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【歌謡ノベルズ】長い夜






恋に揺れる。こんなボクでも。
この白い、まるでうっすらと降り積もった滑らかな粉雪のような、それをじんわりと溶かしていく少し紅に染まった肌が横たわるような、広いベッドの上。
揺れて揺れて、溺れる程もう、恋に揺れる。
止まれないんだ。止まりたくないんだ。
今夜は寝かせないze。
もう、朝まで眠れそうにない。
こんなにも夜が長いなんて。
え、いつになったら寝れるのアタシ!?いや〜ん💜
なんてウレシイ悲鳴あげちゃったりしないだろうな。まさか、脳裏にそんなセリフよぎらせていないだろうな。

ボクが熱い魂を思い切り揺らせば、お前の柔らかい膨らみも揺れて揺れて、あぅ。そのうち心ひとつに。
まるで白くて甘いホイップクリームをたっぷり舌へ乗せてみるような、いやシュークリームを思い切り口いっぱいに頬張って思わず溢れ出たクリームをベろんと舐め回すような、それともマシュマロをむんずと手で掴んでその弾力をゆっくりと撫でまわすような感覚が、このボクのスカルプチャーを形成していくんだ。
お若くていらっしゃる、だなんて言わないでくれ。いつだってボクは永遠の27才。

...おぉっと。あぶねぇ。
うかうかしてると、今夜は寝かさないze、とか言ってるボクが先に寝てるだろうが。
ボクはいつでもお前だけを、お前の熱い耳たぶを、お前の厚い唇を、お前の淳い瞼を追いかけている。
そしてお前はいつでもボクだけに、お前の濡れたまつ毛を、お前の小さな舌を、お前のちょっとだけ当たる前の歯をくっつけに来て欲しいんだ。

しっかりつかまってろよ。弾けてついには天を仰ぎ見るまで、まだまだ時間はある。
おいで。ここへ。
猫のように、ボクのそばに。
余りにも細い、頼りなげな首筋を指でそうっと圧し撫でながら、背筋に少し強く当たりをつけてやると、思わずはっと息を呑み込み、右の肩を上げながら左の頬を枕に押しつけ、もう片方の肩を噛じる。その時に首に浮かぶ筋が艶かしくて、ボクの魂を余計に揺さぶる。
さぁ、燃えるような口づけをあげる。

こんなにも長い、この長い夜を、長い吐息と長い叫びで絡め合わせながら、奈落の底へ落ちていくスピードと、昇天していくスピードが相反して益々パワーアップするように、飛び越えてみたいんだ。
そしてその時は、お前だけにこの愛を誓うよ。
叫びたいんだ。眠れなくても。
こんなにもチカラがみなぎって、我慢できない。お前をお姫様抱っこでソファからベッドへ連れて行くなんて朝メシ前。イカツいアメ車のダッジ・デュランゴを持ち上げるのだってお茶の娘サイサイ。だったらトヨタのRAV4だってラブラブ溢れるマッスル車、で全く問題ナシのドッキング。
ちょっぴりあり余ったそのチカラ、見せつける訳でもなく拳を作って仁王立ち。ホントはそのチカラの塊にぶらんとぶら下がって欲しいんだけど、そんな時にはこの肉厚な胸板もやや緑がかって来て、人間離れした怪力がめらめら。蛍光黄緑好きなお前もきゃうん💜
そしたらお姫様抱っこでベッドへ投げ捨てられたって、逃げようとしたところを壁ドンッされたって、もっと〜💜なんてよじれておねだりされちゃったりしてボクもあはん💚
余りにも強くジリジリするほどのオレの腕と、白く長く細いお前のか弱い腕が、ガッツリ絡み合って、ホントは腕だけじゃなくて他のトコまで絡み合いたいっ!
そんな重ねた腕の、何とも違うぬくもりに、
少しだけだけど、戸惑うふ・た・り。

華の都じゃ今の流行りはオリジナルで作ったカクテルだとか。ついこないだもね、仕事帰りにちょっと一杯のつもりで呑んで。ありゃエラいモン呑んじゃった。
だけど、恋に揺れる長い夜の始まりだったから。
ジンにドライベルモットまではいい。カクテルの王者だっていうマティーニだってそうだから。
ジンにライムを入れるジンライムはね、昔の英国海軍さんたちが、長い航海でのビタミンC不足を補うために作られたって聞いたけど、カッピーさんはもちろん知ってるだろうな。だけどコレの場合、ライムとキュウリで緑にして、更にウマミとワサビを投入かっ。これってほぼほぼ早口言葉かっ。いったい何を補給すんの!? 
だけどね、ワサビがツーンと効くんだコレが! 
そんでもってウマミって何か知ってる!? 色からしたらマジ昆布ダシでも入ってんのかと思ったんだよね、ボク。イカつい顔が余計コワい形相になっていたかもしれない。ま、ウマいものなんだろー、ぐらいで心一つにしながらゲッチン、ごっくん😖。
なんじゃ、こりゃ!?。
お前だけを、ぎゅーっとさ、ぐいーっとさ、上からぐわーっとさ、下からきゅーっとさ、抱きしめていたいー、ってぐらいの衝撃!
ツーンと効きすぎだろっ。コレは。日本人的にはアウト! ですよな。しかもグラスの外っ側に、小さく長方形に切った海苔べろん。海苔ってこんなに磯の香りがするもんだなんて意識してなかったけどねー、今まで。

それになんだかちょっとゾクゾクするような強烈なビジュアル。脚の長い逆三角形のカクテルグラス🍸が、どうしたって落ちそうでずり落ちない、腰骨のすぐ下の脇で、解いてくれるのを物憂げに待ち構えている小さい水着みたいで。
更にグラスに入ったうっすら緑がかった液体を、飲み干す毎に、酔いが回っていく毎に、お気に入りの蛍光黄緑の水着が脱がされていくみたいな感覚で。
そんで最後に、空になった三角形のグラスに残る、海苔べろんっ。舐めあげたいよな、べろんっ💚白い砂浜での真夏の出来事みたいで。
ちょっぴり妄想超特急暴走中💚

だから、ボクのこの胸のトキメキとメキトキッス、わかってくれるだろ? ついでに言わせてもらえるならば、そんなトキメキのようなスパイスがウマミってやつでさ。詰まるところはコレ、味の素だ、って言うのが翌日になってから判明したりするわけだ。あれ!? 味の素、呑まされちゃった?
スパイスみたいなトキメキって、コ・レ!?

おまけに名前が『ピッコロさん』って。 身長250cm、体重200kgの人間離れした怪力めらめらで、ちょうどカラダも大きく変身中!? 居たでしょ、どっかにそういうヒーロー。ボクじゃないよ。
ボクはよく知らないんで、??でスルーしたけれど、情報筋から聞いたところじゃ知ってて呑んでるんだと思ってたって!? 言ってよー。
スパイスみたいなトキメキ、聞こえたなら、ほら。飛び込んでおいで。ガッツリ受け止めてあげるよ。この緑の巨体でさ。うぉーーー!

長ーーーーい夜を、余りにも軽い、薄い肩を引き寄せてお前と一緒に過ごせるのなら、あはん💚毎日寝不足でもいいのか!?
そんな一日はあっという間に飛び越えてみたい。寝歩きする前に。夢でもいいから。
お前ーーーーだけに、この緑色のハート💚を、この巨体で、この愛を誓ーーーーうーーーー。
ツー、ツー、ツー......

いかん。また寝歩きかっ。
怒りに身を任せ、暴れ回って、破壊しまくって、パワー全開になった一日も終わり、今は自由の身。そんなボクがふと空を仰いだら、そこには満天の星空。そして輝く三日月が。
こんなにもポロリポロリと星降る夜に、お前をちょこんとこの分厚い肩に乗せ、ユラリユラリと誘われて。
どんな姿だって、お前にはわかってもらえるんだろ?
そんなお前の小さな桃尻を肩に、てれてZinZin感じちゃいながら、こんなにも壊れそうなお前を、ぎゅーっとしてしまっても良いものなのか、こんなにも壊れそうなボクを、きゅーっとしてもらっても良いものなのか。
あはん💚いやん💜戸惑うふたり...
またもや妄想超特急暴走中💚






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映画『ハルク』2003年
アン・リー監督


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