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【研究ノート】次元 rev2

コンテクストを考察するため調べていたら、以下のような記事を見つけた。

Art History Definition: The Fourth Dimension /
アート史の定義:第4の次元
https://www.thoughtco.com/art-history-definition-the-fourth-dimension-183205(閲覧日:2020/08/26)

内容的に分かりやすそうだったので、ざーっと訳してみる(意訳・誤訳もあるかとは思うが)。

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我々は3次元世界に住んでおり、私たちの脳は3次元-高さ・幅・奥行き-をみるように訓練されている。これは、数千年以上も昔、紀元前300年頃にギリシャ・アレクサンドリアの哲学者であり、数学の学校を設立したユークリッドによって形式化された。彼は『ユークリッド原論』と呼ばれるテキストを執筆し、「幾何学の父」としても知られている。 

またその一方で、数百年前の物理学者と数学者たちは第4の次元を仮定した。数学的には、4番目の次元は時間を長さ、幅、深さと同時に存在する別の次元とし、それはまた、空間と時空の連続体とみなしている。一部の人々にとって、第4の次元はスピリチュアル的、もしくは形而上学的なものとして扱われている。

キュビスト、未来派、シュルレアリストといった20世紀初頭の多くの芸術家たちは、2次元的な制作のなかに第4の次元を表現しようと試み、現実的な3次元的表現を超越し、仮想な4次元的解釈に移行したことで、無限の可能性を秘めた世界を創造しようとしていた。

Theory of Relativity  / 相対性理論

時間を第4の次元として扱うアイデアは、一般的に1905年ドイツの物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein, 1879-1955)によって提唱された「特殊相対性理論」に起因している。しかしながら、時間が次元であるというアイデアは19世紀にさかのぼる。イギリス出身の作家ハーバート・ジョージ・ウェルズ(H.G. Wells , 1866-1946)によって書かれた『The Time Machine』(1895年)という小説では、ある科学者が未来を含む異なる時代へ旅行する機械を発明する、といった内容である。我々はその機械で時間を旅行することはできないかもしれないが、科学者たちはごく最近の研究で実際にタイムトラベルは理論上可能であることを発見している。

Henri Poincaré / アンリ・ポアンカレ

アンリ・ポアンカレ(Jules-Henri Poincaré, 1854-1912)はフランスの哲学者、物理学者、数学者であり、1902年に出版された書籍『科学と仮説』はアインシュタインとパブロ・ピカソ(Pablo Picasso, 1881-1973)の両名に影響を与えた。Phaidonの記事によると、

ピカソはアーティストが別空間の次元を考慮した、第4の次元を見る方法に関するポアンカレによる助言に対し特に衝撃を受けた。もしあなた自身を4次元空間に転送することができたとすれば、あるシーンにおけるすべての視点を見渡すことができるであろう。しかし、これらの視点をキャンバス上で表現するにはどうすれば・・・

第4の次元を見る方法に関して、ポアンカレによる助言におけるピカソの反応は主題の中に複数の視点を示したキュビズムに向けられた。ピカソはポアンカレやアインシュタインに逢ったことはなかったが、これらのアイデアは彼のアートや、その後のアートに受け継がれていった。

Cubism and Space / キュビズムと空間

ピカソは初期のキュビズム的絵画である≪アビニヨンの娘たち≫(1907年)を制作した際、アインシュタインの理論に気づいていなかったように、キュビストたちは必ずしもアインシュタインの理論を知ってはいなかった。しかしその一方で、彼らはタイムトラベルが人気のアイデアであることに気付いていた。彼らはまた非ユークリッド幾何学を理解しており、画家のアルベール・グレーズ(Albert Gleizes , 1881-1953)とジャン・メッツァンジェ(Jean Metzinger, 1883-1956)は彼らの著書『キュビズム』(1912年)でこのことについて議論している。彼らは著書のなかで超立法体を開発したドイツ出身の数学家ベルンハルト・リーマン(Georg Riemann, 1826-1866)に言及していた。

キュビズムの同時性とはアーティストたちが第4の次元の理解を示すひとつの方向性であった。つまり、キュビズムのアーティストは同じ主題のなかで異なる視点の見方を同時に見せていたことになる。この視点は通常、現実世界では同時にみることはできない。ピカソのプロトキュビスト的絵画である≪アビニヨンの娘たち≫は、こうした見方における絵画の一例である。たとえば、同じ顔の横顔と正面による両方の視点といったように、異なる視点からみた主題の断片を同時に描いている。同時性を示すキュビズム絵画の他の例として、ジャン・メッツァンジェの≪ティータイム(小さじ1杯の女性)≫(1911年)、≪Le Oiseau Bleu(青い鳥)≫(1912-1913年)、ロベール・ドローネー(Robert Delaunay, 1885-1941)によるカーテン後側のエッフェル塔の絵画などが挙げられる。

このような点から、第4の次元は、空間内でオブジェクトや人々と相互作用するときに、2種類の知覚が連携する方法に関係している。つまり、リアルタイムでものごとを知るために、我々は過去から現在へと記憶を移行させなければならない。たとえば座る場合のように、椅子に腰かけるとき我々は椅子そのものをみることはしない。臀部がシートに触れたとき、その椅子がまだそこにあると推測するように。キュビストたちは彼らの視点ではなく、複数の視点からそれらを知りえたことを主題として描いていた。

Futurism and Time / 未来派と時間

キュビズムの派生であった未来派はイタリアを起源とする運動であり、動き、スピード、そして現代生活の美しさに興味を持っていた。未来派たちは子供のフリップ・ブック(=パラパラ漫画)のように、一連のフレームを通して静止画で被写体の動きを示す「クロノクロノフォトグラフィ」(=連続写真)と呼ばれる新技術の影響を受けていた。クロノフォトグラフィは映画やアニメーションの前身であった。

未来派絵画の初期作品のひとつとして、ジャコモ・バッラ(Giacomo Balla, 1871-958)による≪犬のダイナミズム≫(ドッグオンリーシュとも呼ばれる)(1912年)があり、被写体のぼかしと繰り返しによって動きと速度の概念を伝えるものであった。マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp, 1887-1968)による≪階段を降りる裸体 No.2≫(1912年)は、複数の視点によるのキュビズム的技法と、一連のステップで単一の人物を繰り返す未来派の技法とを組み合わせて、人間の動きを示している。

Metaphysical and Spiritual / 形而上学とスピリチュアル

第4の次元における別の定義としては、知覚(意識)または感覚(感覚)の行為が挙げられる。アーティストや作家たちはしばしば第4の次元を心理的なものとしてとらえ、20世紀初頭の多くのアーティストたちは、形而上学的コンテンツを探求するために第4の次元に関するアイデアを用いていた。

第4の次元は、無限と単一性に関連付けられており、現実と非現実との逆転、時間と動き、非ユークリッド幾何学と空間、そして精神性、といったものが挙げられる。ワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky, 1866-1944)、カジミール・マレーヴィチ(Kazimir Malevich, 1879-1935)、ピエト・モンドリアン(Piet Mondrian, 1872-1944)のようなアーティストたちは独自の方法かつ抽象絵画の手法でこれらのアイデアを探求していた。

第4の次元はまた、スペインのアーティスト、サルバドール・ダリ(Salvador Dali, 1904-1989)などのシュルレアリストたちにも影響を与えた。ダリが描いた≪磔刑≫(1954年)では、4次元の立方体であるテッセラクト(=4次元立方体)とキリストの古典的な描写とを一体化させた。ダリは、我々の物理的な宇宙を超越した精神的世界を説明するために、第4の次元のアイデアを用いていた。

Conclusion / 結論

数学者や物理学者たちが第4の次元とその代替現実の可能性を探求したように、アーティストたちは2次元の表面上でこれらの問題を探求し表現することによって1つの視点と3次元の現実から離脱し、新しい形の抽象芸術を制作するに至った。物理学における新たな発見とコンピュータグラフィックスの発展によって、現代アーティストたちは次元の概念を模索し続けている。

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表現におけるコンテクストとしては、「キュビズム→未来派→シュルレアリズム」、科学的なコンテクストは、「ユークリッド幾何学→非ユークリッド幾何学→ミンコスフキー時空」といったところであろうか。

その延長線上に新たな物理学の発見やCGによる発展。物理であれば超ひも理論や素粒子物理学、表現においてであればCGとなるのではあろうが、単にCGによる技術的な表現に特化してもおもしろくはないし。。

となると、最新科学から得られた新たな視点を表現する、といったあたりに特化した方がいいような気もしてきた。

ともすれば、余剰次元、カラビ・ヤウ多様体(ミラー対称性、超ひも理論)などの視点もありなのかもしれない。


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