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青い青

日が打ちて焼き入れし葉の際光る切り裂くは空その青き青

ひがうちてやきいれしはのきわひかる
きりさくはそらそのあおきあお


きょうの日差しは強い。強い、という形容詞が日差しに使われるのはこのためか、と納得するほどに「強い」。
からりと乾いた大気は爽やかではあっても人を守る気はさらさら無いようで、熱と眩しさと肌を打つアレをひっくるめた光がまっすぐに落ちてくる。降り注ぐ、と表現するほど細かくはないような、塊で落ちてくるような、骨太の存在感と圧迫感。だから「強い」。

強い光に照らされた風景はコントラストが上がる。色鮮やかに、くっきりと。何もかもがスポットライトを浴びたように堂々として見える。この強さに恐れをなす私は観客側かなぁ。SPF50も早々に使い切りそうなじりじりとした感触にあわてて木陰に入ると、幹の背にある木立から、さぁっと冷たい風が吹き抜けた。火照った肌が一時に冷める。ほうっと息をついて、あらためて眩しい舞台に目をやった。

短い夏をめいっぱいに生きるぞ、とばかりに葉を茂らせる草木、咲き誇る花々。朝には騒々しい鳥たちは、今はほとんど見られない。と、頭の上から甲高い声が降ってきた。こんな時間に元気だねぇ。帽子を押さえて見上げると、また一声。警戒の地鳴きだろうか、私はそんなに高くは行けないのに。頭をめぐらすと、見えない鳥の代わりに、木漏れ日に揺れる葉の輝きが目を奪った。その向こうには青い空。青いな。

鮮やかな色と光が、気遅れ気味だった心に火花をまき散らす。
私も、舞台に出てみるか。

私はめいっぱいに背筋を伸ばし、指の先までぴんと張り、熱いスポットライトの中に踏み出した。


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