういった小さな不安の積み重ねだと思いますが、今駐在員のメンタル対策が多くの会社で課題になっているようで、大企業では、隔離期間を在宅勤務または特別休暇として、一時帰国を認めるところも出てきたようです。

ただ、日本の殺伐とした機運の高まりを見ると、日本に一時帰国することでこの辛さは解消されるのか、正直わかりません。
新たな政策や新規患者数を伝えるニュースのコメント欄に書き込まれる「海外からの渡航者がウイルスを持ち込んでいる」「この時期に帰国するなんて渡航者はセルフィッシュ」「入国規制を強化し一律入国をストップするべき」などの言葉には、まだ帰国を控えているわけではないけれど、とても心がざわつきました。

日本で「海外からの渡航者●●名が感染」等の見出しで発表されるニュースに、上記のようなコメントがたくさんつけられています。
実は中国でも、輸入症例と言われる到着時の空港でのPCR検査で感染が発覚する症例は毎日報告されていますが、患者は治療を受けて指定の待機期間を経て生活に戻るので、彼らが感染を国中に広めた例はありません。中国への入国者は、皆渡航前3日以内にPCR検査を受けて陰性であるという結果を以て入国していますが、それでも毎日感染者は報告されます。
日本は中国に比べると、入国の際の規制が弱いです。ですが、渡航者も入国するやむを得ない理由があり、少なくとも現在の指定の手続きを経て入国しています。

疫病が人の心も蝕んでいるのだと思いますが、こんなときだからこそニュースや情報への感度を高めて、それぞれの置かれている状況を考えて、言葉を紡いでいけたらと思います。
そして、早くこの苦しい時期が終わり、以前と同じ当たり前の日常が戻ってくることを心から願っています。


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