#8 萌えなくなったオタクがちょいエロについて考える


私が子どもの頃、アニメは「子どもが見るもの」だった。我が家では食事時のテレビは禁止されていなかったので、朝に夕にテレビを見ていた。内容は大体人気のアニメか、子ども向け番組か、お笑いのバラエティだった。

アニメとゲームで育った私達が大人になるにつれて、オタクという存在が世間に広く認知され出した。この20年で、オタクはとても生きやすくなった。


20代くらいまで、私は特に何の問題もなくオタクの世界に触れていた。敢えて説明しておくと、今ここで言うオタクというのは、いわゆるアニメオタクを指すものと思う。その中でも、萌えの世界に近い所で私は息をしていた。

今思えば私は「ビジネス萌えオタク」だった。心の底から萌えが好きだったというより、必要があって萌え文化に触れていた。流行りの作品をチェックし、主題歌を覚え、知識も蓄積していたが、自発的な熱狂を持って作品に触れることは少なかった。


結婚し仕事を辞め、出産を経てワンオペ育児に勤しむ中で、私は次第に流行りのアニメを見なくなった。引っ越した先ではTOKYO-MXが見られなくなったが、うわー残念だねえ、と夫婦で話したきり、大きな問題にはならなかった。夫は私の知らぬ間に登録した有料チャンネルをタブレットで見ていたが、私はそれを必要としなかった。


その代わり、私が触れることになった新たな世界は『幼児向け番組』だった。多くのママが体験する通り、ワンワンに始まり、アンパンマンで感動し、おかいつという単語を覚えた。知らない方のために解説しておくと、おかいつとは「おかあさんといっしょ」の略称だ。あと、ワンワンは犬ではなくて、チョーさんの方である。犬だけども。

Eテレはすごい。NHKの功罪が叫ばれて久しいが、NHKなぞ要らないと言っている層は現代において子育てをしたことが無いんじゃないかという偏見すら持っている。アンパンマンは日テレなのでそこはチャンネルを変えるけれど、私と娘はテレビと言えばほぼEテレ。そのうち、娘よりも私の方が熱心にEテレの番組を見るようになった。オタクの本領発揮である。

見ない人には伝えたいのだけど、Eテレは何だかんだで、世間の話題の最先端に触れている。昨日の天才てれびくん(みんな見てるー?!)では子どもたちにツッコミを教えるコーナーがあったが、ぺこぱの『ノリつっこまない』が既に新しいスタンダードの仲間入りを果たしていて驚いた。ナビゲーターの芸人の方が「俺らまだ出来んねん」みたいなことを言っていたのが、私にとっては印象深かった。

話が逸れた。時を戻そう。


オタクが一般化するにつれ、モラルが試されるような話題が以前よりも目に付くようになった。問題そのものは昔からあって、人口が増えたことで声が上がる数が増えたというだけなのかもしれない。オタ同士のトラブルや声優さんへの嫌がらせ等々もそうだけど、個人的に気になるのは18禁関連が多い。

18禁、とまとめてしまうのはやや乱暴だけど、要は「子どもに見せられないものが堂々と表現されている」ことに対する危機感のような気がする。必要以上に強調されたボディライン、現実の世界では目にすることの無いポーズ、ほとんどの子が履けないであろう丈のスカート。「萌え」と「エロ」は親和性が良く、私の目では両者の境目を見ることが難しくなった。


子ども(と大人)に大人気のプリキュアが、実はものすごく配慮されて作られている、という話は、興味があるオタクなら聞いたことがあるだろうか。一緒くたにされそうな「女の子が活躍するアニメ」の中でも、プリキュアは「描きたいもの」ではなく「描いてはいけないもの」を定めるという珍しい取り組みがある。私も意識するまで知らなかったが、このおかげで子どもに安心して見せられると感じている親は多いんじゃないだろうか。


☆参考文献1…『子どもの2倍、大人が見ている!? アニメ「プリキュア」人気のワケ(著:kasumi)』https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66251

☆参考文献2…『プリキュアタブー (ぷりきゅあたぶー)とは【ピクシブ百科事典】』https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%BC


参考文献読みながら泣いちゃったよ。プリキュア、凄すぎるよ。


プリキュアほど配慮を重ねることを、全てのアニメに求めることはできない。アニメって誰のためのものなんだろう。誰かのためのアニメと、誰でも見られるアニメの違いを気にしている自分は、多分めんどくさい奴なんだろう。

それでも、だ。絵が可愛いことと、キャラクターが魅力的であることと、見せ場がエロいことは別だ。このエロという感覚については許容範囲が人によって違うので、着地点を見つけるのがとても難しい。ただ、いつまでも「ちょいエロ」くらいなら許されると思っていると、いつか痛い目を見るんじゃないかとひやひやしている。

ガチガチに配慮されたアニメばかりじゃ面白くないと思うのであれば、そういう人にこそもっと積極的に棲み分けを講じてもらいたい。私は誰かの甘酸っぱい記憶を奪いたいわけじゃない。頬を赤らめ服を張り付けた「ちょいエロ」アニメをこの世から撲滅したいと言っている訳じゃないのだ。


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