見出し画像

【雑記】スクールフォトの行く末

先日、こどもの卒園式があった際、園の提携先のカメラマンが撮影に来ていた。

こどもが通っている保育園では今年度から提携業者が変わったそうで、写真のクオリティがかなり下がり、ママたちには不評とのことを小耳にはさんだ。

そんな事情もあってか、式後に催された謝恩会での撮影依頼が私に回ってきた。(もちろん、ボランティアである。)


おおよそ10年ほど前、私も学校写真、いわゆるスクールフォトに携わっていた時期がある。当時は保育園や小学校〜高校まで、割と幅広く撮影を行っていた。

業務委託の形態で、決められた時間と場所に出向き、撮影を行う。その後、2週間程度でセレクトした写真を納品するといった具合であった。

なお、保育園や幼稚園と小学校以上とでは、求められている写真が大きく異なる。


保育園・幼稚園の場合には提携する写真業者によって写真を「販売」することが目的である。よくいわれていたのが、どの園児も満遍なくうつっているように、であった。

特定の子どもだけがいっぱいうつっていたり、ある子どもはうつっていないなどあっては大問題である。とにかく枚数をたくさん撮り、撮り漏れがないようにしなければならない。

当時は業者側の立ち位置であったが、現在では顧客側(保護者側)でもあるため、写真を買うとなっても基本的には自分の子どもが写っている写真しか買わない。

そうした実情もあってか、写真の質よりも量が重視される傾向がどうしても強くなってしまう。

また、納品後には何枚売れたのかは教えてもらえず、改善点などの指摘を逐一フィードバックされてスキルを磨いていく環境にはない。次のイベントなどでも継続して撮影依頼があれば、前回の撮影はあれでよかったのかな、と思う程度である。

当日派遣されてくるカメラマンはまさに運である。初心者〜ベテランにいたるまで、圧倒的な経験値やスキルの優越があったとしても、保護者(園)側としては関係はない。

業者的な事情でいうと、主要イベントは人材確保が最優先事項となるからである。入園式、卒園式、運動会などといったイベントはだいたいどこの園でも日程が被るため、確実に人員を確保できなければ大問題となる。


一方で、小学校以上となると元請けが業者からその地域の写真館などに変わっていく。街にある写真館は型撮り、いわゆる壁面に飾ってあるようなポートレートを行っているだけではとてもではないが生活はできない。基本的に地域の学校と提携することで安定した収入を得ているのである。

そして重要なのが「アルバム制作」のための素材、である。ひとりずつのポートレート、集合写真、そして各イベントでの写真となる。卒業アルバムの制作が、写真館にとって大きな収入のウエイトを占めているからであろう。

私が主に行っていたのはイベント撮影で、入学式や運動会、遠足などでの撮影である。

小学校以上のイベントでは全員満遍なくといったことは要求されなかった。枚数もそこまで必要とされない。その代わりに状況がわかる、バリエーションがあることが求められていた。そう、すべては「アルバム制作」につながるのである。


ネットで以下の記事が掲載されていた。

現在も当時(10年程前)も実情は対して変わっていないようだ。

カメラマンは基本的に日当制(1万円程度〜)、機材は持ち込み、編集はカメラマンが行う。経験によって多少の報酬額に差は生じるものの、微々たるものである。

ある程度続けていると、割とさまざまな状況でも柔軟に卒なくこなせるようになっていく。そうなるとますます撮影や作業に対して対価が割に合わなくなっていく。

撮影だけではなく、撮影以上に編集作業の方が圧倒的に時間を要する。それにも関わらず、編集作業に対しての報酬は含まれていない。

さらには、保育園などの場合には、撮影した写真が何枚売れたかはわからない。つまり、何枚売れようがカメラマンにとっては関係ないのである。

デジタルカメラ、もっといえばスマホである程度誰でも撮れてしまうのだからこそ、保護者からすればカメラマンにはそれ以上のクオリティが求められてしかるべきである。にも関わらず、業者側の内情としてはそうした実情にはない。なにより人材確保が最優先なのである。

保育園側から指名されるカメラマンもいたそうではあるが、レアケースといってもいいであろう。


まもなく新たな年度を迎え、写真専門学校へ入学する人もいるであろう。学生時代に撮影スキルを磨くため+アルバイト代として捉えて撮影を委託するのであればありかもしれない。

たとえ学生であったとしても、現場にいけば業者から派遣された立派なカメラマンのひとりなのである。

保育者、保護者からすれば今後も需要はある業界であろう。しかし、末端=フリーのカメラマンにとっては今も昔も先の見えない状況にあるのは変わりない。そしておそらくこれからも劇的に改善されるとは想像し難い。

誰でもそれなりに写ってしまうカメラがあるからこそ、スキルの割に対価が伴わなくなっていき、結果的に人材不足を招いているにも関わらず、改善されない業界に待ち受ける未来が明るいはずはない。

よろしければサポートお願いします!今後の制作活動費として利用させていただきます。