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観劇日記:夜は短し歩けよ乙女

先日またひとつ舞台を見てきましたので、簡単にではありますが観劇の記録を付けようと思います。今回の作品は新国立劇場・中劇場で行われていた「夜は短し歩けよ乙女」です。

こちらは森見登美彦氏の同名小説を原作として作られた舞台です。黒髪の乙女と彼女にひそかに想いを寄せる先輩が、京都を舞台に数々の珍事件を乗り越えていく作品ですが、個人的には初めにアニメ映画を、その後に原作小説を読み好きになった作品です。今回は劇場作品化されると聞き、このファンタジー感が満載の作品が舞台芸術としてどのように描かれるか、そして演者の方々がどのように個性豊かな登場人物を演じるか、楽しみに見に行きました。

原作と同様に舞台も春夏秋冬に合わせて4つの事件が描かれていました。小説の内容を作品時間に合わせて単に削ると小さな伏線などもこぼれがちですが、話の順番を骨格残しつつ少し組み替えたり、久保史緒里さん演じる黒髪の乙女の歌の調子に乗せて見せることで、違和感なく流れが入るように描かれていました。
またコミカルな小ネタも、令和の世に合わせたネタにアップデートされており、原作を見ていた人も新しい笑いを感じ取れました。そして、先輩を演じる中村壱太郎さんならではのネタも含まれており、女形の所作や大見得を切るような演じ方は歌舞伎役者だからこそだと感じました。また、竹中直人さんをはじめとする各役者たちのアドリブなど、キャラを乗せているからこそ出てくるテンポ感などはさすがの一言でした。

演出や演じ方ももちろんですが、飛び出す絵本のようなファンタジーの世界観を舞台芸術として作り出した技術さんの力も感じました。例えば偽電気ブランの製造場面を見せる時、はたまた樋口の妖術まがいな部分も小道具などを使って違和感のない形で作られていましたし、映像も組み合わせることで一層情景をイメージしやすい物にしていた点も、実写化が難しい作品の描き方として素晴らしかったと感じました。

ファンタジー作品ならではの難しさも多かったとは思いますが、演出家さん、演者さん、技術さんが一丸となって作り上げた世界観が素晴らしく、原作と変わらぬ面白おかしさを感じられる作品となっていました。間の休憩時間を含めておよそ3時間でしたが、作品の面白さに原作と変わらず引き込まれあっという間に感じられました。当初買う予定ではなかったパンフレットも、今、手元にあります。本作の東京公演は残り2回となってしまいましたが、来週末には大阪公演もクールジャパンパーク大阪WWホールで予定されています。詳しくは、オフィシャルホームページにて。

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