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ダンデリオン、フェンネル、リンデン

玄関の明かりを消して、奥の階段を上がって正面のドアにある上から2番目のノブに手をかける。3つあるドアノブは同時に首を傾げ、リビングへ通じる。
横に2.5m、縦に1.3mある胡桃の木で組み立てられた机の上に牛革の通勤鞄を置く。机と対面する全面窓からは既に、熟れ落ちた太陽の面影もなく、僅かに蒼い光が閉じたままの西陣織のカーテンを透かして机上のドライフラワーと画用木炭の欠片を照らしていた。

手元もよく見えないキッチンで適当にブレンドしたハーブティーを淹れ、陶磁器のティーポットだけを持って寝室へ入り中から鍵をかけた。アイアンフレームのセミダブルベッドに座り、サイドテーブルにティーポットを置く。陶器に薔薇の絵付が施された天板の上の、ティーポットと対の真っ白なソーサーとカップが押しのけられてソーサーの3分の1がサイドテーブルから退けられた。

猫を仕入れたが、耳だけ売れた。
このようなことはこの商売を長く続けていても、そうあることではない。しかしこの猫といえば、愚かそうに見えて、実は人間への敵意をその柔らかで上品なブルーの毛並みの中に、静かに秘めているに違いない。見ろ、ひげの先から爪先まで生命に満ち溢れて、肉食獣の鼓動が私に伝わってくるようだ。

猫は空のワインボトルの中に入っていた。首を前屈させて瓶の底に打ち付けており、その後ろ脚はボトルネックに差し掛かるところで小さく収まっている。そして尻尾は、注がれるワインのようにネックの中で波々とうごめいている。耳のない頭部には半分毛に埋もれた穴が空いており、その様子はボトルの外から見れば時々両生類かなにかの両眼のように空目させた。

家主はカップに口を3回つけたところで一日の疲れを覚え、布団に潜った。

暗闇の中でワインボトルの猫は尻尾以外を動かそうとしなかったが、その黄色の左眼と緑色の右眼の眼差しは、常に家主に注がれていた。
開け放した戸棚の上に置かれた猫は、夜中をそうして過ごした。

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