推しが「元」プロ野球選手になる

20220215

感情を整理するのに、うっかり半年近くかかってしまった。彼を推してから五年ほど、ずっと好きでわたしのヒーローで居続けてくれるんだと、横浜を優勝させてくれるのは彼なんだと、信じて疑わなかった。今だって信じたくないんだ。

十月五日十二時頃、わたしは通学中の電車の中でその記事を見た。DeNA横浜ベイスターズ 戦力外通告選手一覧。
こんなTwitterの140字で数選手の未来が告げられていいものか。ずっと続くと思っていたヒーローの彼のこれからが、横浜スタジアムにはないことを告げられるものなのか。なんなら彼のいる場所が横須賀スタジアム(二軍球場)だってよかったのに。


正直覚悟していなかった。例え今年の夏不祥事で週刊誌に抜かれてたとしても、シーズン通して一軍でのヒットが四本であったとしても。
伝説のCS泥んこ試合で値千金スリーランも遠くない記憶だし、同じくCSで後がない二試合目 九回表に福留のホームランを打たれて引き分けに持ち込まれかけた大ピンチ。そんな中、サヨナラツーランで翌日に望みを繋いだのは目を閉じればすぐに思い出せる。つい最近のことじゃないか。

プロ野球ファンがシーズンの成績で機嫌が左右されるように、選手の活躍はその選手のファンの生活に根付いている。
放課後ファミレスでドリンクバーの紅茶花伝を飲みながらみた野球速報。友達に笑われながらも月五千円のお小遣いで通った二軍球場。
特にCS阪神戦でのサヨナラツーランは、現地に行きたくて行きたくて仕方なかったものの、大学受験を控えていた年の秋。図書館での自習帰り、リビングの小さなテレビで見た、スタンドギリギリのホームラン。阪神ファンには浜スタだからだと揶揄されそうなサヨナラツーランは、わたしの人生に大きな希望を与えてくれた。
第一志望がE判定どころか抑えさえA判定が安定しなくなってもまだ挽回のチャンスがあると思ったし、なにより大好きな推しがたくさんの選手やファンに囲まれて笑ってる姿は嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
夜ご飯の唐揚げを食べながらTwitterをさかのぼってたくさんの「彼ならやると思っていた」「彼のおかげでまだ明日があるんだ」「明日も彼がやってくれるに違いない」といったツイートを片っ端から目を通した。誇らしかった。自慢だった。


そんな彼が、来月から始まる2022シーズンには、浜スタのバッターボックスにはいない。未だに受け入れられていない部分だってあるけれど、彼は次のステージに進むらしい。
つい最近発表になった海外チームへの加入。そうなんじゃないかなと頭をよぎることも数回あったが、彼の野球している姿をみれなくなるんじゃないかと不安を抱えていたわたしにとってはなによりの朗報だった。
彼が真っ赤なユニフォームを着ている姿は全く想像つかないけれど、でも端正で彫りの深い顔立ちをしている彼ならきっと上手に着こなせるのだろう。


正直戦力外通告をしてから海外チームへの加入が決まるまで、彼は野球から離れてしまうのではないかと思っていたからこそ、何より嬉しかった。

彼の強気で勝負強いところが好きだ。少ないチャンスを掴むためにしっかりと準備を重ねるところも、家族やチームをなにより大事に思っていて熱い面を隠さずにいるところも。
彼の野球をみていると、野球しかみれないけど、でもその野球してる姿からそんな彼が伝わってくる。わたしももう少し頑張ろうかなと思えてくる。

遠い海外チームでの活躍は多分追いきれないし彼はずっと遠くの存在になるんだろう。けれど女子高生だったわたしの脳内を占めていた彼が、頑張っていることを思うだけで充分だと思う。



十年間のプロ野球生活、お疲れさまでした。あなたの活躍が何よりの力でした。

あのころの横浜に、横浜で野球がしたいのだと言ってくれてありがとう。


いつだって横浜の誇りがその胸にありますように。野球が側にいてくれますように。


わたしの青春!



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