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【トラペジウム感想#4】東ゆうのことが好きかもしれない【ネタバレあり】

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―――はじめに―――


筆者はトラペジウムを四回視聴し、原作小説を読んだだけのにわかです。
記憶違い等は流石に減ったと思いますが、まだあると思われます。
内容の正確さは保証しません。悪しからず。

見よう、トラペジウム。
読もう、トラペジウム。

公式サイト
映画『トラペジウム』公式サイト (trapezium-movie.com)

原作小説
「トラペジウム」高山一実 [文芸書] - KADOKAWA


参考
【トラペジウム感想】夢の擬人化・東ゆう【ネタバレあり】|とつげきチョッキ (note.com)
【トラペジウム感想#2】東ゆうを理解したい【ネタバレあり】|とつげきチョッキ (note.com)
【トラペジウム感想#3】不可解の偶像・東ゆう【ネタバレあり】|とつげきチョッキ (note.com)


―――始まります―――





トラペジウム四回目を観てきた。


今まで書いてきたこと、全部間違ってた。


俺、東ゆうのこと好きかもしれない。








東の嘘

 東は嘘を吐いている。真司にだけ明かした通り、東はアイドルになりたいという夢をひた隠しに生きている。東西南北のメンバーにさえ目的を隠し、友人として接近している。東の打算的な行動の数々は作中にある通り。すべては夢の実現のために正当化される。
 だが、東はまだ隠していることがある。唯一の協力者である真司にすら明かしていないことがある。
 東は、自分自身にすら嘘を吐いている。


東が東についた嘘

 作品の一番の山場は、やはりくるみが事務所で暴れた直後の東の独演会だろう。東の口から、アイドルへの思いの丈が語られる。目がキマっている。公式のホームページにも動画が上がっている。

映画『トラペジウム』本編シーン映像「こんな素敵な職業ないよ」編|大ヒット上映中 (youtube.com)

 この、東の「狂気」が形成されるに至った経緯を時系列順に整理したい。

・幼少期
 アイドルとの邂逅
「初めてアイドルを見た時に思ったの。人間って光るんだって。それからずっと、自分も光る方法を探していた」

・物語開始まで
 オーディションを受けて全部落ちる(OPにもそういう描写あり)

・作中の東
 絶対にアイドルになりたい。
「夢じゃない。夢で終わらせたくないから、現実にする」

「可愛い女の子を見るたびに思うんだ、アイドルになればいいのにって」「華鳥さんもくるみちゃんもすっごくかわいいけど、本人がアイドルになりたいと思わない限りはなることができないでしょ」
「私はその手助けがしたい」
「そのきっかけを作りたい」

・謝罪
「私、人のためって言いながら、自分のことしか考えてなかった」

 

 作中の東が語っている通り、東は可愛い女の子は全員アイドルになりたがっていると確信しているように見える。だからその手助けがしたい、私が彼女らを高みへ導いて見せる、という、使命感に似た何かに憑りつかれているようにも見える。
 もちろんそんなことはない。東と彼女らは別の人格で、別の欲望を持っている。東の考えをそのまま敷衍することなどできるはずがない。
 だが、東はそれを理解できない。実感としてそれを理解するための機能が死に絶えている、とすら言えるかもしれない。なぜか?
 ここに東の嘘があると思う。


偽りのホスピタリティ

 東には、可愛い女の子をアイドルにしたいという強い欲望がある。真司との作戦会議、東西南北のアイドルデビューに向けた特訓の日々での東のナレーション、ほか随所から読み取れる。

 一見すると優しさのように見えるが、この東の「可愛い女の子をアイドルにしたい」というホスピタリティは偽物である。
 東の計画を遂行する上で障壁になってくるのが、当の女の子自身がアイドルを好きか、アイドルになりたがっているか、という観点である。人の内面は、目に見えない。不安定で、扱いに困る、厄介なファクターだ。
 だったら、無視してしまえばいい。最初から内面を決め打ちしてしまえばいい。そのために、東が後付けで用意した理屈に過ぎないと思う。私利私欲のために他人を利用しているだけなのに、あくまで相手のためと対象をすり替えている点もずるい。
 だが、東のガンギマリ演説からも察せられる通り、いつの間にか東はこの理屈を心底信奉するようになってしまったように見える。

 最初東にあった欲望は「自分がアイドルになりたい」だった。だが、東はオーディションに受からなかった。だから欲望を変形する必要があった。主語を「自分」から「可愛い女の子」に変換する必要があった。才能のある可愛い女の子を巻き込んで、グループとして抱き合わせデビューを画策する必要があった。真司の疑問にある通り、夢を現実にすると息巻きながら、わざわざ途方もない遠回りをしているのは、肝心の近道が完全にふさがれていることを東自身がよく理解していたからに他ならない。

 真司の至極真っ当な疑問「でも、くるみちゃんってアイドルに興味あるのかな」を東は黙殺し、自分の思想を語っている。この時点で、東はこのホスピタリティが偽物であることに無自覚である。そしてこの無自覚のおかげで東西南北はアイドルデビューにこぎつけ、そして解散する。


 東のホスピタリティが偽りであることは、高台の練習場所で三人に謝罪するシーンで本人が認めている通りである。東は相手のことを考えているようでいながら、自分のことしか考えていなかった。


 東がこの偽りのホスピタリティによってやらかしたことを列挙してみる。

・くるみの写真を勝手にネットに拡散させる
 初手から高火力。これは本当に擁護できない。はじめてできた友達だと思って信用してた人間に、メディア関係者向けの撒き餌として利用されていたことを知ったら普通に人間不信になると思う。くるみは繊細で目立つのが苦手な子だから、特に。
 東の言い分は、原作小説だとより詳細に語られている。曰く、「くるみはロボコンで一時的に有名になったが、本来のポテンシャルはそんなもんじゃない。このままではすぐに忘れられてしまう。折角のチャンスを、この一回きりで終わらせたくない」だのなんだの。要は、くるみの可愛さは一時ネットの話題になる程度のものではなく、もっと上を目指せるはずだ、私はその手助けをしたいんだ、というわけである。だが、その背後にあるのは、映画の東が語る通り、くるみの知名度に便乗したいという東の私欲に過ぎない。自覚があるならまだしも、この欲望の後ろ暗さを見ないようにしている(あるいは重視しないようにしている)点は極めて不誠実。せめて悩め。苦しみながら他者を利用しろ。己が欲望に焼かれ続けろ。
 この件については真司も共犯。ドクズ。「いいねが二千件もついてたね」じゃないんだよ。何が正当化されるんだよ。盗撮だぞ。
 このエピソードは特に回収されていない。くるみも特に傷ついた様子はなかったから恐らく何も気付いていないんじゃないか。そうあってほしい。

・美嘉に彼氏がいたことを詰る
 東の言動の根底には「美嘉はアイドルをやりたがっている」という確信があると思う。アイドル活動に本気で取り組む気があるなら、彼氏との関係は清算してから来い。東が東西南北のために必死に努力してきたのに、美嘉はそれを台無しにしたんだぞ、半端な覚悟でやってんじゃねえよ、という強気の姿勢が見て取れる。

・仲裁に入った蘭子を歌の練習しろと詰る
 上に同じ。アイドルとしての職責を全うしない蘭子の言動は、東には許しがたいだろう。

・他小粒のエピソードが多数…流石に略。


 端的にまとめると、東の暴走の根底には、「欲望の偽装」があった、ということである。 


偽りなき欲望

 最終的に、東は自分の欲望の負の側面を自覚する。

「私ってさ、嫌な奴、だよね」

映画『トラペジウム』本編シーン映像「私ってさ、嫌な奴だよね」編|大ヒット上映中 (youtube.com)

 これ以降の東のことは好き。「優しいふりして平気で人を傷つけ」、「人のためとか言いながら自分のことしか考えていない」、「こんな奴アイドルになる資格がない」。そこまで自覚しながら、「性格も往生際も悪いから」、「諦めたくても、夢を諦めきれない」。 

 いいじゃない。全部分かったうえで、清濁併せ呑んで、それでも欲望に縋る。いいじゃない。東は苦しんでいる。己が欲望に焼かれている。いいじゃない。素敵じゃない。好き。

 私に散々駄文を吐かせ続けたのは結局ここだったと思う。東の欲望は、ある意味で透き通っていて、ある意味で捻じ曲げられていた。東は欲望を偽っていた。周囲に対してだけではなく、自分自身に対してさえも。

 この二重性に私はひどく混乱した。他者を手段として蔑ろにしておきながら、同時に涙を流すことができる東の感性がどうしても理解できなかった。すべてのシーンに違和感があった。二週間にわたり映画館に通いつめ、活字を吐き出し続けた。こうして端的な言語化に至るために、ここまで無駄な文章を吐き出し続けてしまった。

 最終的に、東は欲望に焼かれる道を選ぶ。全てを見据えたうえで、アイドルになる。


 結局、それだけの話だったのだ。



 どんなに独善的でも、理解しがたくても、欲望に嘘偽りのない人は、見ていて清々しい。そういう人が夢を叶える姿は、美しい。生きる勇気が湧いてくる。


 俺はそういう人が好きだ。



発作の終わり

近所の映画館が、そろそろトラペジウムの上映を終了する。

上映してる間は観に行き続けると思う。

結論が変わらなければ、もう文章を書くこともないのかもしれない。

これまでは、書こうとして書いたというよりは、もう発作に近かった。手が止まらなかった。苦しかった。

今や、私の中で答えが出てしまった。これ以上答案に書くことはあるのか?

こればかりは、私の頭に聞いてみないとわからない。


明日の上映の予約をした。どうなるか楽しみだ。


多分まだ、東のことは好きだ。

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