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夏になると思い出すデブ時代の黒歴史 5 選

筆者は人生の長い間デブだった。記憶の限りでは、成人するあたりから激デブ化した。きっかけが何だったかは覚えていないが、高校三年から大学入学にかけて人生が上手くいかなったこともあり、名状しがたい閉塞感に覆われていた時期だった。おそらく、そのストレスを発散するためだろう。食事量が異様に増え、20 代はほぼデブとして過ごした。

これ自体は結構な悔恨で、冗談抜きに青春をムダにしたような気もするが、もともとチー牛外見だったことを考えると、痩せていても大したメリットは得られなかっただろう。まあでも、これ読んでるあなた、若いうちはとりあえず痩せといたほうがいいですよ。太ってて得することはほぼ無いです……

どれほどデブっていたか? 筆者は人権が無いが、にもかかわらず余裕で 85kg くらいあった。BMI 30 あたりか……若かったとはいえ、よくデカい病気を患わずに済んだなと思う(脂肪肝はしょっちゅう指摘されたが)

こんだけデブっていると、脂肪量から生まれる黒い歴史も多数あるわけで。今回は生き恥を晒し、激デブ時代の黒歴史 5 選を厳選のうえ開陳する。

①足を組もうとして組めず、そのままの体制で足が攣(つ)る

デブは足を組めない――これ、本当です。確か学生時代だったと思うが、講義中になんとなく足を組もうとしたが、太ももの幅が股関節の可動域を遥かに超えており、組めない。そして組めないままの体制で、攣った。

このときの激痛は鮮明に覚えているが、なんか内腿と言うか、上に組んだ(組めてない)足がいきなり収縮し、シーンとした講堂内でひとり冷や汗を流してハァハァ悶絶するハメに。バランスをとるためにもう片足を上げようとしたが――なんと、こちらも組めなかった!(当然) しかも、立てない。

ハタから見れば「猛烈な便意に耐えている人」のような格好で、前かがみになり足をモジモジさせながら、痛みが去るまで耐えるしかなかったのだ……(数年後、痩せて足が普通に組めたときは結構感動した)

②ジーンズのデブ穴がトランクスを貫通

デブ穴をご存知か? ズボンの内腿、鼠径部近くが擦れて穴が開くという、デブの勲章である。筆者もご多分に漏れず、その脂肪で幾多の穴を開けてきたわけだが、体重最大時にはデブ穴が厚めのジーンズのみならずトランクスをも魔貫光殺砲の如く貫通していた! そこにはチェック柄のシャツ、ジーンズというチー牛ストロングスタイルのデブ、しかし内腿だけダメージジーンズという奇っ怪な生物が産まれていた。

「なんか妙に股間の通気性良くなったな」と感じていたが、穴が開いてたんじゃ当然だよね。多分人には見られていなかった……と思うが、帰宅後に気づいたときに覚えた薄らかな消えたさと言うか、穴があったら入りたい、いや開けてしまった悔恨は今もよく覚えている。

③多段腹に小銭が挟まる

飲食店のテーブルに座った状態で小銭を落とすも床に見当たらない。そういえばチャリーンという音もしなかった……いったい小銭はどこに?

――なんと、腹の肉と肉の間に挟まっていた! 狭間の世界に埋没した 10 円玉は、確かにオレを見ていた。オレが腹肉の隙間を覗くとき、腹肉に挟まった小銭も、オレを覗いていた。

筆者は全盛期では三段どころでない多段腹になっており、ラッコのごとく肉や皮の隙間に何かを挟めるほどに多重構造の脂肪を備えていたがゆえの芸当だろう。いや芸当ではない。ちなみに同様のエピソードのカード版、プリント版、本のしおり版、切手版などもある。あと、T シャツは常に肉と肉の間に挟まっていたので、座るたびに引っ張って出していた。

④iPod を破壊

若い人もう触れたことすら無いだろうが、iPhone 前夜の時代、ポータブル音楽再生機は iPod とウォークマンが争っていた。筆者は微妙に Apple 信者だったこともあり iPod nano を使っていた。

だがある日、iPod のクリックホイールが反応しなくなったのだ。クリックホイールというのは円状のタッチパッドの真ん中にボタンがあるような入力機器だが、妙に反応が悪い。一体なぜ?

原因は汗――脂肪によって蒸れに蒸れまくったポケットの中で、iPod は「半水没」していた! 冗談のような話だがこれはマジで、クリックホイールの隙間に水分が入り込み、感度が落ちていたのだ。修理に出す時も正直に「汗でぶっ壊れました」と陳情、保証期間内で身銭は切らずに済んだとはいえ、正直、尊厳は失った。

⑤自動改札機を破壊

意味がわからないと思うが、上記の iPod 破壊ケースと同じで、つまり汗が絡んでいる。端的に言うと、ポケットに入れていた切符がデブ汗でシナシナになり、自動改札機内部で詰まったあげく、駅員さんが数人集まる事態になってしまった。

このときに流した冷や汗、いや汗自体は常に流していたが、そこに重ねて流れる冷や汗、そして自動改札機ゲートに生物として拒絶されたかのような疎外は終生忘れることはあるまい――

自動改札機内部で詰まった切符を駅員さんに目視で確認してもらって降車、しかも改札機の断面図まで拝むことが出来る。並の鉄オタでも出来ない経験なんじゃないのか? と思うと貴重な体験だったなーと思うが、そのときはマジに◯にたくなるような恥辱を覚え、それを忘れるためにラーメンを食った(替え玉も食った)

終わりに

以上のエピソードは筆者が 20 代で味わった辱めの数々だが、その後痩せなければ、今頃さらに超絶デブ化し、黒歴史はより深く濃く黒くなっていたと思われる(機会があれば書くが、筆者は後年、糖質制限に徹して半年で約 20kg 減量した)。

これ読んであるあると思ってくださったデブの皆さん、あ、いや無いですか。とにかく、必ず痩せることは出来ます。最初は痩せた状態から太って今に至ったのだから、また痩せた状態に戻ることは出来るはずなんです。なので共に頑張りましょう。そしてこれを読んだみなさんも無二のデブエピソードを晒すのです。そのテキストはネットを巡り巡って、時に他のデブを励まし、時に支えとなるものなのです。なりませんか。ご精読ありがとうございました。


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