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お花見前夜の台所。


弁当作り | 趣味のお話






よし、明日お花見をしよう。
弁当作ってく。

そう自ら発言したのは、
前日の夜10時だった。






行きつけの安いスーパーは
夜11時に閉まる。


いける。


歩いて10分、スーパーについた。

歩きながらなんとなく、
5種類くらいのおかずたちが
桜満開の木の下に置かれた
弁当の中でひしめき合ってる姿を
妄想していたので、
赤色のカゴはみるみるうちに
満タンになっていった。

普段から割と、
食材の買い物速度は早い方だ。
それが衣類とかとなると、
まったく別なのだが。


そういえば最近このスーパー、
何を思ってか店内の配列をガラッと変えた。
2年かかって身体に染み込んだあの配列が、
1週間程で、水の泡になった。

私の料理の味方、
3倍濃縮の昆布つゆ、どこいった。

おかげ様で最近、
いつも調味料のブースをウロウロしている。




無事買い物を終え、家に帰った。
帰ってから料理する気になるまで
いつもちょっと時間がかかる。


この日は、
この日と言ってももうお花見当日なのだが、
やる気スイッチが入ったのは、
深夜の1時だった。

袖を捲り上げ、
台所の蛍光灯をつけ、
換気扇を回し、準備完了。


一人暮らし、
鍋の数と種類と大きさは限られているので、
洗いもののタイミング、
材料を切る、煮る、焼く、冷ます、混ぜる、
できたものを置いておくスペース、
全てはじめに頭の中で
一気にモーラしてから
食材カットがスタートする。



今回の弁当のレジェンド食材
1つ目は、蕪。

蕪のヘタをちょこんと残して1/8カット。
そう、この姿を見たかったのだ。
夢がひとつ叶った。


2つ目のレジェンド食材は、
さやえんどう。

可愛らしい色と大きさと形。
見事コンプリート。


3つ目は、この子。

はじめまして、カーボロネロ。

カーボロネロ、なんぞや。
スーパーで一目惚れして買ったカーボロネロ。
初めてみたその姿は、
まるで濃い緑色の花束が
バーコードのついたシールを貼られた
透明のビニール紙に包まれて、
綺麗に鎮座しているものだった。

あまり人が手に取ってないのだろうと
一瞬でわかるくらい、綺麗に。

何者かわからないまま、
私は迷いなくカゴへ入れた。

家に帰って調べたら、
カーボロネロは、
イタリア原産の葉キャベツの一種らしい。
日本では、黒キャベツとも言われている。

それとこの子、ちょっと優秀らしい。
特に、女性と子供に優しい。
カルシウムとカリウム、
ビタミンC、K、Uが豊富だという。
この成分たち、
風邪の予防をしてくれたり、
筋肉の働きを助けてくれたり、
胃腸の調子を整えてくれたり。
このご時世、
ジェントルマンと言われること間違いなし。





つかぬ間に、
7種類のおかずが完成した。


1. 蕪とカーボロネロのソテー

ローズマリーで香りを加えて、
強制的に和洋コラボレーション。


2. 人参とレーズンのラペ

過去イチで美味しいラペが出来た。


3. 茄子の胡麻香味ダレ漬け

なんのレギュラーかわからないが、
レギュラー入り確実な絶対的美味しさ。


4. 玉子焼

私お墨付きの、3倍濃縮の昆布つゆ味。


5. 蓮根と枝豆の豆腐ハンバーグ

最近ハンバーグは、和な気分。


6. 多分筑前煮

妄想と理想だけで作りあげた一品。


7. 焼鮭と舞茸のお握り

これと舞茸を、炊きたて玄米にドカンと。
皮は、喉に詰まらないようにちぎって。




以上、盛大な夜更かし。
目覚ましかけずにぐっすりと眠りについた。

大量のおかずを持って、
待ち合わせの1時間半後に到着。




何がともあれ「美味しい」は、
誰をも尚優しくする。
笑顔にする。
幸せにする。


私の人生に欠かせない、
魔法のコミュニケーションツール。

失ったら私のコミュニティ、終わる。





今年は、小さな木のベンチで
川のほとりの小さなお花見。

お酒はなくとも、
烏龍茶と麦茶と美味しいお弁当と
一輪でも咲いた桜の木があれば、
春を待ちわびている心と胃袋は、
十二分、十三分に満たされるのである。









P.S.
お花見前夜の台所は、
年中で一番鮮やかだった。



「 お花見前夜の台所。」