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【企画参加】 『朧月』 〜 #シロクマ文芸部


《朧月キミをもみもみしたくなり》

彼からのLINEラブコールはいつも俳句調。こんなのが来るときはかなり悶々としていて、愛し方も激しい。

《レバニラで秘所ミナギたり町中華》

と応戦。

オトナの女をキメて、カウンターひとり焼餃子をアテに瓶ビールでも頼もうか、と入った店の大きく振る鍋とあの匂いに誘われ、ついレバニラ炒めを頼んでしまった。

《😍 迎えにいくよ》

あぁ、もうダメ。この一言に弱い。
にんまりしながら心拍数が上がり、血が逆流してくるのを感じる。レバニラのせいか。

お金を払って外へ出ると、待ち顔の彼が両手を広げ、右手を胸へ持っていく。ふと厚く隆起した手触りが蘇る。
アタシのロミオ。

「レバニラ食べちゃった。」
「ジュリエット、今夜は何をお望みで?」
「デザートにバナナ。」
「もちろんさ。」
「匂わない?」
「うん、獣のニオイ。でも気にしている方がこちらは嬲りやすい。」

そんなに期待させないで。

「朧月ね。」
「かなり欲情する。近視のせいかダブってふたつに見える。するとキミに武者ぶりつきたくなってガマンできない。」

俳句の解説? それとも本気?

「今日は何してたの?」
「コーヒー豆を煎ってたよ。」
「あ、それ。もみもみ代。」

彼は生豆を買って自ら煎るのが趣味。豆のためなら朝一でミニクーパーを飛ばす。
煎りたての豆は強い香りで部屋いっぱいを包む。
ガリガリ挽く音を耳にしながら大きなシーツの下で目覚める。

あはん、夕月かかりて匂いあわし。




〈600字〉






今回は、こちらの企画に参加しました。





そして、インスピレーションはこちらから。





いやん♥




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