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健やかな成長を祝う日のこと - 後編-

七五三準備のポイントや着物を楽しむコツについて、着付師として活動される小林さんにお話を伺いました。

3人の女の子のお母さんでもあり、家族の行事やハレの日には必ずご自身も着物をお召しになるそうです。
今秋、末のお子さまが七五三を迎えられ、主役をはじめ、家族全員分の着付けもご自身で担当されたそう。「前編」に引き続き、七五三にまつわるお話を伺います。


-七五三当日、年齢ごとに気をつける点はありますか?

【3歳さん、5歳さん】
まだまだ幼い3歳さんと5歳さん。 その子の性格にもよりますが、みんな元気いっぱいです。
長い間じっとしていたり、きつく締めたれたりするのは苦手なのでさっと短時間で苦しくないよう仕上ることを心掛けています。途中で疲れてしまったら一旦お休み。お気に入りのオヤツやおもちゃがあると気持ちの切り替えがうまくいくと思います。
恥ずかしがり屋さんのお子さんは、なかなか気持ちが着付けへ進めないこともあります。 その子のペースに合わせてゆっくりと着付けをしていきます。
いずれのお子さまの場合でも、時間にゆとりを持って計画を立てておくと安心です。
着付けの後はすぐお詣りや撮影をしてもらいましょう。 長時間着ていることは難しいかもしれないので、何を優先させるかで当日のスケジュールを組むのも良いかもしれませんね。

【7歳さん】
大人と同じ着付けなので少し時間がかかります。お腹が空いてしまう場合もあるので、食事はしっかり摂って、なおかつ簡単に食べられるパンやおにぎりを用意しておきましょう。
撮影やお詣りの後に、食事会をする場合は着物を汚さない工夫が必要です。 大きめのタオルで着物をカバーしたり、袖を洗濯バサミやクリップでまとめて汚れないようにすると良いでしょう。
長時間着物姿は疲れてしまうと思うので、着替えることも考えておきましょう。 ハレの日ということで、着物から特別なドレスやワンピースに衣装チェンジするのも、また気持ちが変わっていいと思います。
最近では年齢に囚われすぎず、時期をずらして「前撮り」や「後撮り」をされる方も増えているように思いますので、 それぞれのご家庭に合った方法で素敵な思い出を作ってくださいね。


-そういえば先日娘の着付けをしてもらった際、あらかじめ腰紐を着物に縫い付けていましたが、あれはプロならではの裏技だったりするのでしょうか?

プロの裏技はたくさんあります。 3歳さんの着物に紐が付いている事は半々です。
紐があることによりお子さまがじっとしていられなくてもスムーズに着せることができます。 また紐が引き合うので、きつく締めなくても襟元が緩みにくくなり、着崩れを防ぐ効果もあります。私の場合、可能であれば紐を付けさせていただいてます。


-動きやすさへの配慮、写真を撮る際に気をつけることは?

お子さまは元気いっぱい動くので、どうしても着崩れてしまうことがあります。
着崩れてしまった時の対処法を少し知っておいてもらうといいと思いますので、 お着付けの際にちょっとしたポイントをお伝えしています。 都合が合えば、当日の介添も承ります。
途中で脱ぎたくなってしまうかもしれないということも、少しだけ頭に置きつつ
「着物を着るまでは少しゆとりをもって、 着物を着た後はスムーズに動けるよう」計画を立てるといいと思います。

写真に写るときの注意ポイントですが、もし余裕があれば「帯周りを中心に」整っているか見ましょう。
帯締めは真っ直ぐか、帯揚げは綺麗か、帯結びの仮紐が見えていないか。 車での移動はどうしても崩れが出やすいですので、帯は潰れていないか、箱迫が曲がっていないか、他の小物類整っているか確認すると良いでしょう。
あとは、振りから長襦袢が出てしまうことがあるので、 出ていたら直してあげてください。

大人の立ち姿は、男性も女性も背筋を伸ばして胸をやや張り、首は真っ直ぐを意識。女性の場合、着物の柄は左前に出ていますので、そちらを写真に見せるようやや斜めを向くと美しく見えます。


-小林さんご家族もこの秋、お子さまの7歳の七五三でしたね。 家族全員で着物をお召しになったそうですがお子さまの着物選び、ポイントはありましたか?

主役の着物は私が7歳の時に着たものです。私の妹たちも着て、上の娘たちも着て、いよいよ着納めです。
娘たち3人とも同じ着物を着たことになりますが、小物やヘアスタイルを変えることでその子らしさを出せました。
中1の長女は好きな色である白色の帯に、彼女に似合う色合いのくすみピンクとブラウンのコーディネートにしました。
着物は着慣れないと思ったので、長襦袢は着ずに、 足元はブーツで歩きやすくしました。
小5の次女は好きなキャラクターのイメージカラーである紫と黒でコーディネートしました。帯はリボンをご希望。 同じく長襦袢は着ずに、足元はブーツです。2人とも大人とほぼ同じ体型なので、全て大人用のものを着ています。



-ご両親ふたりの着物は?

主人の着物はリユース着物です。腕が長い体型で、なかなか合う着物がなくて苦戦しました。
私の着物は受け継いだ着物で、控えめな色のものにしました。 お気に入りの帯を締めています。


-家族行事に着物を着ることが多いそうですが、マイルールはありますか?

着物を着るようになってから、卒園式、卒業式、入学式、今回の七五三で着ました。
あまり目立ち過ぎないよう、着物はその場や季節感に馴染むような色や帯を意識しています。 お祝いの日、節目にはこれからも着ようと思います。


-着物を着る楽しさ、着せる楽しさはどんなところでしょうか?

普段、着物を着たり見たりする機会が少ない子ども達にとって、 着物を着ることは特別な事です。

七五三を通して日本の伝統行事や文化に触れ、着物という日本固有の素晴らしい衣装を味わってもらいたいです。 そして、着物を着た自分を見て、可愛い!かっこいい!と思ってもらえたら嬉しいですね。

私自身も、着物が大好きで着るだけで気持ちがワクワクします。体型カバーの一助となりつつ、自分を自分らしく表現できるアイテムです。
昨今、大人も着物を着る機会は益々減っていますので、着物を着てみたいと思っている方に七五三はとても良い機会だと思います。 家族揃って着物を着て、写真を撮ってもらうととても特別な1日になると思います。

知らない文化に触れ、普段とは違う自分や兄弟、お父さんお母さんの姿を目にする。七五三は子どもにとっても、非日常に身を置き、特別な時間を味わうことのできる楽しく尊い1日なのかもしれません。

これからもそのご家族にしかないストーリーと、かけがえのない瞬間を共有させてもらえることを楽しみにしています。 準備から当日まで、どうぞ無理のない範囲で、幸せな時間を過ごせますように。


- Column -  当日のワンポイント

・飴やグミなどのすぐに口にできるお菓子は、子どものご機嫌キープのための救世主。 やりがちなのが、持参したにも関わらず車の中に忘れてしまうこと。(私ですね…) お子さまの巾着やお母さんのバッグに入れておくと安心です。

・草履を履くのは参拝や記念写真の時のみにして、移動中は履き慣れた靴にするとお子さまの負担も減らせます。
お子さまによってはどうしても草履を履きたくない!という子もいると思いますので、そういった場合はブーツを取り入れるのも。草履より歩きやすく、袴や着物とも馴染みます。最近は、初めからブーツを選択する方も少なくない印象です。

・メイク直しの口紅やリップなどのアイテムがあると、可愛いお直しシーンが撮れるかもしれません。
(ただ(特に3歳さん)、序盤と終盤の写真で、どんどん口紅がなくなっていくその変化の様子もとっても可愛く愛おしいです。)

・たとえ思い通りにいかなくても、その年齢のその瞬間の、ありのままのお子さまの姿を写した写真は、ご家族にとって唯一無二の宝物になることに違いないと思います。 頭で描いたプラン通りに事が運ばなくても、我が家らしい、我が子らしい、とぜひ丸ごと楽しんでください。


小林 利江さん【@kimono.1111.rie
お子さんの七五三をきっかけに着物にのめり込む。自分が着せたい!思い出に残るはず!との思いで着付けを習得。
現在は主に妹さんの美容室 kiitos【@kiitos.39】 を通して七五三、成人式、卒業式、入学式などハレの日の着付けをおこなう。
「一生に 一度の 一日を 一心に」 をコンセプトに、大切な一日を、 ご家族と気持ちを一つにして着物を楽しく着てもらうことを目標に活動中。
mail : rie921451@gmail.com
普段は会社員として働いています。シーズン時期の予約は早めに埋まってしまいますので余裕を持ってご連絡いただけると幸いです。




「日のこと写真館」は群馬県桐生市にある小さなスタジオです。
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