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本よみ日記 春だから

笠木拓さんの歌集『はるかカーテンコールまで』を読んだ。鎌倉にある出版社「港の人」の本だ。


地下街を出たなら日照雨 もう誰も助けられなくたっていいから

あずさゆみうわくちびるで牛乳の膜をひそりと引きよせている

さくらばなそのはなごとのためらいの地上にはまだはるかにとおい

なりたくてなるのをやめた姿さえ愛して橋の継ぎ目を越えて

ストロベリー・フェアのメニューを卓に伏せ鈍くあかるい雲を仰いだ

はかなくて過ぎにしかたの空にまた透明な傘ひろげてまわす

憂いすらうつくしかった 鶺鴒が白を展いて飛ぶまひるまに

『はるかカーテンコールまで』


いつでも取り出せるよう、ポケットに入れておきたい歌を選んだ。好きな歌はお守りになる。「あずさゆみ」の歌は「あずさゆみ」を人の名前と思い読んでいたが枕詞だった。どちらにしても好きなのは変わらない。

短歌を読むと自分でも詠みたくなってくる。春だから、それもいいかもしれない。もうすっかり春だから。




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