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BUTTER

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小説
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2023年2月の記事一覧

ひなぎくの小路

 巨大なキャリーケースと、革の学生鞄を、まだシーツも張っていないベッドの傍に放り出した。

 シャツ衿の一番上の貝釦だけ開けて、髪は高い位置でシニヨンヘアにし、ピンクグレージュのワンピースに水色の傘を持って部屋を出た。誰もいない石畳を歩き、重い木の扉を押して外へ出ると、ラムネ瓶のような淡水色の空に羽雲が散らばっていた。陽光の暖かさにまだ夜の影が残るような風が吹いていて、まゆこは首元に軽くそれが当た

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揺れるロウソク

揺れるロウソク

百円のライターで赤い蝋燭に点すと、半径2センチ高さ1.5cmの銀皿をつまむ指先には、瞬く間に910℃の焔に炙られた空気が伝わった。

あのひとに初めて会ったときの、ひと抱えのチューリップと薔薇…という空想を思い出していた。

ブランケットの中で身を縮めて、白くなりそうな息を指先に吹きかけながらまゆこは蝋燭の火を見つめていた。
床の木目は水面のように揺れ、まゆこは思考の昏がりに少しずつ沈んでいった。

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