彼氏がいない30歳女の潤いチャージ法

トキメキというものに触れなくなって、もうしばらく経っている気がする。
私の日常に、キュンとすることがなくなってきている。転がってもいないし、転がる気配もなさそうだ。それなりにデートにはしているが、やっぱり相変わらず彼氏はできないし、もはやそれも不本意ではあるが、アイデンティティになってしまいつつある。いやぁ、非常に不本意だ。そんなアイデンティティは特に欲しがった記憶はない。断じてない！

筋トレやランニングと一緒で、トキメキも触れ続けていなければ枯れてしまうような気がする。触れすぎると慣れてしまって新鮮味がなくなるという意見もわかるが、それは極めて贅沢な悩みであって、触れていない人間はなんだか潤いがなくなっていってどんどん枯渇していって、なんだか、こう、カピカピになってしまうような気がするのだ。何がって、心が。心が潤うと、肌とか髪とか、あと表情もなんか潤う気がする。いや、絶対そうだ。

異性に対してだけじゃなくとも、やっぱりいくつになっても自分の心に潤いを与えてくれるモノや存在というのは、とても大事なんじゃないかと思う。

小学生の頃から、アイドルは好きだった。モーニング娘。に始まり、ジャニーズグループを浅く好み、高校生終盤からはブームに乗っかりK-POPにハマった。人生で初めて入会したアイドルのファンクラブは、大学生の時に入会した東方神起だった。その歴はかれこれ10年ほどになる。

そんな私が、ついにジャニーズにどっぷりとハマってしまいそうだ。それは昨年デビューした、なにわ男子だ。

なにわ男子は関西ジャニーズから生まれた7人組グループである。メンバーの何人かは関西のテレビ番組に出演していたり、朝ドラなどに出演していたので知っていたが、名前と顔が一致することはなく「ああ、関西ジャニーズの子だ」くらいだった。中学生の時にジャニーズをうっすら人並みに好きだったことはあるが、どっぷりハマることはなかった。

ある日、テレビでなにわ男子が出ていた。何にそんなに惹かれたのか、正直はっきりとは覚えていない。ジャニーズ！　かっこいい！！！　という感じではなく、メンバー全員年下なので、もはや「可愛いから弟にしたい」という印象だった。笑った顔が可愛い。全員、なんかキラキラしている。なんか全員うるさいけど、それさえも可愛い。なんかわちゃわちゃしていて、落ち着きがない。街中で見かけたら「うるせーな、こいつら」と少し睨んでしまうくらいのうるささでもある。でもそれも可愛い。

いやはや、これはもしかして……、あれじゃないか？　恋は盲目というやつではないか？

さすがに30歳だ。アイドル相手にガチ恋はしない。そこまでお頭は弱くない（はずだ）。同じメンバー好きは無理！　拒否！　なんてことはもちろん思わないし、なんならこの可愛いグループをみんなに知ってもらいたい。可愛いでしょ？　ねぇ、可愛いよね？　とみんなに共有したい。なんなら多少強引に見せて同調を強要したい。無理やり沼に引きずり込みたい。

SNSでファン同士の交流を図っている人たちもいるが、私はそういうのは苦手なので、高校時代から仲の良い友人と2人で、ひっそり盛り上がる。
インスタライブ見た？　Youtubeの最新動画アップされてたよ！　あのテレビ番組出演するって！　などなど。
可愛いな～～、みんな可愛いな～～～！　とつぶやきながら、30歳の大人たちはニヤニヤとするのだった。ああ、仕事で疲れて荒んだ心が癒される。満たされる。潤う。
彼らが笑う度に、私の心は胸キュンというトキメキでいっぱいになる。彼らが笑う度に、私の心の水分量はいっぱいになり、健康体になるのである。

新曲のPVが公開されようもんなら、細かな分析が始まる。何分何秒の手の角度が完璧だった、ここの振り向き顔が最高だった、などなど。会社の昼休みも、午前中の疲れや荒みと排除するために、ひたすらなにわ男子の動画を視聴しまくる。すっかり満たされて癒されて午後の業務に励み、また疲れて荒んだら帰りの電車で以下同文。間に合わない場合はお手洗いへ避難して、5分だけごめんなさいして満たされる。そこらのコンビニで売っているエナジードリンクで速攻チャージするよりコスパも良ければ身体にも精神的にも良い。

ああ、なにわ男子に出会えてよかった！

こうして私は常日頃足りていないトキメキやら潤いやら、そういった類のものはすべて、なにわ男子で満たしている。私の肌の調子が最近良いのも、きっと基礎化粧品を医薬部外品に変えただけが理由ではないはずだ。なにわ男子も、私の肌が好調な理由の一因になっているはずだ。いや、そうに違いない！

アイドルには触れられない。それなりの大人になったので、東方神起にハマっていた時のように同じCDを何枚も買ったり、ライブグッズを大量に買ったりはしない。有り難いことに、YoutubeやSNSなど手軽に楽しめるコンテンツもある。私はまだこれからしばらく、彼らからトキメキを与え続けてもらう予定なのだ。毎日彼らを見て、心に潤いをチャージするのだ。
そして、彼らで潤いをチャージしながら、現実世界でトキメキを与えてくれる人を探さねばならない。ああ、忙しい。忙しいけれど、その人を見つけるまで、よろしく頼むよ、なにわ男子。私にトキメキと潤いと、なんかもうなんでもいいからその他諸々の良い影響を与え続けておくれ！