【デザイン事例】ビジュアル表現だからこそ、丁寧に言葉を交わしたい〜餅屋ロゴが産声をあげるまで〜
こんにちは。SNS時代のプロモーション企画集団「餅屋」です。
私たちはインフルエンサーマーケティングのあり方を変革することを目的に、2020年春より活動を続けています。これまで多くの企業、クリエイターと共にコンテンツを創り、広げるためのお手伝いを行ってきました。
そういった私たちの活動に対する想いや願いを込め、餅屋たらしめる役割を担ってくれているものの一つに、2020年当時から使用している餅屋のロゴマークがあります。
縦書きでどどんと、餅屋。どっしりとした印象ではありながらも、どこかポップさもあるロゴは餅屋に携わるメンバーにとってのお気に入りの存在です。実はこのロゴ、制作してくれたのは餅屋にクリエイターとして関わってくださっている、デザイナーのみゆきちさんでした。
餅屋が立ち上がった2020年から今もなお、デザイナーとして多くのクリエイティブに関わってくれている彼女。今回は、みゆきちさんと共に餅屋のロゴ制作の過程とそこに込めた想いとを追いかけます。
「彼女ならきっと良いものを創ってくれる」そんな直感がはじまりだった
三島:
今の餅屋が立ち上がったのは、2020年のちょうど今頃(※取材日は4月8日)でしたよね。新しいロゴを作ろうと思い立って、僕と同い年で当時から素敵だなと思っていたみゆきちさんにお声がけをしたのだったかな。なんだか懐かしいですね。
ふくま:
もともと、餅屋には前身ともいえる「mochiya」という取り組みがあったんですよね。「ビジュアルクリエイター」という名称で、企業のSNSに投稿するような画像の制作なんかを請け負っている場所でした。
三島:
以前は弊社が今ほどインフルエンサーマーケティングに注力していなかったですからね。そういったものよりも、企業がSNS投稿を行うための素材がないという課題感をご相談いただくことが多かったんです。そこでSNSに投稿するための素材を、クリエイターの力を借りながら提供していました。
さまざまなSNSのプロモーションをやっていく上で、インフルエンサーマーケティングは切っても切り離せないものでした。ただ、手当たりしだいにPRを依頼するような、インフルエンサーを拡声器さながらに扱うインフルエンサーマーケティングも見受けられるようになってしまったんです。
ふくま:
リーチ数ばかりにとらわれるような取り組みがSNSには溢れかえっていて、僕たちにも「とにかくバズらせてほしい」「〇〇万リーチがほしい」のようなご相談が増えました。そんな潮流を変えたいと思って生まれたのが、今の形である新生「餅屋」です。
三島:
クリエイターとの共創を行う点は、以前も今も似ているため、名前こそ「餅屋」と踏襲しましたが、根底にある意思は少しずつ変化していました。そこで、僕たちが持っている想いを形にするためロゴを刷新しました。
みゆきち:
ロゴを創るにあたってそういった背景のお話を聞かせてもらうことはありましたが、改めて伺ってみると素敵な考え方ですよね。そういった強い想いのある取り組みに関わることができて光栄です。
餅屋のロゴ制作は、わたしにとってお二人と進めた初めてのお仕事だったと記憶しています。どういった流れでロゴ制作を相談しようと思ってくださったんですか?
三島:
みゆきちさんにお願いしようと思ったきっかけは、一言でいうと「直感」かもしれません(笑)。もともと僕とみゆきちさんは、同世代ってこともあって、別の機会で知り合ってはいたんですよね。当時から、とてもきれいなデザインをされる方だなと思っていました。
すでに話をしたことがあって、ある程度人となりを知っていたからご相談したというのもありますが、なにより彼女が更新していたポートフォリオも魅力的だったんです。タイポグラフィーのポップさであったり、人柄を上手に反映した名刺だったり。
今回のロゴ制作にあたっては、みゆきちさんのデザインが僕たちのイメージする餅屋にもぴったりと合うと思っていました。
ふくま:
僕たち二人はさることながら、餅屋の中枢にいたメンバーの誰しもが「合うと思う」と賛同してくれたんです。フィーリングと言ってしまいたいところですが、あえて言葉にするなら……「意思を表現しながらも、親しみやすさを乗せたデザインを得意とするのがみゆきちさんだと感じたから」といったところでしょうか。
餅屋は企業とクリエイターとの共創によってプロジェクトを成し遂げていきたいと考えているチームです。だからこそ、そこに関わりたいと思える朗らかさは、ロゴに反映したかった。そういった考えを、みゆきちさんなら投影してくれると感じました。
すれ違いのないデザインを目指すために、すれ違いのない対話を重ねる
みゆきち:
改めてご依頼の背景を伺えると、そんなふうに感じてくれていたのだなと知れることばかりですね。信頼してお任せくださっていること、とても嬉しいです。それに、お二人の想像が当たっていたのか、制作が決まってからもサクサクと対話が進みましたよね。
ふくま:
今回のロゴ制作は、大きく分けて「言語化」「ラフ案制作」「ブラッシュアップ」という3つのフローで行いました。僕たち自身がロゴを制作するという経験がそう豊富ではなかったので、進行の舵取りをみゆきちさんが率先して担ってくださったのもすごくありがたかったです。
みゆきち:
最初にお二人の考えている餅屋のイメージや目指すゴールなんかの共通認識を持ちたいと思ったので、ヒアリングを通した言語化から始めましたね。ロゴはビジュアルに訴えかけるものですが、制作する過程では、作り手も起案者と言葉を交わして理解することが大切だと考えているからです。
ヒアリングの際、驚いたのはお二人の言語化力の高さでした。言葉ではなかなか表現できない方もいらっしゃるなかで、お二人にはそういった詰まりがないし、淀みもありません。ふくまさんと三島さんが、どれほどに同じ視座で同じ景色を見て考えているのか伝わりましたし、わたしにも伝わるように話してくださったのが印象的でした。
三島:
このときから「言語化しなくては」と思っていたわけではないんです。ただ、餅屋はふくまと僕とで始めた取り組みなので、日頃から考えていることや挑戦したいことを対話しています。そういった日頃の言葉の交わし合いが、餅屋全体の解像度を上げるのに貢献したのかもしれませんね。
みゆきち:
対話のなかでお二人が特に強調されていたいくつかのキーワードがありました。それらを整理していくと、餅屋が目指している「クリエイターや企業との共創」「インフルエンサーマーケティングによる正しい価値提供」などの基盤となる考え方が浮かんできたんです。
また、リーチ数のみに縛られるような、本質的ではないインフルエンサーマーケティングを取りやめ、変革を起こしていきたいという話もありました。それらの意見をまとめ、共創・広がり・作る・革命などのキーワードをベースに、ロゴ案を検討していきました。
ふくま:
ヒアリングをもとにキーワードを整理したのはたったの一度でした。その後、すぐにラフ案として4つのアイデアを送ってくださいました。それがもう、とても感動的なもので。
三島:
本当にびっくりしました……どれも良いんですもん。僕たちとの対話を通して的確に想いを汲んでくださって、ビジュアルで伝わるようにロゴに落とし込んでくださったことが、まずは心から嬉しかったです。
直感的にもわかりやすいロゴでしたが、みゆきちさんはロゴのそれぞれ細部に対しても、どういった創意工夫が施されているのかを丁寧に解説してくださっていました。そのおかげでより一層デザインを見つめる時間が楽しく、考えを深めるきっかけにもなったんです。
ふくま:
このロゴ案から一つに絞るだなんてという気持ちも正直ありました(笑)。ただ、みゆきちさんが形にしてくれたことで、漢字表記の「餅屋」のほうが「餅は餅屋」らしさを体現しているし、力強さを感じられることも再発見できました。
そこでみゆきちさんにご提案したのが「ローマ字表記の案のコンセプトをそのままに、漢字表記で組むことはできないか」というもの。作る・広がり・革命などのキーワードの反映具合が特に感じられた案をブラッシュアップできたらと思ってご相談しました。
みゆきち:
実はわたし自身も4つの案を制作していくうちに、漢字表記のほうが印象的で、お二人のイメージにも合うのではないかなと感じていたんです。ブラッシュアップのご提案をいただいたときに、その印象が間違っていなかったのだと知れて安心しました(笑)。
後日、いただいたフィードバックを反映してご提案したのがこのロゴ案ですね。現在のロゴとまったく同じものです。
三島:
もう、これだっていうロゴができあがっていました(笑)。微調整をして完成形に近づけるのが普通の流れなのかもしれませんが、理想通りのロゴだったので……。「これでいきましょう!」と前のめりにご連絡したことを覚えています。
ロゴの存在には、餅屋に関わるすべての人を束ねる力がある
ふくま:
今回のロゴ制作、振り返ってみて難しかったり特に考え抜いた部分ってどういったところだったんでしょうか?
みゆきち:
デザイン全般にいえることかもしれませんが、無数のアイデアの中からイメージに近いものを見つけて形にするその過程が常に大変です。いつもじっくり考えますし、良い意味でたくさん悩んでいると思います。
今回はお二人の言語化がスムーズだったので源泉になるようなキーワードがたくさん生まれていました。その素材が多ければ多いほど、デザインのアイデアも無尽蔵に生み出すことはできるので、アイデアを絞る過程でお二人の印象とずれていないかどうかと慎重に考えながらデザインしていきました。
結果として、お二人の想像との乖離がなかったのは本当にホッとました。すれ違うことのないよう、対話を重ねてコミュニケーションを取ったからこそ成し遂げられたことかなと思っています。
ふくま:
2年越しに改めて採用できなかったロゴを見る機会を作ってみましたが、今見てもどれもかわいいです。世に出せなかったことが悔やまれるくらいなので、いつか他のロゴ案を使って「餅屋Tシャツ」とかを作りたいくらい。
みゆきち:
楽しそうですね! 餅屋に携わっているクリエイターさんに「みなさんのイメージする餅屋ロゴを描いてください」ってお声がけして、集まったロゴ案を無数に展示するイベントとかも見てみたいな……。
ふくま・三島:
なにそれ。めっちゃ面白そう(笑)。
三島:
真面目な話、クリエイターとの共創はこれからもっと実行していきたいと思っていることの一つなんです。
餅屋をこれまで2年間続けてきましたが、プロジェクトとしての課題は正直まだまだたくさんあります。まず、立ち上げた当時に描いていた市場の変化はまだまだ作れていません。餅屋の取り組みや存在をさらに知ってもらう機会を作っていきたいですね。
また、餅屋を立ち上げたことで、みゆきちさんのようにクリエイターとして関わってくれる仲間は随分と増えていると思います。そういう仲間に対して、オフィスの開放だったり、勉強会の開催だったり、なにかお互いに作用できるような場も用意したいです。
餅屋の想いに共感してくれる仲間の輪をこれからも広げることで、良いシナジーを生み出し続けたい。ロゴはその役割を担う大切なものなので、これからもたくさん活躍してもらいたいです。
ふくま:
今回、改めてロゴを振り返るなかで、餅屋を始めたばかりの頃の想いが蘇ってくるようでとても不思議な心地でした。常に初心を忘れずとは思っていますが、日々生きていると時折目の前のことでいっぱいになってしまうこともあります。
自分たちが成し遂げたいのはどういうことなのか、作りたいのはどんな世界なのか、それらを忘れないためにも、原点を見つめるのってとても大切なのかもしれませんね。みゆきちさんと今話すことができてよかったです。ありがとうございました。
みゆきち:
こちらこそありがとうございます。餅屋の行く末を体現するようなロゴを創りたいと思って取り組ませてもらったので、お二人の気持ちに寄り添うクリエイティブをお届けできたことがしあわせです。これから先、餅屋に関わる企業やクリエイターさんにとって、このロゴが力を与えてくれることをずっと願っています。
Q . 餅屋ロゴ。特にお気に入りのポイントを一つ挙げるとしたらどこですか?
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