イスラエルでの思い出とか

 以前、イスラエルを訪れたときだったが、空港での入国審査に長い時間がかかった。パスポートコントロールですぐに入国を許される人もいれば、そうでない人もいた。私がその、そうでない人だった。

 私を含めた彼らは別室に連れて行かれ、自分の順番が来るまで待たされる。審査官の待つ面会室が近くにあって、呼び出しを受けたらそこへ入り、ひとりひとり細かな聞き取りを受ける。イスラエルへの入国の目的、訪れる予定の場所、滞在先、これまでどういった国を旅行してきたのか。どうしてイスラエルに関心を持ったのか。
 人によっては、YAHOOとかgoogleのアカウントを開くように命じられる。メールの内容を確認することで、その個人がどんな人間か、イスラエルに入れて問題のない人間なのか、またはその逆なのか...判断の参考にされる。
 私の時はそこまで要求されることはなかったが、あるアメリカ人女性がその不快な体験をインターネット上で告白している。探せばまだあるかなと思う。

 私のケースを続けると、連れて行かれた別室には30人ほどが既にいて、スマートホンをいじったりぼんやり宙を見上げたりしていた。一応、イスラエル当局も措置に対して気を使っているようで、何時間かおきに水とパンが提供される。
 私はそこで、結局3回にわたる提供を受けた...いったい何時間いたんですか? という話だが。

 いい加減うんざりしたので、3回目のとき「またパンですか? それ以外に何かないのですか? コーヒーさえ出さない」と、配っている係に文句を言った。
 すると彼女は明らかに戸惑った表情を浮かべ、「でも上司に言われたから..」と弱々しい声で答えた。

 彼女はとても若いイスラエル兵で、雰囲気からするとおそらくガチの兵士ではない。徴兵制度により(自分の希望とは関係なく)入隊し、たまたま空港での雑用を割り当てられている..という感じに見えた。

 気弱な表情を浮かべる彼女に、私は思いがけず同情した。彼女は彼女で大変なんだな。絡んでくる俺みたいな人間と、上司の命令との板ばさみになって..

 彼女の弱さ、不意の素顔に触れた事で、イスラエル人もまた自分たちと変わらないひとりの人間だという当たり前の事実に思い至った。私にとって印象深いエピソードのひとつだ。

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