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韓国のエッセイ本との出会い。

▪️書き込みのある本

「本はきれいに扱いたい」タイプ。書き込みたくないし、線も引きたくない。
でも、唯一1冊だけ書き込みがある本がある。

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今、私が持っている韓国のエッセイ本の中で、1番最初に買った本。韓国語で書かれた本文の下に、日本語での意味が書き込まれている。
書いた当時のことははっきりとは覚えてないけど、間違いなく私の字。懐かしくなって、久しぶりにペラペラ読んでみた。「この単語も知らなかったんだ」って思うくらい、簡単な単語も日本語で書いてある。

▪️光化門駅にある本屋さん

その本を買ったのは、韓国に2回目の留学をした頃だと思う。授業のない休みの日に、時々一人で電車に乗って本屋さんに行った。好奇心旺盛な私にとって、たくさんの情報が集まる本屋さんは新しい発見ばかり。特別欲しい本があって行ったわけじゃないけど、ふらふらと見て回るだけで楽しかった。

お気に入りは光化門駅にある本屋さん’’教保文庫’’。駅から直結だから、雨の日もラクに行けて便利。

この教保文庫はとにかく広い。店の端が見えないくらい広いから、いつもどこから見ようか迷う。さっき見た本が気になって戻ろうとしても、どこで見たか覚えてなくて、結局探せなかったことも多い。それでもやっぱりたくさんの本を見たくて、大きな本屋さんに行っちゃう。

この本屋さんには、座って本が読めるように席が用意されてる。テーブルまであって、これなら一日中いれそう。その席はいつも人気で、椅子取りゲームみたいに空いてはすぐ次の人が座って埋まってしまう。購入前の本を真剣にじっくり読む姿は、何回見ても不思議で仕方なかった。
いつかあの人たちに混ざって私も本読みたいなって思ってたけど、その当時は勇気が出なかった。

小説、旅行、経済、料理……分かりやすいように、分野別のコーナーに分けて積み重ねられている。ハングルで書かれた表紙を見て、どんな本なのか解読するのが面白くて、全く興味ない資格の分野のコーナーまで、謎にしっかり見て回った。

特に楽しみにしていたのは’’エッセイコーナー’’
エッセイを読んでると、作家さんの頭の中をのぞいてるようでおもしろい。私とは違う環境で生まれ育った韓国人の作家さんたちが、どんな目線で物事を見て、何を感じて、それをどう韓国語で表現するのかが気になって読み始めた。

個性のあるタイトルが付けられた、カラフルな本が並んでいる。本のタイトルを一つ一つ集中して見る。ドラマ「椿の花咲く頃に」に出てくるヨンシクくらい目に力を入れて。

『この本はどんな内容だろう?これが今、人気なのかな?』
エッセイコーナーに行ってこんなことを考えると、心臓がドキドキいうのを感じられるくらいテンションが上がった。

▪️初めて買った韓国のエッセイ本

いつも見てるだけだったけど、ある日「この本なら…!」って思える本があったので、実際に買ってみることにした。買ったのは、当時韓国で話題になってて気になってた「1cm+」

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この本は、文だけではなく絵が多く使われている。なんなら、文字が書かれてないページもある。絵からもイメージを受け取れるから、負担なく読めるかなと思って選んだ。

本を大事に抱えて、緊張しながらレジに並ぶ。
当時の私は"会計時にされる質問"が苦手だった。韓国語で「ポイントつけますか?」「会員になりますか?」「袋いりますか?」とか、立て続けに質問されると緊張して聞き取れない。だからレジに並ぶ時は、いつも前で会計するお客さんと店員さんの会話に聞き耳を立てていた。

ましてや、この時は本を買うのは初めて。本屋さんでは、どんな質問されるのか予想つかない。学校の授業で、この会計でのリアルなやりとりを特集してくれたらいいのに。なんて考えてたら自分の番が来た。

「◎△$☆×¥&%#?」
うん、話すのが早すぎて聞き取れない。

一つ目の質問が聞き取れなくて心が折れた。そのあと、何聞かれても’’アニヨ ケンチャナヨ(いえ、大丈夫です)’’しか言ってなかった。何もケンチャナヨじゃないけど。ともかく本は無事に買えたので、初めてのおつかいが成功した子供みたいに、ルンルンだった。

▪️読解力の壁

手に入れたその本には、知らない単語がたくさん出てきた。その本を買った当時、私は韓国語の長文をスラスラ読むほど韓国語ができなかった。もともと飽きっぽい性格だから、普通は諦めそうなところ。でも、なぜか韓国語だけはこの“分からない状態“が楽しくて、むしろテンション上がる。私は変なんだろうか。

知らない単語が出てくるたびに意味を調べて、シャーペンで文の上に書きこんだ。「本をきれいに扱いたい」という自分のポリシーより、この本を理解したいって気持ちが大きかった。

だけど、ここでぶち当たったのが『韓国エッセイの読解力』の壁
知らない単語が出てくれば、スマホの辞書で意味を調べればすぐ分かる。「あー、この単語そういう意味ね!」って理解して読み進める。でも、一章読み終わった後、「それで今の文章どんな内容だったっけ?」って状態になる。言葉の意味を調べて理解できたつもりでいたけど、文章の理解は別物だったみたい。「本当の意味での理解」が出来てなかった。

▪️韓国語をそのまま理解

それから“単語に関する情報“について考えるようになった。言葉の日本語の意味を調べるので終わりじゃなくて「こんな場面でよく使われるな。言うときはこんな表情だな。この年代の人がよく言ってるな。こんな気持ちなんだろうな。」とかを知る。ドラマ、バラエティ、本など、様々なコンテンツを通して、たくさんの“例文“に触れることが役に立った。(韓国のバラエティは特におすすめ)

あるあるなのが、
①分からない単語出てきて辞書で調べてみたけど、出てきた日本語の意味が普段使わない日本語で、いつ使うのか謎。
②もはや日本語で上手く訳せない
そんなことも多々ある。そんな時にこの“単語に関する情報“がヒントになる。

理解できるようになると、本を読むのがより楽しくなった。本はドラマや映画などと違って、表情も見れないし、声のトーンも聞けない。文章から全ての情報を受け取る必要があるから、韓国語で読んでもそのまま受け入れて読み続けられるようになった。

今では、私の韓国語力も伸び、書き込みをすることもなくなった。もちろん、まだ調べないといけない時もあるけど。

最近では韓国語エッセイがポピュラーになって、多くの本が日本語に翻訳されて出版されるようになった。
それでも、やっぱり韓国語の原本を求めてしまう。作家さんの言葉をそのまま受け取りたくて。

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