冗談
僕の名前はジャックだ。ねえねの自慢のおとうとだよ。これから話すのは全て、悪い冗談だ。
よく、父さんは言う。
「お前は世界中の悪を囓り尽くして、こんな優し過ぎる奴になったんだろうな。」
父さんはあまり喋らない。右手で頤に親指を当てて、山吹色したソファにもたれ、反対の腕を静かに腕をあげる。僕はそこに、入り込んで肘置きになるのが一番好きだ。でもね、その時僕だけ、時々一人なんじゃないかって思う。何が違うって、みんなと同じ様に話してると思うから、問題はそこのところじゃない。
静かな父さんによりそうと、トクトクする音が聞こえだすと、決まって僕の中のトクトクが走っちゃうんだ。それが早くて早くて、やんなっちゃう。
あれはほんとに嫌だからいつもこのトクトク、父さんと同じはやさになりますようにって、思ってるんだ。
「ジャ、どうしたの?」
母さんだ。
母さんは歌いすぎる。素敵だ。僕が返事をしないで、わざと知らないフリしてプイするとこも、いつも見てるけど怒らない。時々、僕に命令とかするけど、しらないふりさ。前に、犬使いがきた時には怒られてばかりの母さん。ヘラヘラして、すみませんばかりでちょっと間抜けだけど、かわいいと思う。
そういえば最近、南側のプラムの木にドロバチの巣ができて、なんか、おっきい父さんよりおっきい兄さんにとられてしまったのが悲しいこととか、僕が窓際で車を追いかけてるわけじゃない理由があるって、母さんに一番わかってほしい。あの車に乗ってくる人と話がしたいんだとか、わかってくれないかな。みんな。父さん、母さん。
そして世界で一番大好きなねえね。
ねえねの声も、抱っこも、ひっくり返されるのも大好きだ。
僕とねえねは、誕生日が5日だけ違う。
奇跡じゃない、僕は。
父さんでも、母さんでもない。
ねえねには、「逢いに」きた。冗談なんかじゃないさ。
真南にオリオンが光る朝早くに生まれたことも、僕たちは星に居た頃から仲良しだった。
だからこれからも一緒に居たい。
ねえねのトクトクは僕とにてるよ?安心で、とてもいい、嬉しいんだ。
母さんの本当。
母さんが銀の指輪をしたまま、布団の上でねえねを撫でると、テーブルの下の僕を迎えに来る。その時、指輪が僕の眉毛の上に当たるからいつもポクッていうけど、この音がする日は、何故か決まって母さんは泣き出したり喚いたりする。
誰も悪くはないって。家族は言うよ。わかってる。僕はみんなのトクトクが正直なことを知ってるから。母さん、そんなに泣いて責めたりしないで。
知ってるよ。
ねえねの本当。
凄く怖くて耳を塞いで母さんが自分でどうにもできないことで、怒鳴るのを見ないふりしようとしてた。ねえね、泣かないで。母さんは、本当に僕たちを愛してるよ。
きゅううとねえねがぼくをだきしめる。
みんな優しいから、僕は全ての悪を囓り尽くしに行ってもいいと思う。
母さんが、僕より吠える時、僕が噛めばなおるなら、喜んで。母さんを噛むよ?母さんの悲しいところ全部。
僕はジャック。ほら、トランプにもあるだろ?奇跡を起こせる。
世界中どこを探したって、僕より冗談の上手な人間はいないよ。星の数を探したっていない。
父さんの本当
「おまえ、母さんのこと、頼んだぞ。」
父さんは誰もいないソファに腰掛けて、僕を肘置きにする。
父さん、母さんを噛んでもいいですか?全ての悪を囓りつくして、例えば母さんが一度、死んでしまっても。
母さんをたすけたいんだ。ぼくならできるんじゃないかな、
あむ。って。
本当の冗談は、
大体本当の愛だからね。
ありがとうございます! 創造したい!!