$KILT の提携例から学ぶWeb3×DIDのユースケース
Web3におけるDID(Decentralized Identity)分野って実際どのようなケースで利用されるのか、KILTの提携例から具体的なイメージを持っていけたらと思います。
Dappsにおけるユーザー認証だけでなく、DAOやDeFiでの活用や医療 / エネルギー / ハードウェア領域までDIDソリューションがカバーしていくことが想定されます。KILTの具体的な事例を参考にイメージを膨らませてもらえたらなと思います。
KILTについて知らない方向けにエントリー記事を書いていますので、もし知らない方は以下の記事から読んでいただけると、本記事がスムーズに読めると思います。
はじめに:SocialKYCについて
次の章から具体的なKILTの連携先とのユースケースについてご紹介しますが、その前にKILT自身が提供していくSocialKYCについて少し触れておきます。こちらの機能が基本となり、様々な応用利用されていくため、まずその基礎について事前にインプットしておきましょう。
SocialKYCとは分散型本人確認機能のことです。
SocialKYCは、個人認証情報をユーザー自ら管理、保存、提示できるようにし、オンラインサービスごとに自分の個人情報のどの要素にアクセスするか選べるものです。
SocialKYCはTwitterやGitHub、TikTokなどのソーシャルアカウントや電子メールアドレス、電話番号を管理できる権限をユーザーがもっていることを照明することで、ユーザー自身のインターネット上の身元を担保します。
ユーザーが身分証明を行いたいサービスが直接KYCを行うのではなく、KILT Protocolを介してクレデンシャル発行を行うことで、余計な個人情報の提示をすることなく身元照明を行うことができます。またKILTを活用することで、後からクレデンシャルの取り消しを行うことができるのも特徴です。
(クレデンシャル付与の詳しい仕組みは冒頭のリンクからKILTの紹介noteを見て頂けますと幸いです)
これらのSocialKYCの仕組みを基礎としながらも、様々なパートナーと組むことによって多彩なクレデンシャルを付与しています。
SocialKYCのデモについては以下の動画の10分30秒~見ることができます。
SpiderDAO:ハードウェアとの連携
SpiderDAOはハードウェアベースでDAOのガバナンスモデルを築くツールです。
彼らが解決しようとしている課題は、「トークンの大部分を所有しているクジラ的な一部のユーザーがDAOの多数決権利を独占すること」です。
これらを解決するために、ハードウェア機器(ルーター)をユーザーのDAOの投票権と紐付けることで、少数のトークンホルダーによる寡占を避ける仕組みを提供しています。
具体的には1ルーター 1投票のアプローチをとっています。
トークンの保有率ではなく、ハードウェア(ルーター)単位で分散されたガバナンスメカニズムをとることで、より本質的な民主的ガバナンスを実装しようと試みています。
SpiderDAOとKILTの連携によって、SpiderDAOが提供しているVPNルーターと連携したクレデンシャル発行ができるようになります。
ルーターのMACアドレスとシリアルナンバーをKILT Protocolが提供するDIDを組み合わせることにより、ハードウェアと結合された投票券をユーザーに提供します。
DIDと言うとユーザー単位のアイデンティティをイメージしがちですが、KILTはこのような形でハードウェアに対してのクレデンシャル付与も可能になり、多様なユースケースで発展していくことが想定されます。
Attarius Network:ブロックチェーンゲームとの連携
今週、Attarius NetworkとKILTの提携が発表されました。
Attarius Networkとは、ゲーム開発者向けのブロックチェーンソリューションで、ゲーム開発者がゲーム内のアイテムやお金などのゲームアセットをトークン化するためのツールキットを提供しています。
これらのツールキットの中には、NFTだけでなく、ネイティブブロックチェーンやDeFiエコシステム、決済システムが含まれており、Play to Earn系クリプトゲームの開発支援に特化されています。
KILT等の他のPolkadotエコシステムのチェーンと同様に、Polkadotと互換性があるブロックチェーン開発フレームワークであるSubstrateを使って開発されています。
Attarius NetworkとKILT Protocolが接続することで、ユーザーはAttarius Networkを用いて開発されたゲームで購入した商品、獲得した実績、キャラクターのレベルをKILTのクレデンシャルデータとして追加できるようになります。
KILTにこれらのゲーム内のアセット情報をクレデンシャルとして保存されることによって、レベルやスキル面でマッチしたプレイヤー同士でのギルドやDAOをスムーズに作成できるようになります。
またFPSゲームなどのオンラインゲームを中心にBOTプレイヤーによる被害が顕在化していますが、KILTのクレデンシャルの活用が進むことでBOTプレイヤー等の不正プレイヤーの排除にも役立っていくかと思います。
DeBio Network:遺伝子データとの連携
DeBio Networkは医療及び遺伝子情報を匿名で管理する分散型プラットフォームです。匿名で受診可能な遺伝子検査キットなどを提供しています。ユーザーは遺伝子採取キットで遺伝子を採取したのち、ユーザー自身の個人情報を伏せてDeBioに遺伝子を送付し、公開鍵で暗号化された報告書やゲノムデータを受け取ることで匿名性を担保しています。
KILTとの連携によって、ユーザーは匿名性を担保しながらも研究機関にゲノムデータを共有し、対価を受け取ることができます。
遺伝子情報は非常にセンシティブな情報であるため、個人情報と一緒に中央集権管理されているのは非常に大きなリスクだと考えられます。
研究機関側も遺伝子情報と提供主の情報をセットで保持することで、それ相応のセキュリティ体制を構築する必要があります。
DeBio NetworkとKILT Protocolとの提携で、ユーザーの匿名性を担保しながらも医療や遺伝子研究を促進させるためのデータ連携を加速させることができます。
Energy Web:エネルギー分野との連携
Energy Webはカーボンニュートラル(脱炭素化)を目指したエネルギー分野のブロックチェーンを活用した分散型ソリューションです。顧客が所有するエネルギー関連のあらゆるデバイスが、様々なエネルギーマーケットに参加できるようにするためのオープンソースのブロックチェーンプラットフォームを提供しています。
ドイツ連邦のエネルギー庁であるDeutsche Energie-Agentur(DENA)が、ドイツ全土の分散型のエネルギー管理の仕組みにEnergy WebとKILTを採用しました。
このプロジェクトによって、ドイツ国内の太陽光発電システム、バッテリー、電気自動車の充電ステーションなどのエネルギーアセットがブロックチェーンを活用した分散型台帳に自動的に登録され、ドイツの送電網による仮想発電所や周波数調整などさまざまなサービスに利用されるようになります。
本プロジェクトは20以上の業界関係者と共同で設計されており、エネルギー分野の次世代型デジタルプラットフォームとして期待されています。
SpiderDAOのハードウェアとの連携と似た仕組みで、KILTを活用することで個別デバイスに対してクレデンシャルを付与します。
以下YoutubeでKILTとEnergy Webを活用してマシンIDがDENA(ドイツエネルギー庁)のブロックチェーン台帳に統合される様子が見れます。
Fractal&Polkadex:DeFiとのKYC連携
14万人のデジタルID基盤を持つFractalとPolkadotで使われているのと同じフレームワーク(Substrate)を活用したDeFiであるPolkadexとKILTProtocolが連携することで、分散型KYCソリューションを提供できるようになります。
具体的にはFractalで過去にKYCを行ったユーザーに対して、KILT Protocolを活用しKYCに関わるクレデンシャル情報を発行します。
Polkadex側は、新規ユーザーが訪れた場合、クレデンシャルの提示を求める形でKYC認証を行います。
これによりPolkadexはユーザーの個人情報にアクセスしたり、保存することなくKYCプロセスを完遂できるようになります。
当局側が各暗号資産ウォレットに対してKYCの紐付けを求める事例が増えてきそうな中、DeFiの利用についてもKYCが必要になる可能性もでてくるかと思われます。
そのような中、KILT Protocolを活用することができればスムーズにKYC連携できることでしょう。
Polimec(Moonbeam):トークン発行における連携
PolimecとはPolkadotにおけるトークン発行&転送のフレームワークのことです。Polimecが実装されることでPolkadot内でEthereumにおけるERC-20のようなトークン管理が可能になります。現状EthereumのERC-20規格が抱えるようなトークン管理に関わる課題を解決するソリューションとして期待されているプロジェクトです。
※Polimec = Polkadot Liquidity Mechanism(ポルカドット流動性メカニズム)の略称です
■ Polimec実装によってPolkadotできるようになること
トークンの価格を設定し、プレトークンとして投資家に販売してDOTまたはKSMを得ることができる
主要通貨への変換レートを設定できる
発行者の要望に合わせたKYC/AMLプロセスを実施し、トークン購入前に本人確認を行うことができる
プレコインを他のPolimecのアドレスに送金することができる。
この3番のKYC/AMLプロセスにKILTが活用されます。具体的には以下のような仕組みです。
このPolimecのスマートコントラクトの部分はPolkadotの第一パラチェーンスロットを獲得したMoonbeamによって実装される予定です。スマートコントラクトを活用することで、より複雑な要件のICO設計が可能となります。
PolimecはERC-20トークンと比較して以下のような利点があります。
ガス代不要でトークン発行が可能
スキャムプロジェクトを排除するシステムが存在する(トークン発行者のコミュニティによる承認が必要)
メインネットへの移行をシームレスに行える(手動操作による失敗リスクがない)
プレトークンを発行することでプロジェクト稼働前に流動性を担保できる
独自トークンを発行しない形のプロジェクトが投資としてDOTを受け取ることができる(独自トークン発行無しに投資を受けられる)
これらERC-20にはない特徴があり、Polkadotのエコシステム成長を加速させる成長ドライバーになっていきそうです。
本noteはあくまでKILTに焦点を当てているためPolimecについての詳細が気になる方は是非Polimecのホワイトペーパーを読んでみてください。
このようなトークン発行のKYC/AMLプロセスはKILTがわかりやすく価値提供できるフィールドですね。
おわりに
KILTのユースケースを見ていくことでWEB3.0におけるDIDソリューションの影響範囲の広さが実感できるかと思います。
ユーザーの個人認証だけではなく、マシンやデバイスなどの認証利用に拡大されることでIoT社会において非常にDIDが重要なポジションを築いていくことが想定されます。
これをきっかけにDIDやKILTについて興味を持ってもらえたら幸いです。ではまた!
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