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今川焼きという、宇宙。

今日は夜のおやつに今川焼きを食べると心に決めていた。


3、4日前、母が買ってきてくれていたセブンの冷凍の今川焼き。レジ袋の中のそれをマークしたときから、毎晩毎晩冷凍庫に眠る彼女のことを虎視眈々と狙っていた。

さっそくパンパンに空気が充填された袋をハサミで開け、ひとつ皿に出す。電子レンジの場合は500Wで50秒らしい。50秒。早くないか。ラジオ体操ですら3分かかるっていうのに。


疑いとともにチーンという音を受けて扉…ドアーを開けると、想像通りまだ冷たい彼女が佇んでいた。やっぱりな。あんたはそこでラジオ体操でもしてな、と結局3分かけた。


さて、そろそろ深呼吸の辺りかなとレンジ庫内…お部屋の中を覗くと、なんかいい感じのオーラを醸し出す黄金色の小麦粉の塊が鎮座しているではないか。よし、仕上がったみたいだな。こっちへ来い。来るんだ。


しかしよく見るとこやつ、かなりかわいいフォルムをしている。この良いキツネ色といいきめ細やかな肌といい、なかなか憎めない。私は匂いをかいだり面をひっくり返したりつんつんしたりして楽しんだ後、真ん中から割ってみた。ちょっと小麦粉が強いのか、思ったよりほわほわ感は薄く、むちむちした感触でちぎれた。そして今まで全く気配のなかった小倉あんが顔を出す。


私は普段、あんこよりもカスタードクリームの入ったやつを好んで食べる。いつも生地を割ると甘い匂いとともに現れる、優しいたまご色のカスタードクリーム。しかし今日生地から生まれたのは、嗅ぎなれない小豆の香りとダークマターのようなこしあんである。その意外性もまた私を楽しませてくれた。このどこまで広がっているかわからない暗黒のこしあん、そしてその全てを包み込むむちむちな生地。これはまさに宇宙である。皿の上に乗った今川焼きは、宇宙なのである。割ればたちまちビッグバン、食べれば急速に(胃に)収束されていく。もしかしたら今川焼きは、この大宇宙の一生を詰め込んだ手のひらサイズの縮図なのかもしれない。宇宙とはなんとも儚いものだ。


ところでこの宇宙であるが、私は"大判焼き"という名前で親しんできた。どうやら全国的にも"大判焼き"が広く浸透しているらしく、gooランキングによると"今川焼き"はほとんど使われていないらしい。セブンがなぜ"今川焼き"として売り出そうと思ったのか謎である。


セブンの今川焼き、まあまあ美味しかった。5個入りなのでまだあと4回楽しみが残っている。ちょうど気分にぴったりなおやつでとても満足した。今日はラジオ体操でもして寝よう。

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