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Archival Archetyping Exhibition 2020

2020年12月24日から2021年1月10日までの期間、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]のプロジェクト「Archival Archetyping」は、展覧会「Archival Archetyping Exhibition 2020」を開催します。展覧会を開催するにあたり、プロジェクトの研究代表者でもある私がいま思っていることを、ここに記録しておきます。

多くの人々にとって、2020年における最大の出来事は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行だったことでしょう。最初にこの感染症が確認された約1年前、正直に申し上げて私は、ここまでの大きな影響を世界的に与えることになるとは全く想像できていませんでした。「コロナ禍」と呼ばれることもあるこの状況下で、多くの変化が起きました。

物理空間においては、多くの人々が外出時にマスクを着用し、接触を避けるようになり、同居する以外の人々との距離は大きく離れました。一方で情報空間においては、急速に浸透したオンライン化により、自宅に居ながらにして瞬時に遠く離れた人々と接続できるようになりました。

今まで当たり前だったことが当たり前でなくなったこの状況は、確かに、多くの人々にとっては禍でしかないでしょう。実際に、多くの方が亡くなり、対面を前提としていた業態が大きな制約を受け、多くの人々が経済的にも精神的にも影響を受けました。自分自身の近辺だけでも、実に様々なことが起きました。一方で、この状況を機会と捉えた人々もいました。例えば、情報社会化を推進したい人々にとっては、今までハードルとなっていた通勤や押印といった慣習の刷新を促進するには絶好の機会だったことでしょう。

禍とも機会とも捉えられるこの状況に対して、人文知と工学知の境界領域で活動する私たちはどのように応答できるのだろうか? ということを、日々の活動を何とか継続しつつ、この春からずっと考えていました。このプロジェクトにおいても、一度も同じ物理空間で会ったことのない人々とZoomで対話するところから始め、オンラインフォーラムを開催し、状況が落ち着いてきた秋になって初めて物理空間(学校の近くにある公園でした)で全員が会う、といった段階を積み重ねてきました。そうした中で開催を提案したのがこの展覧会でした。この展覧会は、2020年4月に入学した学生たちが、それぞれの作品と同時に展覧会全体を企画し、制作し、運営しています。この展覧会を企画するにあたり、プロジェクトメンバーに対して設定したミッションは次のようなものでした。

物理空間と情報空間が重層した「新しい」現実世界において、現在は「人工知能」と呼ばれている様々な機械を媒体として生活する人々の姿を展覧会として提示する。

この条件に応答するのは、決して容易なことではなかったと思います。それでも、かなりの回数に及んだ対話を経て、それぞれが、それぞれの視点と経験から、最大限にスキルを活かし(あるいは新たに獲得して)、全力で応答してくれました。結果として、この2020年という年の最後にふさわしい展覧会になったのではないかと思います。ぜひ、年末年始にゆっくりとご覧いただければと思います。

なお、プロジェクトメンバーが展覧会に向けて制作の動機や作品の構想について語った全12回のポッドキャストもありますので、併せてお楽しみいただけましたら幸いです。


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