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国内SaaS企業 M&A案件総まとめと今後の展望

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国内SaaS業界においてM&Aが盛り上がりを見せつつあります。

この数年でfreee、マネーフォワード、Sansan、プレイドといった時価総額上位のSaaS企業が立て続けに買収のリリースを出しているほか、「楽楽精算」などを提供するラクスも5月公表の決算説明資料中でM&Aに積極的な意欲を見せています。

オーガニックで高い成長を遂げてきた国内SaaS企業ですが、サービスごとの競争も激しくなる中で、今後M&Aがより活発化してくることが想定されます。

この記事では、M&A活発化の背景や現在までに行われたSaaS企業の主要なM&A案件まとめ、今後の展望につき考察を行っています。
(過去16件のM&Aデータのダウンロードも可能なコンテツツです)

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↑ データサンプル

現在までのSaaS企業のM&A動向を知りたいスタートアップ関係者、SaaSビジネスに携わる方、株式投資家の方に向けたコンテンツとなっています。

記事のポイント
・ 過去5年の主なSaaS企業 M&Aが分かる
・ SaaS企業のM&Aはなぜ増えている、具体的にはどんな動きが?
・ SaaS企業のM&Aに特に意欲旺盛な2社とは
・ なぜSaaS企業は非SaaS企業を買収するのか

SaaS企業 M&A増加の前提

SaaS企業でM&Aが増えている、ないしは、M&Aを戦略に掲げることが増えている前提として以下3点を挙げたいと思います。

① 上場、未上場でM&A可能な企業規模のSaaSスタートアップが増えている

大前提ではありますが、まずは、単純に企業買収が可能な規模にSaaSスタートアップ各社が成長してきたということかと思います。

創業期からSaaSプロダクトを立ち上げていくフェーズでは当然自社サービスへの投資を行っていきますが、IPOやその後の資金調達から他社SaaS企業を買収する動きが増えています。

買収手法も現金による買収だけでなくマネーフォワードはR&AC社を株式交換による株式取得を行うなど、上場株式を活かした動きも見られます。

また調剤薬局向け電子薬歴サービスを提供するカケハシが大型の資金調達を基に、セプテーニ子会社のParmarketを買収するなど、未上場企業であってもM&Aに取り組む動きが見られるようになりました。

SaaS企業の成熟と資金調達環境の変化が5年前では成し得なかった「SaaS企業によるSaaS企業の買収」が活発化しつつあります。

② 単一SaaSプロダクトの成長上限を意識した非連続成長

次の前提としてSaaSスタートアップ各社の非連続成長への狙いが挙げられます。

現在、SaaS企業としてARR100億円を超える企業はSansan、ラクス、サイボウズ、freeeの4社ですが「単一のプロダクト」でARR100億円を超えるサービスは名刺管理サービスの"Sansan"など、限られたプロダクトです。
(ラクスの"楽楽精算"でARR67億円、サイボウズも内訳は開示していませんが、主力の"サイボウズoffice"単体では100億円に満たない規模と見られます)

そもそも限られた国内市場において単一プロダクトでARR100億円を突破できる領域は限定的であり、異なる機能でのアップセルやSaaS以外のビジネスを連続的に上乗せできるかが企業価値向上の肝となります。

1から自社でプロダクトを立ち上げる動きも重要ですが、仮にT2D3のペースで成長できてもARR100億円までには7-8年の時間を要するため、第2,第3の事業の柱をつくろうとするとM&Aによるオプションも当然検討されるという状況です。

③ SaaS企業のバリュエーション水準の高さ

①と関連しますがSaaS企業の高いバリュエーションを活かした資金調達によって潤沢に手元資金を確保する動きが見られます。

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