インジゴの空
筆の先葉書に留めたい重ね塗り
深く遠く宙透かすインジゴ
ふでのさき はがきにとめたいかさねぬり
ふかくとおく そらすかす いんじご
いつだったか、どこでだったか
黒に近いほど濃い青の、空があった。
この向こうにはあの宇宙があるのだから、と、
妙に納得したことを覚えている。
小学校でのこと、「空のある風景を描く」の授業で
先生が私たちに窓の外を指しながら、
「空の色は上の方が濃くて、下にいくほど薄くなるでしょう。だから、ほら」
そう言って私たちの注意を引き、青色の絵の具を水で溶き、絵の具セットの太いほうの筆にたっぷりとつけて、画板に載せた画用紙に、さぁっと、空を描いてみせた。
画用紙の上端が青く染まり
その下を濡れた道が走り
返す筆で青は広がり
傾けた匙のように 水入れから取り出された筆が
青みがかった雫を落としながらパレットに降り
青い池はそのたびに 色を失い
迷いのない太い筆が 紙をすべて撫できってしまうと
そこに、空があった。
遅い暑中見舞いを書こうと葉書を手にしたとき、あの、濃い青の空を思い出した。
あの色なら、涼しさを届けられるだろうか。
宇宙のしんとした静けさを運ぶだろうか。
顔彩を水で溶く。初めの一枚はその色が出なかった。
濃く描いたつもりが、乾くと薄っぺらくなる。
新しい葉書を出し、たっぷりと色を載せてみる。
渇きかけた筆で絵の具をとり、溶かずにそのまま、塗りつけてみる。
そう、この色だ。
宙を少しだけ薄めた青。
乾いて少しよれた葉書の上に、インジゴの空があった。
potesakulaさんの企画に初参加です!
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