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スタートアップ総メディア化時代のコンテンツ戦略

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スタートアップのメディア化が加速している。

noteやWantedlyといったテキストメディアに加え、ポッドキャスト配信、Youtube動画など様々なコンテンツの発信が著しく増え、オウンドメディア百花繚乱の様相を呈している。

なぜ、今、スタートアップ各社はメディア運営に力を入れるのか。そして、オウンドメディアの立ち上げ成否をわけるものはなにか。

この記事では、スタートアップによるコンテンツ発信が増えている背景を紐解くとともに、メディア運営に定評のあるカミナシやユーザベースの立ち上げ経験者に話を聞き、リアルなナレッジを深掘りした。

成功の要因を振り返るだけでなく「もし、自身がシリーズAのスタートアップで新たに採用広報を任されたら何をするか?」といった実践的な質問をぶつけ、スタートアップにおけるメディア立ち上げの必勝法を探った。


スタートアップが、メディアを立ち上げる背景

一般的に企業は、製品市場、労働市場、資本市場の3つの市場に向き合っていると言われている。

それぞれの市場において優位なポジションを築くため、社内の担当者は日々発信活動を行い認知獲得やブランド形成につとめている。

製品の価値を伝える事で、見込み顧客を発掘することやエンゲージメントを高めることがマーケティング担当者の主なミッションだ。

対象こそ異なれど、採用担当者は、新卒や転職などの労働市場と向き合い、自社の価値を伝えることで優れた労働力の獲得を目指している。

IR担当者は、自社の企業価値を訴求することで株主の獲得、適切な株価の形成を図っている。

この中で、製品市場においては、コンテンツマーケティングと呼ばれる記事コンテンツや動画、Webセミナーなどによって見込み顧客の獲得やエンゲージメント向上を促す動きが加速している。

とある調査によれば「一般的な顧客が取引先の営業担当者に直接関与する前に、購買に至るまでの準備の半分以上を完了している」との結果があり、BtoB プロダクトにおいても、購買者に対し、購入以前からタッチポイントを作り、興味・関心を高めることが戦略上、重要となっている。

良質なコンテンツづくりそのものが競争力を左右するため、最近では、自社内に動画スタジオを持つ企業や高いクオリティのコンテンツ内製化といった動きもみられる。

↑ 社内にスタジオを設けオンラインカンファレンスを行う取り組み

そしてこの数年では、そのような考え方が労働市場においても意識され、採用候補者へのコンテンツマーケティングが加速している。

コンテンツマーケティングが必須となった採用市場


筆者が、転職活動を行った2013年当時を思い返してみると、面接に向けた事前の情報収集手段は限られていた。

募集要項や待遇以外の企業に関する情報を知るためには、採用関連ページに掲載された短い社員インタビューや、Webメディア、転職ポータルなどの限られた露出のみがあり、面談を通じてリアルな社内の雰囲気を知ることが一般的だった。

それから10年、Wantedlyやnoteといった企業や個人が気軽に発信できるツールや企業自身の情報発信が定着したことにより、転職候補者は面談以前に多くの情報に触れることが可能となった。

ここでは、Wantedlyなどでの記事作成が一般的となった2010年代半ば以降と、それ以前の企業の労働市場に対する情報発信を対比している。

変化のポイントは「潜在的な採用候補者の認知・エンゲージメントの獲得が可能となった」点にある。

企業が発信するコンテンツは、単に企業を知るきっかけになるだけでなく「転職に興味はあるが、半年か1年後ぐらいに動き出したいから今は情報収集だけする」といった潜在転職者の意識を自社に継続的に引き付けることを可能とする。

カミナシCEOの諸岡氏も以前のインタビューで以下のように述べており、「採用のルールが変わっている」ことを意識している。

「今まで採用候補者が企業の情報を取りに行くには、公式サイトや転職サイト、新聞・雑誌などの"オフィシャル"に近い情報しかありませんでした。それがSNSやnoteなどによって会社のカルチャーや雰囲気、業務内容を詳細に確認できるため、採用の意思決定が面接以前まで早まっています。事前に様々な情報を発信することで、最終面接などにおいて"口説く"」というプロセスがない状況が多く発生しています。」(デスクレスSaaS企業 カミナシnote・SNS時代のすごい広報戦略 より)

また、入社時において企業の雰囲気やカルチャーへの理解度が高まることで「入社後のカルチャーミスマッチがほとんどない(以前の取材よりカミナシ 諸岡氏)」といった副次的な効果も発揮するなど、コンテンツ発信のメリットを大きく享受している。

メディア立ち上げが上手くいかない「あるある」

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