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ウェディングジェラシー

遡る事半年前、小中学生の頃からの付き合いである地元のマイメン達と餃子の美味しい店で忘年会をキメ込んでいた。
その時に1人の旧友が、
『5月に結婚式やっから来てな!』
そこにいた皆に呼び掛けてきた。
「オッケーオッケー!もちのロンで行くわ〜」
二つ返事で全員即答した。


「しかし半年後なんて先の事すぎて忘れちゃうなぁ」
そんな会話をしたのをうっすら覚えている。

‥‥。

‥‥‥。

‥‥‥‥!!

「‥‥えっ?もう半年経ったの?ウソだろ‥」

クローゼットの奥から白いネクタイを探しながらそんな事をボヤきつつ結婚式に参列してきた。

こういうかなり先の予定日を迎えた際に時間の速度をリアルに疑ってしまうのは歳のせいでしょうか。


数年前に親族の結婚式に行って以来、友人の結婚式参列はかれこれ10年ぶりだった。
令和の結婚式らしく招待状・ご祝儀・引き出物はオンラインでやりとり。
手ぶらで会場へ向かい、手ぶらで帰路につける結婚式なんて令和最新版である。

とはいえ現代的なのは事務的な部分だけで、式や披露宴の内容はいたって昔と変わらない。その辺もある意味日本人らしくて面白いなぁなんて思ったり。


そんな結婚式だが、参列者であるゲストの感情を揺さぶってくる感動の仕掛けが散りばめられてあるものだ。

・娘である新婦を新郎に託すバージンロードでの親父さん

・2人の出会いまでの軌跡スライドショー

・新婦の友人スピーチにもらい泣き

・新婦の両親への手紙『お父さん・お母さん今まで育ててくれてありがとう』

・その日の結婚式の様子をスロー多めでまとめた動画

などなどベタではあるが、結婚式場という非日常な空間も手伝っていつも感動してしまう。
そんな仕掛けの中で俺が最も揺さぶられるポイントがある。それがスライドショーだ。
ふたりがこの世に誕生してから運命の出会いをするまでの歴史を写真で振り返る例のアレだ。


流れる写真の数々には俺の知らない新郎の姿が沢山ある。
そこには友人である新郎の人生の軌跡や交友関係が浮き彫りになって可視化されている。
そのスライドショーを眺めながらなんだか無性に寂しいというか嫉妬というか、なんとも言い表せない気持ちになってしまう。

いくら仲良しの友人とはいえ中学生の頃は毎日のように一緒に過ごしていたが、今となっては年に数回会うくらいに激減している。なので俺の知らない姿ばかりなのは当然といえば当然だ。

この気持ちに名を付けるとしたら、
【ウェディングジェラシー】とでも呼ぼうか。

今回も見事に俺の知らない新郎の姿が次々と映し出されて、
「へ、へぇ、、消防団の大会で優勝とかしてたんだ‥」
「あっ、ずいぶんと可愛いワンちゃんと暮らしてるのね‥」
20年来の友人だからこそ、何でも知っちゃってるような錯覚に陥ってるんだろう。

今まで何度も結婚式にお呼ばれしたが、毎度こんな気持ちになってしまう。
我ながらなんと身勝手な感情で、歪んだ独占欲の現れに軽いサイコパスみを感じざるを得ないのである。


なんて事を考えながらその結婚式から数日経ち、LINEで共有する為に写真を見返していた。
新郎新婦の幸せそうな数々の写真の中に、地元マイメン達で新郎新婦を囲んで写る集合写真に目が留まった。

そこにはまるで中学生に戻ったかのような抜群の笑顔で写るおじさん達がいた。
先のウェディングジェラシーがあるからこそ余計にこの写真が尊く感じて、なんだかとても良い写真に見えた。


そんな感情も全部ひっくるめて、
「やっぱり結婚式ってのは良いもんだねぇ‥」
なんて口ずさみながら、式に着ていったスーツとワイシャツをクリーニング屋へと出しに向かったのである。

ふたりにサッチャレー‼︎

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