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日本で生きづらさを感じているあなたへ|表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬


資本主義、同調圧力、疲れたよね

資本主義、そしてこのシステムでうまく生きているオトナが苦手だ。
常に周りと競争し、なるべく多くの富を得ようとする。富を得るためだったら人の心を雑に扱うことも厭わない。そういうオトナがたくさんいて、そういうオトナこそ、この社会で”うまく”生きている。社会のヒエラルキーの上に居座っている。20年ほど生きてやっとこういった社会の不条理さに気付いたが、それを素直に受け入れることがどうしてもできなかった。不条理さに気付きながらも受け入れてうまく生きれば楽なのは分かっているし、そうできればどれだけ楽か…

だっておかしくないですか?義務教育ではむしろ相手の気持ちを考えて嫌なことはしない、とかちょっとズルをしたら怒られたり、とにかく素直ないい子になるように教育を受けてきたのに、蓋を開けてみれば社会はそんなに綺麗にできていない。そうやって素直に育ってきた人間はずる賢い上に立つ人間に利用される側になる。収入という数字によって格差をつけられて、マウントを取り合って…みたいな世の中が気持ち悪くてしょうがなかった。

そればかりではなく、”正しい”道を示されてその道を外したら冷笑されてバカにされて変わり者だと言われる。道を外して許されるのは成功者だけ。(正しいとか成功って誰にとって?)いい大学に行き新卒で大企業に就職して、仕事も安定したころに結婚して子どもを産んで定年まで働いて、そのころには孫ができ、年金をもらいながら余生を楽しんで…まるで”人生の正解”みたいなものが存在している。そしてそれが”正しい”とされている。同調圧力の暴力。生きづらい世の中で嫌になった。

でも、こういう意見を堂々と発言して、受けるであろう攻撃をかわせるほどメンタルは強くないから、黙って多数派のフリをするしかない。疲れた。こんな世の中イカれてる。

いいじゃん。それぞれが好きな生き方をして幸せだったら。周りがどう生きてようが関係ないじゃん。周りじゃなくて自分に目を向けなよ…

(趣旨が逸れるので詳しくは書かないが、私は自然が大好きで、環境保全の面からみても資本主義は悪く働いており、資本主義に疑問を持っている)

こういった思いを日々抱えて生きていた私は、小さな抵抗として新卒を捨てて日本を飛び出し海外で生活をするという選択をしている。今住んでいるこの国は資本主義ではあるものの、多様な人種が入り混じっているため日本ほど同調圧力はなく、政治的にもリベラル寄りで柔軟な印象がある。でも、この国にはこの国なりの課題があるため社会へのモヤモヤが解決したわけではないのがリアル。月並みだけど、日本の素晴らしさを再確認できた。

ちょうどそのとき、この本と出会って衝撃を受けた。まるでもうひとりの自分をみているようだった。若林さんも同じような思いを抱えていることを知りとてつもない安心感を抱いた。そして最強の仲間を見つけて嬉しくなった。また救われた。

(Light Houseでも救ってもらった話はこちら↓)

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬を読んで

東京に疲れた若林さんが資本主義ではなく、社会主義国であるキューバに旅に出る。

ぼくは20代の頃の悩みを宇宙や生命の根源に関わる悩みだと思っていた。それはどうやら違ったようだ。人間が作ったシステムの、一枠組みの中での悩みにすぎなかったのだ。
・・・
とにかく、このシステム以外の国をこの目で見てみないと気がすまない。このシステムを相対化するためのカードを一枚手に入れるのだ。 考えるのはその後だ。 2枚のカードを並べて、その間のカードを引いてやる。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 より

5日間のキューバでの旅の様子が事細かに書かれており、一緒に行ったかのような感覚になった。登場人物がいちいちおもしろい。笑

特に4日目のカリブ海のエピソードが好き。ガイドさんなしで完全に一人でビーチに行き、全力で楽しんでいる姿が微笑ましい。自分のことを誰も知らない環境で、一人で感情に身を任せて全力で楽しむことってなによりも幸せな気がする。

社会主義国のキューバを旅したことで、若林さんなりの一つの結論に辿り着いている。それはぜひ本で確かめて欲しい。私は実際にキューバに行って確かめることにする。

文庫版では、キューバだけでなく、モンゴルとアイスランドを旅した様子が加えられている。これもめちゃくちゃおもしろい。

そして、最後日本に帰国するとき、

今日からまた、世間を信じていないのが絶対にバレないように生きていかなくてはならない。
この国は世間を信仰している。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 より

この、世間を信仰している国で、世間を信じていないのをひたすら隠すしんどさ、これを共感できる存在をみつけられて本当によかった。

少数派のくせに繊細で、出る杭のくせに打たれ弱くて、口が悪いのにナイーブで、それなのに多数派に賛同できなかったら、こんなに生き辛い国はない。そういう人間を世間は本当に放っておかない。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 より

この旅を通して、若林さんは行き辛い道のりを歩く灯火になるものをみつけたという。この本の終盤で書いてあるのだが、私はこれが人間活動をする上での本質に近い気がした。

一見、重そうな内容に思えるがそんなことはなくて、海外紀行エッセイとして非常に読み易いしおもしろかった。
それに加えて、生きづらさを感じている人に優しく寄り添ってくれる。ひとりじゃないと安心できる。
世の中に対してモヤモヤした気持ちがある人にはぜひ読んで欲しい。
私は気持ちが軽くなって助けてもらった。
確実に何回も読み直す大切なものに出会えました😌


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